貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子

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皇都

騎士団に喝!

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結局、わたしはギルドを出て直ぐに寝てしまい、起きたら、上機嫌のざらぱぱの腕の中だった。

で、ここは何処かというと、騎士団の訓練場。ざらぱぱとここで待ち合わせをしていたのだ。今は、加減のわからないざらぱぱに代わって、多少なりとも、加減・・を知っているふたりが訓練をつけている。ざらぱぱの機嫌がいいのは、りーぱぱと手合わせができたから。


「起きたか」

「うん。ここどこ?」

「ん?騎士団の訓練場だ」

「ガルとりーぱぱが相手してるの?ざらぱぱは?」

「俺は、手加減が出来ないからなぁ」

あー、分かる。わたしにも手加減なしだもんね。

「でも、タルの衛兵のみんなは、大丈夫だよね?わたしも最近は、ついていけるし」

「あー、それがな・・・・」

ざらぱぱが顔を向けたそこには、ガルとりーぱぱが、必死で向かってくる団員を退屈そうにいなしていて・・・・。

「えっ!ねぇ、ざらぱぱ?あんなに弱くていいの?」

ビックリして聞いてしまった。その声が意外と響いてしまい、その場にいる団員全員に非難の目を向けられた。

「いいわけないな。シャナより弱いなんてあり得んだろう。だから、ああして訓練をつけてるんだが・・・・。俺がやりたいのはやまやまなんだがなぁ。如何せん、潰れるのを通り越して壊れちまうんだ」

団員のみんなは悔しそうだ。

「副団長!その子供と我々を比べるのは、止めていただきたい。しかも!我々の方が劣るだなどとそのような虚言、いくら副団長といえども聞き捨てなりません!」

「そうです!いくらなんでも我々を侮りすぎです!」

「我々は、誇り高き騎士団の一員です!そのような侮辱は断じて赦せません!」

周りの騎士たちも、うんうんと頷いている。
ハァ、威勢だけはいいね。


「ハァ。己の実力だけでなく、シャナの力量も読めんとはな・・・・。団長は、何をなさっておるのか」

「私がどうかしたか?」

全員が、一斉に声の主に向き、私たち以外の全団員が、胸に手をあてる。わたしは、突然割り込んできた低い声にビックリして、ざらぱぱにしがみついた。

「稽古を続けろ」

「しかし、団長!副団長の「続けろと言ったのが聞こえなかったか!」」

渋々と行った感じで、わたしを睨んでから稽古に戻った。

「で、何かあったのか?」

「いえ、あまりの体鱈苦に憂いていただけです」

「だから、何度も伝えただろう?プライドが高く格好ばかりで使えんと」

「これほどとは。前年来たときには、もっとまともだった記憶が」

「ああ、あやつらは、近衛に引き抜かれた。忌々しい。残ったのは、使えんやつばかりだ」

「近衛に?何故?あちらは、充分に揃っていたはず」

「近衛の団長が引退したことは伝えただろう?その時に、20名ほどは辞めて、元団長について行った。今は、元団長の領地である辺境で魔獣相手に暴れているらしい」

なんて、はた迷惑な!
近衛の元団長さん!ちゃんと説得して置いていってよ!

「なるほど。で、残ったのが、こやつらと」

団員全員、こちらを気にしている。ガルとりーぱぱは、呆れ顔で注意もしない。


なるほどね。
これ、ヤバイよね。
何かあっても、役に立たないどころか、足手まといだよ。
剣の戦いを覚えたばかりのわたしでもダメダメだってわかるヘッポコさだ。

「タルのみんなと入れ換えたら?・・・・、それは嫌だな。むぅ」

「ククククク。自分で提案しておいて、嫌なのか?」

「だって、せっかく仲良くなったのに、淋しいでしょ?」

「そうか」

頭をポンポンしてくれる。なんだか嬉しくなって、ぎゅうと首に手を回した。

「その子がそうか?」

「ええ。ここの騎士より、よっぽど強い。俺の朝稽古についてこれますから」

「ほぉ、その歳でか!将来有望だな。どうだ、将来は騎士にならんか?」

「無理ですな。ガルドもリールも許さんでしょう」

「将来は、ガルと冒険者なの♪」

こちらが、和気あいあいと話している中、ガルはつまらなくなったようだ。

「おい!こいつら、もういいだろ!やる気ないし、無駄だ!」

「そうですね。相手になる気も起きませんね」

「シャナ、こっち来い」

ガルに呼ばれてざらぱぱを見ると、頷いて降ろしてくれた。一目散にガルのところへ向かう。

その途中・・・・。



ピュッと何かが飛んできた。寸でのところで、結界を展開した。それよりも早くガルの胸に抱え込まれ、りーぱぱの結界が張られた。



ブッシャア!!!!



