15 / 18
繋がる記憶
十五話
しおりを挟む
母の話によると零が死んだのは十年前に起きた地震が原因だということだった。その時は二人とも仕事があり、遅くまで帰れなかったらしい。そのため、当時近所に住んでいた零に私の子守を頼んだそうだ。
その頃、零の両親はお互い多忙で家族間で会話がないどころか会うことさえ稀だったらしい。また、容姿端麗で成績も優秀、運動も人並み以上にこなす零に近づく同級生も少なかった。零は退屈を紛らわすためか、よく公園で一人時間を潰していたそうだ。
ある日、外で怪我をした私を心配し手当してくれたのが零だったという。彼は泣いている私の手を引いて両親の元へ送り届けてくれたのが、私達家族と零との出会いだったらしい。
その後、付き合いが続いたわけは私が原因だという。私が零に懐いてしまい、離れるのを嫌がった挙句、一緒に遊びたいと駄々をこねていたのだという。零は嫌な顔一つせず、私の相手をしてくれたのだ。
そして零の現状を知った母が、零を頻繁に誘うようになると益々私は零に懐き、本当の兄のように慕っていたのだという。その様子は義雄おじさんも知っていたらしい。
地震が起きたのは零が春ヶ咲高校に入学して一ヶ月程経ったある日のことだった。両親に頼まれた通り、零は私の面倒を見てくれていた。その時に後に大震災と言われる地震が起きてしまった。
激しい揺れが私達を襲い、その揺れで倒れて来た箪笥から私を庇って下敷きにされた零は動けなくなってしまった。しかも運の悪いことに、地震が原因で漏電し火災まで発生。逃げ道が無くなっていく中で零は恐怖で泣きじゃくる私を宥め、逃げるようにと告げたらしい。
きっと彼はいつものように笑顔で送り出したのだろう。困ったような笑い方で、私を安心させるために無理やり笑顔を浮かべて。
外に出てきた私を助けてくれたのが義雄おじさんでおじさんが泣いている私を避難所まで連れていってくれたのだという。私を庇ったせいで動けなくなった零は逃げる術もなく、助けが来た時にはもう手遅れだったという。
これが事の真相。隠していたのは、まだ幼かった私には酷なことだという判断から先送りにしていたのだ。
全てを知って身体に戦慄が走った。いても立ってもいられず零の元へ走り出す。
今ならまだ間に合うかもしれない。伝えたいことや言わなくてはならないことが沢山ある。だから、まだ逝かないで。
――お願いだから待ってて、零。
その頃、零の両親はお互い多忙で家族間で会話がないどころか会うことさえ稀だったらしい。また、容姿端麗で成績も優秀、運動も人並み以上にこなす零に近づく同級生も少なかった。零は退屈を紛らわすためか、よく公園で一人時間を潰していたそうだ。
ある日、外で怪我をした私を心配し手当してくれたのが零だったという。彼は泣いている私の手を引いて両親の元へ送り届けてくれたのが、私達家族と零との出会いだったらしい。
その後、付き合いが続いたわけは私が原因だという。私が零に懐いてしまい、離れるのを嫌がった挙句、一緒に遊びたいと駄々をこねていたのだという。零は嫌な顔一つせず、私の相手をしてくれたのだ。
そして零の現状を知った母が、零を頻繁に誘うようになると益々私は零に懐き、本当の兄のように慕っていたのだという。その様子は義雄おじさんも知っていたらしい。
地震が起きたのは零が春ヶ咲高校に入学して一ヶ月程経ったある日のことだった。両親に頼まれた通り、零は私の面倒を見てくれていた。その時に後に大震災と言われる地震が起きてしまった。
激しい揺れが私達を襲い、その揺れで倒れて来た箪笥から私を庇って下敷きにされた零は動けなくなってしまった。しかも運の悪いことに、地震が原因で漏電し火災まで発生。逃げ道が無くなっていく中で零は恐怖で泣きじゃくる私を宥め、逃げるようにと告げたらしい。
きっと彼はいつものように笑顔で送り出したのだろう。困ったような笑い方で、私を安心させるために無理やり笑顔を浮かべて。
外に出てきた私を助けてくれたのが義雄おじさんでおじさんが泣いている私を避難所まで連れていってくれたのだという。私を庇ったせいで動けなくなった零は逃げる術もなく、助けが来た時にはもう手遅れだったという。
これが事の真相。隠していたのは、まだ幼かった私には酷なことだという判断から先送りにしていたのだ。
全てを知って身体に戦慄が走った。いても立ってもいられず零の元へ走り出す。
今ならまだ間に合うかもしれない。伝えたいことや言わなくてはならないことが沢山ある。だから、まだ逝かないで。
――お願いだから待ってて、零。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる