偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて

奏千歌

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末路

15 腕を伸ばす先で※執行官

 王都全域に広く通達した通り、処刑場には埋め尽くすように多くの民衆が集まっていた。

 偽聖女として贅沢を享受してきたこの女の罪を白日の下に晒し、その命をもって償わせることができる。

 ついでに平民どもの王家や貴族への鬱憤も、この女に向けられる。

 最後の最後で役に立ってくれたものだ。

 この女のせいで妻は長い間苦しんで、救われることなく生涯を終えた。

 憎悪を込めて、縄を引く腕に力をいれる。

 女は地面に倒れ込んだが、それに同情する者などいない。

 私も、嘲笑を向けていた。

 妻の次は、娘が病に侵されていた。

 女系にだけ受け継がれる病気だったのだ。

 私は妻を喪い、娘まで神の元へ連れて行かれるのだと思っていた。

 娘を救ってくれたのは、アリーヤ様だった。

 正に聖女と言わしめる神聖魔法で、娘の病を瞬時に癒し、その時の光景は今でも目に焼き付いている。

 魔法を行使した瞬間、アリーヤ様の周囲で星が瞬き、神々しいまでの光が包み、それが収まると今まで苦悶に歪んでいた娘の顔が穏やかなものへと変わっていた。

 泣いてお礼を伝える私に、アリーヤ様は言ったのだ。

「貴方の大切な家族を救えて、それだけで、私も嬉しい」と。

 見返りを求めない、謙虚なお方だ。

 アリーヤ様は慈悲の心を持った、素晴らしい方だ。

 私は積極的にアリーヤ様が聖女だと広めて回った。

 私以外にもアリーヤ様によって命を救われた者は大勢いる。

 もはや国内の貴族に、あの偽の女を処刑する事に異論を唱える者はいなかった。

 無事にあの女が処刑され、アリーヤ様と王太子殿下の結婚式を終えた三日後、アリーヤ様にその事が知らされ、王都では大雨が降り注いでいた。

 あの女の死に対して、アリーヤ様が嘆き悲しんだからそのような天候となったのだ。

 あんな罪人のためにも涙するなど、本当にアリーヤ様は慈悲深き方だ。

 一ヶ月以上もの間アリーヤ様の嘆きは続き、御体にさわらないか、その方が心配だった。

 聖女様の御心によって天候が左右されるのは仕方がないことだが、王都外の治安悪化を見て、娘が不安に思う事は私にとってはいい事ではなかった。

「お父様。外では、たくさんの人が餓えに苦しんでいると聞きましたが……」

 雪が降る外を眺め、せっかく元気になったと言うのに、天候と同じような曇り顔を私に向けている。

「平民などの事を気にかける必要はないよ。ここにいれば安全だ。お前は何も心配しなくていいんだよ。領地から必要な物資は届けられるから」

 アリーヤ様に似て、娘も心優しく育ってくれたものだ。

 安心させるように娘の頭を撫で、仕事のために城へ向かった。

 6ヶ国連合に属する周辺国が不穏な動きをしていると聞く。

 私はそれから、連日城に泊まり込む羽目になった。

 次々と舞い込むものは頭が痛くなる報告ばかりだったが、一つだけ良い報告があったのは、アリーヤ様の妹君が保護されて、城に連れてこられたことだった。

 アリーヤ様の一族の者が、連れてきたのだ。

 妹君は輝くような金髪にアンバーの瞳の、アリーヤ様によく似た容姿をされていた。

 姉妹の感動の再会はとうとう空を晴らしたと言うのに、時を同じくして、王都内は他国に攻め込まれていた。

 私は城から屋敷へ向かっていた。

 娘の安全を確保するためにだ。

「おい、お前」

 そんな私に声をかけてきたのは、バージル殿下だった。

「これを着て、通りに走って行け」

 バージル殿下から、王家の紋章が入った外套を渡された。

 囮になれと言われているのだ。

 私は、バージル王太子殿下と同じ髪と瞳だ。

 躊躇はした。

 だが恩義ある王太子殿下と、何よりもアリーヤ様を思えばそれを受け取り身に纏って、言われた通りに駆けていた。

「いたぞ!」

「追え!」

 私の背後を何人もの兵士が追ってくる。

 逃げ切ればいい話だ。

 地の利はこちらにある。

 だが……

 角を曲がったところで、体を何本もの槍が貫いていた。

 私は、娘が待つ家に帰らなければならないのに。

 痛みに襲われゴフッと血がむせ返り、地面に倒れながらも腕を伸ばす。

 その先では、燃え盛る巨大な炎が建物を包み、いくつもの悲鳴が聞こえていた。

 そこは、我が家で………

















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