貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子

文字の大きさ
73 / 103
新しい試み

見つけた♪

しおりを挟む
やっと普通の日常に戻り、ガルと依頼を受ける日々が始まった。ざらぱぱやりーぱぱの休みに一緒に行ったりもする。マナーのレッスンも忘れられることはなかった。毎日、夕食後、主にりーぱぱに指導される。ざらぱぱやガルはわたしに甘いから、りーぱぱがいない日だけ担当する。その日は時間も短いし新しいこともしない。りーぱぱもそれを分かっているから、余程のことがない限り、ちゃんと帰ってきてレッスンをしてくれる。レッスン後にギルドに戻ることも多い。無理しなくていいのに・・・・。

そんな穏やかな日常を送っていたある日。



コンコンコン

珍しく人が訪ねてきた。この家にはあまりお客さんは来ない。りーぱぱに用があればギルドに行くし、ざらぱぱなら衛兵の詰め所、ガルならやっぱりギルドだからだ。わたしに会いに来るお客さんは今のところいない。ジャイやクレー、シアンは来る日が決まっている。誰だろう?

「俺が出る」

誰が訪ねてきたか分からないから安全のためにもガルがひとり玄関に行った。

「久し振りだな」

「メイベルガードじゃないか!どうしたんだ?この間のパーティーにはいなかったから、気になってたんだ。皇都にも来ていないんだってな」

「済まない。お前の番のお披露目だったのにな。領地で色々あって、行けなかったんだ」

「いや、お前の顔を見れば大変なのは分かる。随分と疲れてるようだな」

「それも相談したくて来たんだ」

「そうか。まあ入れよ」

玄関からガルと誰か男の人の声がする。男の人は随分と疲れた感じの声音で覇気がない。どうやら、訪ねてきたのはガルの知り合いのようだ。わたしはなんとなくキッチンに引っ込んだ。お邪魔かなと思ったのだ。そして、お客様にお茶を用意しながらふと思った。

そう言えば、わたし、友達いないな・・・・。

いつもガルやりーぱぱ、ざらぱぱと一緒だし、大人の知り合いはわたしを子供として扱ってる?いや、そうでもないかも。お仕事たくさん振られてる。友達ではないな。同じ年くらいの友達・・・・。それは・・・・ちょっと、無理、かな。うーん、誰と友達になっていいか分からない。うん。今のわたしに友達は出来なそうだ。

「・・・・ナ、シャナ。ここにいたのか」

「ん?ガル。どうしたの?」

「今、学園からの親友が訪ねてきたんだ。この間のパーティーには出席してなかったから、シャナを紹介したいんだが」

「分かった」

用意したお茶とお菓子をお盆にのせ、ふわふわと浮かせると、ガルに抱き上げられ、お客様の待つ部屋に入った。そこにいたのは、目の下に真っ黒な隈を持つ見るからに不健康そうな大きな人。巨人だ。

「待たせたな。俺の番、エルフのシャナーリエ。可愛いだろ♪」

ガルが上機嫌に私の頭に頬をすりすりしてくる。こんなことするなんて、余程気を許せる友達のようだ。そのお友達はガルの態度に驚愕して目を見開いている。

「お前、そんなやつだったか?・・・・初めまして。僕は巨人のメイベルガード。ガルドとは、学園からの親友なんだ。ベルガと呼ばれてる。本当にガルドの番なんだね。こんなガルドは初めてみるよ」

「こんにちは。エルフのシャナーリエです。シャナと呼んでください」

ガルに膝の上に座らされ、そこからの挨拶だ。マナー違反なのは許してほしい。挨拶を終え、わたしはベルガの前にお茶とお菓子を並べた。

「うわあ!これは!特許に登録されてる菓子じゃないか!もうこの辺では出回ってるんだね?!流石に皇都に近いだけはあるなぁ」

「いや・・・・。少しずつ出てはいるが、パンや菓子はまだだな。皇都でも出回ってないんじゃないか?だが、ここの商業ギルドで登録された料理を再現できて、今少しずつ講習をして広めてるからそのうち出ると思うぞ」

