混(線)の処女

月琴そう🌱*

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第二章 ヒミツキチで……

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「ヘンなの」

 普段、ふさけてばかりの彼なのに、変な時には勘がいい。
……変な時?……ヘンな時って何だろう……。
そんな時、話す事もおかしくなる。

「虹生 化粧もしてるの?」
 俺は何を聞いてるんだ。
「いや…… なんで?」


  〈サーーーーー・・・〉

 雨の音が聞こえる さっきより降りが強くなった?
髪の毛が一筋唇に引っ掛かって……取ってあげなきゃ

 彼の腕をようやく離した俺の手は、今度はその作りモノから彼の唇を解放してあげた。


「……クチビルが 赤いから……」
 目がどうしてもそこに行ってしまう。


 俺の手は、雨で濡れている彼の頬から輪郭をなぞり始める。
どうしてこんな事をしたくなるんだろう。
俺を見ている彼の瞳が、一瞬驚くようにまた大きくなる。
俺も自分はどうしてしまったのかと、不思議に考えたままでいる。

 
「 ……暑いからかな……  旺汰?…… 」



   「 ……なに……」




「 ……して欲しそうな……顔…… してる…… 」        






     「 ……  なにを ……   」







  〈サーーーーーーーーーーーー・・・・・〉   


 雨の音は遠くでしているようだった。


◇ ◇ ◇


 夜になり雨が止んだ。
日中雨が降り夜になると止む。逆だったらいいのにと、通学の度に思う。
雲の合間から月が見え、月は見えたり雲で隠れたり。
明日もまた雨なのだろうか。
闇の中に、グレーの厚い雲が月に纏わり付くようにゆっくり流れて行く。
窓を開けると昼間は雨の音で掻き消され聞く事が出来なかった、昆虫たちの声が聞こえた。
彼らの短い命は次に繋げて行く為の交尾の相手を呼び、誘い、惜しみない声を響かせる。もうそんな季節。





「 似合ってるでしょう意外と……


      こうしてみて気が付いたんだけど


自分の幅が出来てさ……例えば――



    こんな事も出来るようになったよね……」



 自分のカラダを片腕で支え、長い髪の毛を耳に掬い掛けながらいつもと違う気配を漂わせ、ゆっくり近付いて来る。
女物の服はやっぱり胸回りが大きいらしい。
前屈みになり、大きく開いた襟元から素肌が覗けた。
赤いままの唇は薄く開いて、それだけで怪しい息づかいが聞こえて来そうだ。
俺に近づき合わせて来た。


「 こんな遊びも出来るようになったね 」

 
 そのまま抱き寄せ、もう一度その唇に食い付くようにキスをした。
彼は驚き、俺に唇を塞がれながら声を上げようとする。
彼の両手は俺の背後で空を彷徨い、自分から俺を剥がそうと必死にもがき始める。
けれど離れる事が出来ず、彼は俺にされるがまま。


 ――お前が誘った遊びだよ

〝オレたちがどこまで行けるか試してみよう〟


   お前はそう言ったも同然

    お前が誘った……


          お前が誘っ…………・・・
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