【完結】君の記憶と過去の交錯

翠月 歩夢

文字の大きさ
14 / 18
繋がる記憶

十四話

しおりを挟む
「あった……っ!」


 どの写真を見ても本当に仲睦まじく楽しそうに写っている。中学の頃の零なのか少し幼い面持ちの零とその腕を掴んで話そうとしない私の写真。ビニールプールで遊ぶ私にずぶ濡れにされ困ったように笑っているのは半袖のTシャツにジーパンというラフな格好をしている零だ。

 落ち葉を紙の貼り付けて作ったものを零に誇らしげに見せている私の写真もあれば、雪だるまを間に挟んで撮った私と零の写真もある。

 沢山……本当に沢山の写真と思い出がこのアルバムには刻まれていた。どのページを見てもそこには必ず零がいる。

 だが、楽しげなページが突如途切れていた。それは最早見慣れた、十年前の零の制服姿だった。隣には私もいる。撮られた場所は満開の桜が咲く、とある丘の上だった。

 この写真を皮切りに、後ろのページには何も貼られていない空白が続いている。なぜならここより先の時間に、零はいないから。

 ……死んでしまったのだ。


「……れ、い……っ……」


 ぽたぽたと大粒の雫が空白のページを濡らしていく。一度溢れたそれは留まることを知らず、次々と染みを作っていった。

 私は零とこんなにも繋がりがあったのだ。そう自覚するとこれまで彼と公園で話したあの時間のことが思い出された。

 なぜ零が死んでしまったのか、どうして両親は何も言わなかったのか、聞きたいことは山ほどあったが何よりも……もう一度零に会いたいという気持ちが強かった。



 どれくらい経ったのだろうか。泣きじゃくる私の耳に、ドアを開ける音と二人分の足音が聞こえた。


「な、なんだこれは!!」

「えっ、どうなっているの!?」



 荒れた家の有様を見て驚いている両親に私は間髪入れずアルバムを開いて見せつけた。


「お父さん、お母さんっ! この写真は、この人はっ…………!?」

「どこからそれを!?」

「それは零くんとの……?」


 両親が動揺しているのが見て取れた。私は立て続けに問いを投げかける。一刻も早く答えを知りたかった。


「どうして、零は死んじゃったの……!?」


 両親が息を呑むのが分かった。その後、二人は顔を見合わせ難しい顔をして黙りこくってしまった。



 重たい沈黙の後、優しい眼差しを向けてこの状況を打破したのは母だった。短く前置きをしてから覚悟を決めたかのように唇を引き締め話し始めた。


「……元々、いつかは話そうと思っていたの」

「お母さん……」

「怒らないで聞いてもらえる?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

あなたの側にいられたら、それだけで

椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。 私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。 傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。 彼は一体誰? そして私は……? アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。 _____________________________ 私らしい作品になっているかと思います。 ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。 ※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります ※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...