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序章
走馬灯?
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死ぬ寸前に人は走馬灯を見る。
「走馬灯のように過去の出来事が頭の中を駆け巡る」
首が飛び、涙を流すサファイア。
それを見たことで、幼いサファイアの姿が思い出される。
「兄様! 起きられたのですね!」
「えっ?」
走馬灯は、ここまでリアルなのだろうか? 死とは夢の中へ入り込むことなのか?
「私は心配で、心配で、夜も眠れませんでした!」
瞳は赤く、涙を浮かべる顔はクマができていた。
本当に心配してくれていることが伝わってくる。
そういえば、私が13歳ぐらいの頃に高熱を出して倒れたことがあった。
同じ歳のアルファが看病をしてくれて、サファイアは10歳だったはずだ。
幼さを残す顔は、もう10年も前の話だ。
大将軍になるために厳しい訓練に明け暮れながらも、女性らしく成長する彼女の姿は私に取って眩しかった。
「マクシム様! 目が覚められたのですね!」
いつもは冷静で顔に出さないアルファが慌てた表情をしている。
褐色の肌に、エキゾチックな美しさは神秘的で、私に取って唯一の理解者だった。
「……」
「ふふ、相変わらずですね。マクシム様」
無言でいる私を見てアルファが笑う。
この頃の私は女王陛下以外の女性を蔑み、下に見た態度をとっていた。
返事などすることなく、甲斐甲斐しく接してくれる二人に対しても冷たく不機嫌に接していた。
昔と同じ優しい笑み浮かべたアルファ、その笑顔が私にだけ見せていたことを知ったのは彼女を失った後だった。
彼女は、私が行う悪事を全て実行してくれた。
そして、悪事がバレた時。
彼女は私の代わりに犯行を名乗り出た。
「全て私が行いました。マクシム様にとって、聖男ナルシスが邪魔な存在だと思ったのです」
毅然とした態度で犯行を名乗り出た彼女は、裏ではナルシスに仲間になるように言われていたのだろう。
仲間にならなかったアルファはナルシスによって殺されてしまった。
あの頃の私は彼女のことをコマの一つぐらいにしか思っていなくて、最低な人間だった。
彼女が死に、私の周りには味方がいなくなった。
次第に追い詰められ、ナルシスの罠にハマって処刑されてしまう。
私は最後までナルシスの本質を見抜くことができないまま死を迎えた。
奴を呪ってやりたい。この手で殺してやりたい。
だが、死んでしまった私に今更何ができよう。
むしろ、私から女王陛下を奪った者として嫉妬をした私自身がバカだったのだ。
この状況が死ぬ前の夢幻であるならば、大切な二人を守れる私でありたかった。
だから死を迎える前に伝えておきたい。
少しばかり強引に二人を抱きしめた。
「君たちを愛しているよ。サファイア、アルファ」
私の首を飛ばして、涙を流すサファイア。
胸が締め付けられる思いだった。
傷つけてしまってすまない。
アルファ、ありがとう。
君ほどの忠臣を私は知らない。
君に報いられる主人ではなくてすまない。
死ぬ前の私はこんな簡単なことも言えないつまらない人間だった。
素直に愛していると言えばよかった。
もう思い残すことはない。
大切な二人に気持ちを伝えられた。
この幸福を喜ぼう。
そして、唯一愛していた女性である女王陛下。
あなたの恋を応援します。
権力が欲しいだけの醜いナルシスと、女王陛下が幸せになるのであればそれでいい。
「にっ、兄様!!!」
「マクシム様!!!」
二人から驚いた声がする。
夢ならば、最後に彼女たちの笑顔を見て天に昇りたい。
いや、私は天になど昇ることは不可能だろう。
多くの家臣たちを死に追いやってしまった。
今更後悔しても遅い。
冥界に堕ちて、彼女たちに二度と会えぬだろうな。
ならば、この時を大切にしたい。
私の記憶がある最後の時なのだから……。
……。
…………。
…………………。
「うん?」
しばらく二人を抱きしめていたが、走馬灯が終わることなく、二人は顔を真っ赤にしたまま私に抱きしめられ続けていた。
どういうことだ?