「商業ギルドで。家の領からも誰か派遣するかな。これは誰が作ったんだい?」

「・・・・まあ、お前だしいいか。シャナだ。料理の才能があるらしい」

「!!!まだ60歳にもなってないだろ?」

「40歳だ。凄いだろう♪」

「はは。お前やリールやザラムが可愛がるわけだな。そうだ。これ、いつものやつ。なかなか会えないから久し振りだろ?」

「お!あれか!なかなか手に入らないんだ。リールもザラムも好きなやつだろ?」

「ああ。あれは家の領の森でしか採れないから出回ってない。ま、需要は殆んどないがな」

ベルガは、苦笑しながらガルに袋を手渡した。受け取ったガルはとても嬉しそうだ。

「ガル、何か見てもいい?」

「ああ。だが、苦いからシャナの舌には合わないと思うぞ?」

袋を開けると・・・・。ふんわりと鼻腔を擽る芳醇な薫り。

こ、これは!
ずっと探してたけど見つからなかった、あの!

「!!!コーヒーだ!」

「よく知ってるな。家の領にあるカフェイの森でしか採れない貴重品だぞ」

ベルガは冗談めかして言うけど、本当に貴重品だ。

「うわぁ。ねえ、ガル。これ、採りに行こう?」

「は?ベルガの領地は遠いぞ。転移陣を2回使っても4日かかる。それにこれはシャナが食べるには苦すぎると思うぞ?」

え?食べる?食べるの?飲むんじゃないの?

「これ、食べるの?どうやって?」

「このまま食べるんだが?」

そりゃ、苦いよ。

「えっとね。これ、少しもらっていい?」

「ああ。構わない。どうするんだ?」

ガルもベルガも不思議そうな顔をしている。わたしは貰ったコーヒーを持って、キッチンに引っ込んだ。ベルガの目の前で複合スキルを使うわけにはいかない。それくらいはわたしでも分かる。キッチンでコップ、水、コーヒー豆を結界の中に入れてコーヒーを作った。もちろん3人分だ。

「お待たせ。はい、どうぞ」

わたしはコーヒーを淹れたカップと砂糖、ミルク、それにちょっとビターなチョコレートの欠片をふたりの前に置いた。ふたりは不思議そうにそれを見つめている。

「これはね。さっきのコーヒー豆を使った飲み物。いい薫りでしょ?」

「あれを飲み物にしたのか・・・・。確かに薫りはさっきの豆の状態よりも遥かにいい」

「飲めるのか?」

失礼な!飲めますぅ!

仕方ないので、わたしが飲んでみせた。もちろんブラックだ。

うわー。久し振りのコーヒーだ。薫りも味も文句なし!

わたしが口をつけたのを見て、ガルとベルガが恐る恐る一口口に含んだ。

「「!!!美味い!」」

「でしょ?ダメな人はダメな飲み物だけど、薫りもいいし、甘いものとの相性は最高だよ。苦すぎると思う人には、砂糖かミルクを入れるか、両方入れると飲みやすくなるの」

それを聞いたガルはミルクを、ベルガは両方入れた。

「苦味が気にならない。砂糖も甘すぎずミルクで滑らかな舌触りもいいね」

「不思議な味だが、コーヒーの薫りもちゃんとするな」

でしょでしょ。

わたしとガルはのほほんとコーヒーを味わっていたけど、ベルガは何か考え込んでいた。そして、わたしとガルの顔を交互にみて、真剣な顔で突然頭を下げた。

なにごと~!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

忌むべき番

藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」 メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。 彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。 ※ 8/4 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

間違えられた番様は、消えました。

夕立悠理
恋愛
※小説家になろう様でも投稿を始めました!お好きなサイトでお読みください※ 竜王の治める国ソフームには、運命の番という存在がある。 運命の番――前世で深く愛しあい、来世も恋人になろうと誓い合った相手のことをさす。特に竜王にとっての「運命の番」は特別で、国に繁栄を与える存在でもある。 「ロイゼ、君は私の運命の番じゃない。だから、選べない」 ずっと慕っていた竜王にそう告げられた、ロイゼ・イーデン。しかし、ロイゼは、知っていた。 ロイゼこそが、竜王の『運命の番』だと。 「エルマ、私の愛しい番」 けれどそれを知らない竜王は、今日もロイゼの親友に愛を囁く。 いつの間にか、ロイゼの呼び名は、ロイゼから番の親友、そして最後は嘘つきに変わっていた。 名前を失くしたロイゼは、消えることにした。

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

処理中です...