貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子

文字の大きさ
22 / 103
新しい人生の始まり

保護者たちの密談

しおりを挟む
シャナが眠ってすぐにリールが戻ってきた。その機嫌の良さからうまくいったことが窺える。

「どうだった?」

「いい塩梅ですよ。シャナの登録は済みました。後見人の件もあなたが保護しずっと一緒にいること、更に番であること、社会的にこれ以上ない信用のある私とザラムが加わったことで、他への打診は無くなりました。特に、あなたの番であることも大きかったようですよ。ただ、通信では、シャナの経緯を話すわけにもいきませんから、両親を探すことも含まれました」

「それは、仕方ないな。偽の親が出てきたら、捕まえて真実の水晶にかけてやるだけだ」

「任せろ。きっちり締め上げてやる」

にやりと笑って言うザラムの顔が悪どい。到底、騎士には見えないな。

「新しい家を見つけないとな。あの家は狭い」

「まぁ、そうですね。後見人は、被後見人と暮らさなくてはなりませんから。あなたがたと暮らすのも久しぶりですね」

リールはそう言ってまんざらでもなさそうに口角をあげた。

「どの辺にするんだ?ギルドに近い方がいいんじゃないか?詰め所にはちいと遠いが、市場へも近い」

「立地としては、ガルドの家は理想的なんですがね」

何処か他にいい空き家がなかったか、思案するなか、俺は意外な提案をした。

「なら、いっそのこと今の家を壊して新しく造るか?」

「!なるほど、その手がありますね」

この世界では、増築や一部を改築をすることはあっても、今ある家を全部壊して建て直すことは滅多にない。家自体が丈夫で、滅多なことでは壊れないからだ。

「おおお、それはいい」

「どうせなら、シャナの意見を取り入れてみますか?」

「そうだな。おもしろい家になりそうだ」

3人で満足げに、頷きあった。

「つぎは、シャナの冒険者登録の事です」

「シャナの登録をするのか?まだ、はやくねぇか」

「おや、ザラムは、反対ですか?」

「いや、そういう訳じゃねぇが・・・・」

「ガルドは、どう思いますか?」

「俺は、した方があいつのためにはなると思う。俺が依頼を受けたときには、連れていくつもりだ。シャナの戦い方は独特だ。普通じゃない。が、その辺のAランクよりよっぽど強くて役に立つ。それに、普通の戦い方も知っておいた方がいいい」

「はっ?戦うのか?シャナが?」

何を言っているんだという声が聴こえる。

「あー、バタバタしてて言い忘れてたが、30体以上のオークとオークキング、オーククィーン、オークジェネラルを一瞬で片付けてたぞ」

そう言ってもふたりは、何をとぼけたことを、という顔だ。まぁ、見たことないふたりが信じられないのもわかる。俺だって、あの光景を見てなきゃ、信じなかったしな。

「どうやったかは、たぶんだが、・・・・、何らかの魔法を使ってオークどもを1ヵ所に集めて、たぶんだが、結界で覆い、その中を水で満たして、溺死させたんだと思う」

あの光景をみていた俺も、実際に何をしているのかよくわからなかった。

「うわっ、えげつねぇなぁ」

「!素晴らしい発想力です!何処からその発想がでてくるのか、興味深いですねぇ」

リール、ちょっとそれはどうかと思うぞ。ザラムの反応が正常だよな。シャナとリールが組むとえげつなさの度合いがはね上がりそうだ、やれやれ。

「では、シャナが望めば、登録しましょう。一度、じっくりシャナの能力を試したいですねぇ」

実に愉しげにそう言った。

「そうだな。俺もシャナの作る結界の強度をみてみたい」

こちらも、脳筋度合いがみてとれる発言だ。そういう俺も興味ありだがな。

「明日の午後なら時間がとれそうですねぇ・・・・。森に行きますか」

ぼそりと呟くのが聴こえた。

「明日なら俺も午後から時間がとれるぞ」

ザラムがニヤリと嗤う。


がんばれ!シャナ!


「そうそう、後見人の適格審査は、半月後、皇城だそうですよ。審査員は、両陛下と神殿の神殿長と神官長です。立会人に皇都の冒険者ギルドの総帥と商業ギルドの総帥です。ガルドは、それまでに陛下方にシャナのことを伝えておくように。皇妃様のご機嫌を取っておかないと、取り上げられますよ」

言い笑顔だ。

「げぇっ。神殿じゃないのかよ。行きたくねぇ」

「しかたねぇな。ずっと心配かけて、気を揉ませたんだ。安心させてやるんだな」

こちらは、ニヤリと嗤う。

「通信くらいはしておく」

仕方なくムスッと返しておいた。更にリールは瞳を鋭く光らせて、こう言った。

「それから、その場にエルフの国の国王とその奥方も同席されるそうです」

俺とザラムは怪訝な顔をした。保護者や後見人の適格審査に他国が関わることはない。シャナは、俺の番だ。いくら、エルフの国に登録されたからと言って、暮らすのはこの国だ。この国の竜人を番に持ち、後見人審査を受けるのだ。本来ならエルフの国、まして、国王が関わることはない。

「おそらく、シャナの身元を確かめたいのだと思います。犯罪が関わっていないとは、到底言えない状況ですから」

ふたりは、難しい顔だ。俺たちは、シャナが犯罪とは関係がないことを知っている。これは、おそらく女神様の采配だ。リールは、一旦、目を伏せて、そして、決意したように俺たちを見た。

「私は、女神様のお力が関わっていることを皇帝陛下や国王、神殿長あたりには開示しておこうと考えています。」

そのふたりは、なぜ?と言わんばかりに目を見開き、そしてそれは、非難の視線に変わる。

「なぜだ?そんなことをすれば、シャナは、狙われる。特に神殿あたりはシャナを欲しがるだろう」

「そうだな。皇族や王族はともかく、神殿やそこから漏れ聞いた貴族どもが黙っちゃいねーだろ」

それが分からないお前じゃないだろうと言わんばかりに鋭い視線を投げる。

「ええ。ですが、事件や犯罪の可能性を潰さなければ、これからのシャナの立場が危うくなりますし、親だと名乗るバカどもも出てくるでしょう。ガルドの番なら、尚更です。それに、犯罪が絡んでいる可能性のある事件を、ザラム、貴方なら放っておきますか?」

ザラムは苦虫を潰したような顔になった。

「ああ、確かにな」

「女神様が関わっているとわかれば、神殿は、間違いなくシャナを取り込もうと画策するでしょう。ですが、あなたの番である以上、それを阻むことは容易です。とりわけ、今回の後見人審査はわざわざ皇城のしかも二国の王が揃った場です。その場で、シャナを取り上げることもできないでしょう」

そういうと、何か画策している顔で片方の口角だけをあげて、不敵に笑った。そして、ぼそりと「そのときは全力で叩き潰して差し上げましょう」と呟いた。

俺は、どうか無事に審査が終わりますようにと祈ったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

処理中です...