貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子

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新しい人生の始まり

保護者たちの密談

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シャナが眠ってすぐにリールが戻ってきた。その機嫌の良さからうまくいったことが窺える。

「どうだった?」

「いい塩梅ですよ。シャナの登録は済みました。後見人の件もあなたが保護しずっと一緒にいること、更に番であること、社会的にこれ以上ない信用のある私とザラムが加わったことで、他への打診は無くなりました。特に、あなたの番であることも大きかったようですよ。ただ、通信では、シャナの経緯を話すわけにもいきませんから、両親を探すことも含まれました」

「それは、仕方ないな。偽の親が出てきたら、捕まえて真実の水晶にかけてやるだけだ」

「任せろ。きっちり締め上げてやる」

にやりと笑って言うザラムの顔が悪どい。到底、騎士には見えないな。

「新しい家を見つけないとな。あの家は狭い」

「まぁ、そうですね。後見人は、被後見人と暮らさなくてはなりませんから。あなたがたと暮らすのも久しぶりですね」

リールはそう言ってまんざらでもなさそうに口角をあげた。

「どの辺にするんだ?ギルドに近い方がいいんじゃないか?詰め所にはちいと遠いが、市場へも近い」

「立地としては、ガルドの家は理想的なんですがね」

何処か他にいい空き家がなかったか、思案するなか、俺は意外な提案をした。

「なら、いっそのこと今の家を壊して新しく造るか?」

「!なるほど、その手がありますね」

この世界では、増築や一部を改築をすることはあっても、今ある家を全部壊して建て直すことは滅多にない。家自体が丈夫で、滅多なことでは壊れないからだ。

「おおお、それはいい」

「どうせなら、シャナの意見を取り入れてみますか?」

「そうだな。おもしろい家になりそうだ」

3人で満足げに、頷きあった。

「つぎは、シャナの冒険者登録の事です」

「シャナの登録をするのか?まだ、はやくねぇか」

「おや、ザラムは、反対ですか?」

「いや、そういう訳じゃねぇが・・・・」

「ガルドは、どう思いますか?」

「俺は、した方があいつのためにはなると思う。俺が依頼を受けたときには、連れていくつもりだ。シャナの戦い方は独特だ。普通じゃない。が、その辺のAランクよりよっぽど強くて役に立つ。それに、普通の戦い方も知っておいた方がいいい」

「はっ?戦うのか?シャナが?」

何を言っているんだという声が聴こえる。

「あー、バタバタしてて言い忘れてたが、30体以上のオークとオークキング、オーククィーン、オークジェネラルを一瞬で片付けてたぞ」

そう言ってもふたりは、何をとぼけたことを、という顔だ。まぁ、見たことないふたりが信じられないのもわかる。俺だって、あの光景を見てなきゃ、信じなかったしな。

「どうやったかは、たぶんだが、・・・・、何らかの魔法を使ってオークどもを1ヵ所に集めて、たぶんだが、結界で覆い、その中を水で満たして、溺死させたんだと思う」

あの光景をみていた俺も、実際に何をしているのかよくわからなかった。

「うわっ、えげつねぇなぁ」

「!素晴らしい発想力です!何処からその発想がでてくるのか、興味深いですねぇ」

リール、ちょっとそれはどうかと思うぞ。ザラムの反応が正常だよな。シャナとリールが組むとえげつなさの度合いがはね上がりそうだ、やれやれ。

「では、シャナが望めば、登録しましょう。一度、じっくりシャナの能力を試したいですねぇ」

実に愉しげにそう言った。

「そうだな。俺もシャナの作る結界の強度をみてみたい」

こちらも、脳筋度合いがみてとれる発言だ。そういう俺も興味ありだがな。

「明日の午後なら時間がとれそうですねぇ・・・・。森に行きますか」

ぼそりと呟くのが聴こえた。

「明日なら俺も午後から時間がとれるぞ」

ザラムがニヤリと嗤う。


がんばれ!シャナ!


「そうそう、後見人の適格審査は、半月後、皇城だそうですよ。審査員は、両陛下と神殿の神殿長と神官長です。立会人に皇都の冒険者ギルドの総帥と商業ギルドの総帥です。ガルドは、それまでに陛下方にシャナのことを伝えておくように。皇妃様のご機嫌を取っておかないと、取り上げられますよ」

言い笑顔だ。

「げぇっ。神殿じゃないのかよ。行きたくねぇ」

「しかたねぇな。ずっと心配かけて、気を揉ませたんだ。安心させてやるんだな」

こちらは、ニヤリと嗤う。

「通信くらいはしておく」

仕方なくムスッと返しておいた。更にリールは瞳を鋭く光らせて、こう言った。

「それから、その場にエルフの国の国王とその奥方も同席されるそうです」

俺とザラムは怪訝な顔をした。保護者や後見人の適格審査に他国が関わることはない。シャナは、俺の番だ。いくら、エルフの国に登録されたからと言って、暮らすのはこの国だ。この国の竜人を番に持ち、後見人審査を受けるのだ。本来ならエルフの国、まして、国王が関わることはない。

「おそらく、シャナの身元を確かめたいのだと思います。犯罪が関わっていないとは、到底言えない状況ですから」

ふたりは、難しい顔だ。俺たちは、シャナが犯罪とは関係がないことを知っている。これは、おそらく女神様の采配だ。リールは、一旦、目を伏せて、そして、決意したように俺たちを見た。

「私は、女神様のお力が関わっていることを皇帝陛下や国王、神殿長あたりには開示しておこうと考えています。」

そのふたりは、なぜ?と言わんばかりに目を見開き、そしてそれは、非難の視線に変わる。

「なぜだ?そんなことをすれば、シャナは、狙われる。特に神殿あたりはシャナを欲しがるだろう」

「そうだな。皇族や王族はともかく、神殿やそこから漏れ聞いた貴族どもが黙っちゃいねーだろ」

それが分からないお前じゃないだろうと言わんばかりに鋭い視線を投げる。

「ええ。ですが、事件や犯罪の可能性を潰さなければ、これからのシャナの立場が危うくなりますし、親だと名乗るバカどもも出てくるでしょう。ガルドの番なら、尚更です。それに、犯罪が絡んでいる可能性のある事件を、ザラム、貴方なら放っておきますか?」

ザラムは苦虫を潰したような顔になった。

「ああ、確かにな」

「女神様が関わっているとわかれば、神殿は、間違いなくシャナを取り込もうと画策するでしょう。ですが、あなたの番である以上、それを阻むことは容易です。とりわけ、今回の後見人審査はわざわざ皇城のしかも二国の王が揃った場です。その場で、シャナを取り上げることもできないでしょう」

そういうと、何か画策している顔で片方の口角だけをあげて、不敵に笑った。そして、ぼそりと「そのときは全力で叩き潰して差し上げましょう」と呟いた。

俺は、どうか無事に審査が終わりますようにと祈ったのだった。
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