「コホンッ! いきなり、こんなことを言ってしまってすまない。だが、これが私の本心だ」
なんだか、あまりにも長くなってしまったので、咳払いをして誤魔化した。
二人を離した。少しばかり照れくさい。
「兄様! 兄様!! 兄様!!! 私も愛しております!!!」
サファイアは、離れてもすぐに抱きついてきた。
ベッドに座っているので頭を撫でてやる。
「ありがとうございます。マクシム様。わっ、私もマクシム様を愛しております」
顔を真っ赤にして恥ずかしそうな姿を見せるのは美しい。
「二人ともありがとう」
二人からは、まだ私の体調が悪いと判断されてしまった。
促されるように目を閉じて最後の時を迎えようと思った。
いつの間にか寝てしまい、次に目が覚めると……ここが夢なのか、現実なのか、わからないがまま走馬灯は続いていた。
十年前の世界。
首を触れば生々しい記憶が思い出される。
「私は処刑されたのはずだが?」
立ち上がって窓際に立てば、13歳頃の姿が映し出されている。
部屋の中を見渡せば、見慣れた自分の部屋の中が広がり、一つ一つが懐かしい物ばかりだ。
「どうなっているのだろうか? まさか、もう一度同じ時を生きられる?」
もしも過去に戻ってきたとしたら何がしたいだろうか?
私は自分の行いを改めたい。
かつての私は女王陛下を一途に愛していた。
全ては女王陛下のために過ごす日々。
ナルシスの言葉で、そう思っていたことが間違いだと気づくことができた。
女王陛下から愛されることをやめよう。
優しく接してくれた家族がいる。
他にも、私に優しくしてくれた女性たちがいたはずだ。
そんな彼女たちを冷たく接するのではなく、彼女たちに報いる私になりたい。
彼女たちに優しく接して、大切なサファイアとアルファを守れる男になりたい。
これは私の誓いだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき
どうも作者のイコです。
息抜きなので、不定期更新です。
書けたら投稿!
それでもいいよって方はどうぞお付き合いください。
「走馬灯のように過去の出来事が頭の中を駆け巡る」
首が飛び、涙を流すサファイア。
それを見たことで、幼いサファイアの姿が思い出される。
「兄様! 起きられたのですね!」
「えっ?」
走馬灯は、ここまでリアルなのだろうか? 死とは夢の中へ入り込むことなのか?
「私は心配で、心配で、夜も眠れませんでした!」
瞳は赤く、涙を浮かべる顔はクマができていた。
本当に心配してくれていることが伝わってくる。
そういえば、私が13歳ぐらいの頃に高熱を出して倒れたことがあった。
同じ歳のアルファが看病をしてくれて、サファイアは10歳だったはずだ。
幼さを残す顔は、もう10年も前の話だ。
大将軍になるために厳しい訓練に明け暮れながらも、女性らしく成長する彼女の姿は私に取って眩しかった。
「マクシム様! 目が覚められたのですね!」
いつもは冷静で顔に出さないアルファが慌てた表情をしている。
褐色の肌に、エキゾチックな美しさは神秘的で、私に取って唯一の理解者だった。
「……」
「ふふ、相変わらずですね。マクシム様」
無言でいる私を見てアルファが笑う。
この頃の私は女王陛下以外の女性を蔑み、下に見た態度をとっていた。
返事などすることなく、甲斐甲斐しく接してくれる二人に対しても冷たく不機嫌に接していた。
昔と同じ優しい笑み浮かべたアルファ、その笑顔が私にだけ見せていたことを知ったのは彼女を失った後だった。
彼女は、私が行う悪事を全て実行してくれた。
そして、悪事がバレた時。
彼女は私の代わりに犯行を名乗り出た。
「全て私が行いました。マクシム様にとって、聖男ナルシスが邪魔な存在だと思ったのです」
毅然とした態度で犯行を名乗り出た彼女は、裏ではナルシスに仲間になるように言われていたのだろう。
仲間にならなかったアルファはナルシスによって殺されてしまった。
あの頃の私は彼女のことをコマの一つぐらいにしか思っていなくて、最低な人間だった。
彼女が死に、私の周りには味方がいなくなった。
