貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子

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新しい試み

ベルガの領地

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翌日、朝からベルガはやって来た。1階のリビングでりーぱぱと話をしている。ざらぱぱは衛兵の詰め所に行ってしまった。自分がいても役には立たないから、と言っていたけど、本当は身体を動かしたいだけに決まってる!

わたしは再びコーヒーを淹れ、お茶請けに生クリームたっぷりのシフォンケーキを添えた。

「やはり、薫り高くていいですね」

「!なんだい、これは!こんな食べ物初めてだ。このコーヒーとも合う!」

「紅茶もいいが、コーヒーだと口がスッキリするな」

「頼む!コーヒーの淹れ方を教えてもらえないか?」

「ベルガ。落ち着いて。教えないとは言っていません。まずは、コーヒーの木の保護から話をしましょう」

りーぱぱは昨日わたしたちと相談したことを分かりやすくベルガに伝えてくれた。カフェの話もだ♪

「なあ、今の話は・・・・、シャナが言い出したんでしょ?僕んちの領の事情は昔から知ってるんだ。今更畑の改良だなんて、リールやガルドやましてザラムが言い出すはずもない。知っていたら、とっくに教えてくれてるはずだ。まだ幼女のシャナが言い出した、なんて考えること自体可笑しな事なんだけど、そうとしか思えない」

「「・・・・」」

りーぱぱもガルも何かを探るようにベルガの目をじっと見たままだ。

「余計な詮索は身を滅ぼしますよ?」

「知ってどうする?」

ベルガの意思を問うように低く威圧を含むふたりの声に、ビクッとベルガは肩を震わせた。

「・・そう、だな。お前たちにはずっと世話になりっぱなしだし、これからもそうだろう。だから、力にはなりたいと思う。僕でも力になれるなら、知りたい」

「誓約の魔法を掛けられるとしてもか?」

ベルガは真剣な面持ちで頷いた。

「いいでしょう。味方は多い方がいい。シャナ」

わたしはりーぱぱに言われるまま、ベルガに誓約の魔法を施した。ジャイたちと同じ条件だ。

「凄いな。こんな魔法も使えるんだ」

ベルガは呑気に誓約の魔法に感心している。案外、大物かもしれない。

「シャナの素性を隠す理由がわかったでしょう?」

「拐われるね」

ここまでくると流石のわたしでも、ヤバイのはわかっている。ただでさえ、破壊神に狙われているのだ。他の犯罪者はご遠慮願いたい。

「家族にもシャナのことは秘密だ。今日の話しは俺とリールの発案にしてくれ。例え疑われたとしてもだ」

「分かってる。肥料や作付けするもの野菜については僕だけで実験してみるよ。その方が信憑性も増すしね。コーヒーは、父さんと話し合ってみる。皇家に献上するときは声を掛けるから、頼むよ」

「ああ。何時でも協力する」

「お蔭で先が見えてきたよ。今年は厳しくても来年の光明が見えてるからね。頑張るよ。ありがとう」

ベルガは先ほどまでの切羽詰まった様子はなくなり、未来さきへの希望にほっとした表情をしている。

「近々、領地に寄せてもらいますよ。シャナも実際に田畑や森を見たいそうですから。それに、家の中やマレビの森ばかりでは世間知らずになってしまいますからね。ガルドに任せると箱入り娘が出来上がってしまいます」

「確かに。番を囲いたい竜人は多いからね。うちは何時でも歓迎するよ」

ガルは「箱入り娘の何が悪いってんだよ!」と拗ねてしまったけど、わたしとしてはいろんなところを旅したい。ガルと離れるつもりはないけど、囲われたくはないよね。

「ベルガの領は、どんなところなの?」

りーぱぱには喋るなと言われたけど、誓約の魔法も掛けたし、もういいだろう。わたしはガルの膝の上からベルガに質問した。

「ここよりうんと暑いところだよ。時々火を吹く山があってその裾野は乾燥した大地が広がってるんだ。そこにカフェイの森が広がってて、地下から水が湧く泉があるから水には困らないけど、その辺りは地面も温かくて普通の植物は育たない。カフェイの森でしか育たないものが殆どだ。土地が痩せてるから畑の植物も出来るものが限られてしまうんだ」

なんですと!!!
それは温泉じゃないですか!
カフェよりももっと貴重な天然温泉発見だ♪!

「りーぱぱ!すぐにベルガの領地に行こう!わたし温泉に入りたい!」

「また訳のわからないことを言い出しましたね?」

ひどい。
魔法で綺麗に出来るこの世界じゃ、温かいその水に入ろうとする人もいないか。それでもわたしは入りたい!

「温泉はねぇ、お風呂のことだよ。お風呂と違って地下水が温められて湧き出るからいろんな効能があるんだ。肩こり、腰痛、冷え性、美肌とか。鑑定すればすぐに分かるから便利だよねぇ♪」

3人とも「ふーん」とあんまり気のない感じだ。しか~し!ちょっと気づいちゃったんだけど、美白効果とか美肌効果とかのお湯なら一大産業になるんじゃない?女性の美に懸ける情熱を舐めてはいけない!そこにカフェやレストランを展開したら?フフフフフフフ。

「シャナ。何か企んでますね?」

また顔を読まれた!
顔に出さない練習もしているはずなのに何故だ!

わたしは頬をうにうにと解しながら表情を作った。

「何も企んでなどおりませんが?」

「その顔とその言葉遣いでどう信じろというんだ?」

むう。

「美肌とか美白効果のある温泉なら繁盛するなぁと思っただけだよ」

「なるほど。一考の余地はありそうだね。効能次第では活用できるということでしょ?今度、領地に来たときに詳しく聞かせてよ」

ベルガは何かピンと来るものがあったようだ。その後、コーヒーの淹れ方をマスターしたベルガは意気揚々とその日のうちに自分の領に帰っていった。ついでに、卵焼きも教えたから、分量の計り方もバッチリだ。必要な道具類も渡したし、これで登録した料理のうち、パンとお菓子類以外はレシピ通りに作れば美味しいご飯が出来上がるはずだ。ベルガも領のみんなに教えると張り切っていたから広まるのもはやいだろう。ベルガの領に行った時にパンとお菓子も教えると約束した。

4月後の聖剣の日に皇都に見学に行ったついでにベルガのところにいく予定だ。龍人の国とエルフの国の聖剣はまだ持ち主がいないから、盛大に行われるだろう。島に特訓に行った後だから、ジャイ・シアン・クレーも一緒にいく予定だ。今からとっても楽しみでワクワクしている。
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