【完結】君の記憶と過去の交錯

翠月 歩夢

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繋がる記憶

十五話

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 母の話によると零が死んだのは十年前に起きた地震が原因だということだった。その時は二人とも仕事があり、遅くまで帰れなかったらしい。そのため、当時近所に住んでいた零に私の子守を頼んだそうだ。

 その頃、零の両親はお互い多忙で家族間で会話がないどころか会うことさえ稀だったらしい。また、容姿端麗で成績も優秀、運動も人並み以上にこなす零に近づく同級生も少なかった。零は退屈を紛らわすためか、よく公園で一人時間を潰していたそうだ。

 ある日、外で怪我をした私を心配し手当してくれたのが零だったという。彼は泣いている私の手を引いて両親の元へ送り届けてくれたのが、私達家族と零との出会いだったらしい。

 その後、付き合いが続いたわけは私が原因だという。私が零に懐いてしまい、離れるのを嫌がった挙句、一緒に遊びたいと駄々をこねていたのだという。零は嫌な顔一つせず、私の相手をしてくれたのだ。

 そして零の現状を知った母が、零を頻繁に誘うようになると益々私は零に懐き、本当の兄のように慕っていたのだという。その様子は義雄おじさんも知っていたらしい。

 地震が起きたのは零が春ヶ咲高校に入学して一ヶ月程経ったある日のことだった。両親に頼まれた通り、零は私の面倒を見てくれていた。その時に後に大震災と言われる地震が起きてしまった。

 激しい揺れが私達を襲い、その揺れで倒れて来た箪笥から私を庇って下敷きにされた零は動けなくなってしまった。しかも運の悪いことに、地震が原因で漏電し火災まで発生。逃げ道が無くなっていく中で零は恐怖で泣きじゃくる私を宥め、逃げるようにと告げたらしい。

 きっと彼はいつものように笑顔で送り出したのだろう。困ったような笑い方で、私を安心させるために無理やり笑顔を浮かべて。

 外に出てきた私を助けてくれたのが義雄おじさんでおじさんが泣いている私を避難所まで連れていってくれたのだという。私を庇ったせいで動けなくなった零は逃げる術もなく、助けが来た時にはもう手遅れだったという。


 これが事の真相。隠していたのは、まだ幼かった私には酷なことだという判断から先送りにしていたのだ。



 全てを知って身体に戦慄が走った。いても立ってもいられず零の元へ走り出す。

 今ならまだ間に合うかもしれない。伝えたいことや言わなくてはならないことが沢山ある。だから、まだ逝かないで。

 ――お願いだから待ってて、零。
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