次第に追い詰められ、ナルシスの罠にハマって処刑されてしまう。
私は最後までナルシスの本質を見抜くことができないまま死を迎えた。
奴を呪ってやりたい。この手で殺してやりたい。
だが、死んでしまった私に今更何ができよう。
むしろ、私から女王陛下を奪った者として嫉妬をした私自身がバカだったのだ。
この状況が死ぬ前の夢幻であるならば、大切な二人を守れる私でありたかった。
だから死を迎える前に伝えておきたい。
少しばかり強引に二人を抱きしめた。
「君たちを愛しているよ。サファイア、アルファ」
私の首を飛ばして、涙を流すサファイア。
胸が締め付けられる思いだった。
傷つけてしまってすまない。
アルファ、ありがとう。
君ほどの忠臣を私は知らない。
君に報いられる主人ではなくてすまない。
死ぬ前の私はこんな簡単なことも言えないつまらない人間だった。
素直に愛していると言えばよかった。
もう思い残すことはない。
大切な二人に気持ちを伝えられた。
この幸福を喜ぼう。
そして、唯一愛していた女性である女王陛下。
あなたの恋を応援します。
権力が欲しいだけの醜いナルシスと、女王陛下が幸せになるのであればそれでいい。
「にっ、兄様!!!」
「マクシム様!!!」
二人から驚いた声がする。
夢ならば、最後に彼女たちの笑顔を見て天に昇りたい。
いや、私は天になど昇ることは不可能だろう。
多くの家臣たちを死に追いやってしまった。
今更後悔しても遅い。
冥界に堕ちて、彼女たちに二度と会えぬだろうな。
ならば、この時を大切にしたい。
私の記憶がある最後の時なのだから……。
……。
…………。
…………………。
「うん?」
しばらく二人を抱きしめていたが、走馬灯が終わることなく、二人は顔を真っ赤にしたまま私に抱きしめられ続けていた。
どういうことだ?
「コホンッ! いきなり、こんなことを言ってしまってすまない。だが、これが私の本心だ」
なんだか、あまりにも長くなってしまったので、咳払いをして誤魔化した。
二人を離した。少しばかり照れくさい。
「兄様! 兄様!! 兄様!!! 私も愛しております!!!」
サファイアは、離れてもすぐに抱きついてきた。
ベッドに座っているので頭を撫でてやる。
「ありがとうございます。マクシム様。わっ、私もマクシム様を愛しております」
顔を真っ赤にして恥ずかしそうな姿を見せるのは美しい。
「二人ともありがとう」
二人からは、まだ私の体調が悪いと判断されてしまった。
促されるように目を閉じて最後の時を迎えようと思った。
いつの間にか寝てしまい、次に目が覚めると……ここが夢なのか、現実なのか、わからないがまま走馬灯は続いていた。
十年前の世界。
首を触れば生々しい記憶が思い出される。
「私は処刑されたのはずだが?」
立ち上がって窓際に立てば、13歳頃の姿が映し出されている。
部屋の中を見渡せば、見慣れた自分の部屋の中が広がり、一つ一つが懐かしい物ばかりだ。
「どうなっているのだろうか? まさか、もう一度同じ時を生きられる?」
もしも過去に戻ってきたとしたら何がしたいだろうか?
私は自分の行いを改めたい。
かつての私は女王陛下を一途に愛していた。
全ては女王陛下のために過ごす日々。
ナルシスの言葉で、そう思っていたことが間違いだと気づくことができた。
女王陛下から愛されることをやめよう。
優しく接してくれた家族がいる。
他にも、私に優しくしてくれた女性たちがいたはずだ。
そんな彼女たちを冷たく接するのではなく、彼女たちに報いる私になりたい。
彼女たちに優しく接して、大切なサファイアとアルファを守れる男になりたい。
これは私の誓いだ。
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あとがき
どうも作者のイコです。
息抜きなので、不定期更新です。
書けたら投稿!
それでもいいよって方はどうぞお付き合いください。
応援ありがとうございます!
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