再会した幼馴染みが子供を作ろうと迫ってくる

ひゃみる

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幼馴染みと再会する

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無心新太なごころあらたは目が死んでいて何を考えているかわからない』

 それが自室でボーッとしている無心新太に持っているクラスメイトの印象だ。
 一年前の新太が中学三年生の時に両親が事故で亡くなってしまい、それから完全に心を閉ざしてしまった。
 親子で仲が良かったから、新太の心のダメージは計りしれない。
 死にたいとすら思ったが、そんなことをしても天国に行った両親は喜ばないだろう。
 いつまでも子の幸せを望むのが親なのだから。
 だから死ぬということはないが、目が虚ろ気味で無感情だから学校の人たちからの印象は良くない。
 もちろん友達なんておらず、学校でもいつも一人だ。
 両親が亡くなってからは持ち家を売り払って祖父が経営している1LDKのマンションで一人暮らしをするから遠くへ引っ越したため、中学の頃の友達もいない。

「ご飯買ってこないと……」

 両親が望む子の幸せのために死ぬわけにもいかないので、新太はご飯を買いに外に出ることにした。
 心を閉ざしてから食欲があまりないが、生きるために毎日何かしら食べるようにしている。
 ただ、男子高校生が必要とする量には圧倒的に足りないため、運動をやっていた中学時代の面影がないくらい今は細い体格だ。

 部屋着のジャージから着替えて外に出ると、強い日差しが新太を襲う。
 八月も終わりの今日も暑く、猛暑日の予報になっている。
 天気予報は良く当たるようで、外にいるだけでも汗をかいてしまうほどだ。
 この暑さでご飯を食べる気が無くなり、コンビニで飲み物と栄養ドリンクだけ買うことにした。

☆ ☆ ☆

「……新太くん?」

 コンビニから戻って来て家に入ろうとした新太であるが、一人の白いワンピースを着た少女が話しかけてきた。
 新太のことを知っているということは知り合いなのだろう。
 ただ、新太は何も反応しない。

「新太くんですよね? 私、佐伯亜里菜さえきありなです」
「亜里菜か」

 彼女──佐伯亜里菜は新太と同じ年の幼馴染みであり、両親が亡くなるまでは家族ぐるみの付き合いをしていた。
 引っ越してから会っていなかったが、何でここにいるのだろうか?
 夏休みだから旅行という可能性も否定できないが、ここはマンションの中なのでそれはないだろう。
 なのでこのマンションにいる理由は二つで、新太に会いに来たか、亜里菜も引っ越して来たかのどちらかになる。
 だけどせっかく幼馴染みと再会したというのに、新太の表情は一切変わらない。
 中学の頃の亜里菜はとてもモテ、幼馴染みである新太は学校の男子からとても羨ましがられていた。
 腰ほどまであるサラサラとした銀色ストレートヘアーはとても綺麗だし、右が金で左が青のオッドアイ、シミ一つない雪のように白い肌はまるで作り物を見ているかのような錯覚を覚えてしまうほど。
 白い髪は母親からの遺伝で、宝石を思わせる美しいオッドアイは虹彩異色症という先天的なものだ。
 まるで人形のような容姿の亜里菜であるが、告白が絶えなかったために新太の助言で誰に対しても丁寧な言葉を遣うようになった。
 そんな絶世の美少女である亜里菜が目の前にいても、新太は心を閉ざしたままだ。

「新太くん……まだ心の傷が癒えてないんですね」

 亜里菜は心配そうに左右で色が違う瞳で新太のことを見つめる。
 聞かれても新太は答えず、むしろ亜里菜から視線を外してしまう。
 両親が亡くなってからの新太は生きてはいても身体から魂が抜けたようなっており、見かねた亜里菜が一生懸命接してくれた。
 彼女がいたから新太は自殺しないですんだのだろう。
 でも、地元にいては死んだ両親の光景がフラッシュバックしてしまうため、新太は一人暮らしを始めた。
 だけど未だに感情が戻るということはない。

「亜里菜は何でいるの?」

 答える気がないので、無理矢理話題を変えようとする。

「今日からこのマンション住むことになったんですよ。もしかして隣ですか?」
「そうだな。俺の家は302」

 五階建てマンションの丁度真ん中の階。
 隣の301号室は誰も住んでなかったが、今日から亜里菜が住むことになったようだ。
 特に興味がなかったので自分の家に入ろうとする新太であるが、亜里菜に腕を掴まれて止められてしまった。
 うっすらと瞳に涙がたまっているため、確実に心配している。
 未だに無気力な新太を見れば誰だってそうなるだろう。

「何?」

 早く家に入って涼みたいが、亜里菜が離さないから帰ることが出来ない。

「私は新太くんに会いに引っ越して来たんです」
「そうか。俺はいつも通りだし心配ない」

 だから早く離してほしいという視線を亜里菜に向ける。

「とても大丈夫のように見えません。昔の新太くんを知ってる人からしたら特に……」

 昔は元気いっぱいでクラスの中心となっていた新太であるが、今はとてもそうには思えない。
 放っておいたらそのまま死んでしまいそうな……とにかく生気を全く感じさせないのが今の新太だ。
 幼馴染みである亜里菜からしたら放っておくことは出来ないだろう。
 スマホにメッセージが来ても新太は返信すらしなかったのだから。
 本当に心配だから引っ越してまで会いに来たのだろう。

「ん? ビニール袋に入ってるのって……」
「今日のご飯だ」
「ご飯って……ペットボトルのお茶と栄養ドリンクしか見えませんよ」

 ビニール袋は半透明なので、中身が見えてしまったようだ。
 男子高校生が栄養ドリンクで食事を済ませていては、そのうち倒れてしまうだろう。

「私が何か作りますからきちんと食べてください」
「食欲がない」

 運動をしなくなって体力が落ちたため、新太は夏バテしてしまった。
 一応食べるようにはしているのだが、夏バテのせいでここ数日はほとんど食べていない。

「うどんでもおかゆでも何でも作りますからお願いします」

 どうしても食べて欲しいのだろう、亜里菜の顔は今にも泣き出しそうだ。

「わかった。亜里菜の家には食材ある?」

 何が何でも亜里菜は新太にご飯食べさせようとするので諦めた。
 でも、家には食材はなく、亜里菜のとこにもないなら買いに行かなければならない。

「今日引っ越して来たのでないですね」
「じゃあ買いに行くか」

 家の冷蔵庫に飲み物を入れ、新太は再び買い物に行くのであった。
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