結界にぶつかって、派手に水飛沫が上がる。

「何をする!」

水の矢を放った騎士が大声をあげるが、ざらぱぱが拘束。現行犯逮捕だ。周りの詠唱を止めなかった4人もりーぱぱの戒めの蔦で拘束済みだ。


「シャナに攻撃をするとは、死にたいようだな。竜人の番に攻撃をしておいて、ただですむと思うなよ」

ガルの低く地を這うような声がした。

ガル、りーぱぱ、ざらぱぱの殺気が半端ない。いつもの押さえ気味の、ではない本気の殺気だ。その場の全員が腰を抜かして動けなくなった。ざらぱぱの殺気を目の前で受けた犯人とその連れたちは失神している。

「全員、連帯責任ですよ。楽には死なせませんから、覚悟なさい」

「弱いだけなら多目に見れても、これはいただけねぇな。お前ら、全員覚悟しろ!」

3人とも鬼の形相だ。仕方ないね。年端もいかない子供に攻撃したんだもん。あれ、防げてなきゃ、死んでたくらいだったよ。

「俺にも止めれんな。全員、覚悟を決めろ。お前たちのあとは、新人が補うからな。心安らかに、逝け」

団長さんも諦めている。助けたくないけど、ほっとくと、本当に殺りかねない・・・・。ガルたちにそんなことはさせたくない。

「ねぇ、犯人と共犯は捕まえたんだし、真実の水晶からは逃げられないよ。軍の規定もあるんだし、団長さんに任せちゃおうよ?怒ってくれるのは嬉しいけど、今のガルたちじゃ、みんなの息の根が止まっちゃうよ。そんなの嫌だなぁ・・・・」

へにょんと眉を下げて3人を見回した。

「「「!!!・・・・、ハァ」」」

「シャナがそう言うなら仕方ないな」

「ええ。少し頭に血が昇りすぎました」

「団長、そう言うことです。こいつら5人の処罰とここにいる全員の処遇についてはお任せします。が、納得のいく対応・・・・・・をお願いします」

生温いことしやがったら、全員八つ裂きだという副音声が聴こえた気がした。ガルとりーぱぱも頷いている。

「わかった、わかったから、3人ともその殺気を鎮めてくれ!実行犯の5人は、軍の規定により、極刑。鉱山送り。恩赦はなしだ。その他のやつらは、半年間報酬を30%カットに加えて、1年間、サムの軍施設とホトの軍施設で鍛え直してこい!」

その処遇を聞いた辛うじて意識がある人たちから、「そんな・・・・」とか「嫌だぁ」とか「くそ・・・・」とか聴こえる。

「それが嫌なら、ガルドラム、リーランス、アルトザラムの終わりのない特訓だが、どっちがいい?選ばせてやる」

ニヤッと笑って別の更に過酷な案を出す団長さんは、鬼だ。

「それはいいな。ポーションはたんまりとある」

「シャナが嫌がるので、殺しはしませんよ」

「そうだな。俺たちの気が済むまで、7日くらいか?」

それはそれは凶悪な顔をした3人を前に、全員が、「軍施設で鍛え直します!!!」と声を揃えたのは言うまでもない。

「ざらぱぱ、サムの軍施設とホトの軍施設ってなぁに?」

「サムの軍施設は、一年中零度を下回るような山の中にあって、中程度の魔獣がうようよと居るようなところだな。逆にホトの軍施設は、一年中40℃を越えるような灼熱の砂漠にあって、こちらも中程度の魔獣がうようよと居る。逃げ出しても、生存率は10%未満。鍛えるにはいいところだ」

い、いいところなのかな?死んじゃうんじゃない?ムッと眉が寄ったのが見えたのか、りーぱぱから追加説明がきた。

「大丈夫ですよ、シャナ。そのための魔法と魔道具ですから。最初は難しくても暑さや寒さはどうにでも制御できます。それも、訓練のうちなんですよ」

そっかぁー。なら、大丈夫かな?

ざらぱぱとりーぱぱが、ガルに抱っこされているわたしの頭をポンポンと撫でてくれる。やっと落ち着いたので、疑問に思ったことを聞いてみた。

「ねぇ、団長さん。騎士ってこれだけなの?」

「いや、別の訓練場に倍以上の規模であと4つある。ここにいるのは、貴族出身の奴等だな。三男や四男のような家督を継げない連中ばっかりだ」

それを聞いて、サーっと顔が青くなった。

「えっと!それって不味いんじゃないの?親とかが文句言いに来たりとか・・・・。圧力かけに来るとか・・・・」

「その心配は無用だ。竜人の番に危害を加えるのは、ご法度だ。殺されても文句は言えん。今回は、特にガルドラムの番だからな。この世界がかかってる。ここにいた奴等全員殺されても仕方ないな」

「・・・・・・・・」

それなのに、攻撃って、なに考えて・・・・ないのか。頭も弱かったのか。ざらぱぱが、ここに戻らない理由が少しわかった気がした・・・・。
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