貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子

文字の大きさ
81 / 103
新しい試み

進化系コーヒー豆?

しおりを挟む
ガルと離れに戻った翌日、わたしは4人に連れられてカフェイの森に来ている。一度ちゃんとコーヒーの木を見たかったのだ。離れからはガルたちで鐘ひとつ分の距離だ。ベルガもついてこれるんだから相当だ。

「カフェイ火山の裾野なんだね」

わたしたちは今森の入り口にいる。

「そうですね。以前噴火したのは1200年ほど前でしたか」

そうなんだ。それだけあれば森も再生するか。あれ?でもでも・・・・。わたしは木々の間からひょっこりと見えるカフェイ火山の頂を眺めてゆっくりと視線を巡らせた。

「あ・・・・っ」

なるほど。

「何か面白い発見でもありましたか?」

りーぱぱが笑顔ひとつで速く話せと急かしてくる。ベルガは自分の領地のことだけにわたしの話しに真剣に耳を傾けているが、ガルとざらぱぱはわたしの話しは全く聞いていない。ガルはわたしを抱っこしてご機嫌だし、ざらぱぱは辺りを警戒中。とはいえ、既にガルとざらぱぱが間引きし過ぎているから魔獣の気配すらない。ベルガからは感謝されたけど、やり過ぎ注意だよ!

「えっとね。畑は作物が実らないのになんで森はこんなに豊かなのかなぁって思ったの。カフェイ火山はね、魔力の宝庫でね。火口から地面を滑るように魔力が流れてるんだけど、地面に吸収されなかった魔力はちょうどここで上に流れが変わってるんだよ」

本当に不思議なんだけど、森との境で急に魔力が上に上昇して火口に帰ってるんだ。異世界って不思議。

「!なんと!魔力の流れが分かるというのは便利ですねぇ」

「カフェイの森は魔力が豊富だし、その腐葉土を畑に撒けば土の改良は出来るんじゃない?」

「ああ、そのことですが、解決していますよ。あなたがあの日、ガルドに絶叫しながら、異常なレベルの聖属性の浄化をぶっ放しましたからね。ベルガの領地全体に魔力が行き渡りました。作物の状況も確認済みです」

りーぱぱの目が呆れているように見える。はっきり言えば、あの時、自分が何をしたのかあまり記憶にない。背中を冷や汗が流れた。ベルガの領地は大きくはないとはいえ、どんだけの魔力を込めたんだ、わたし・・・・。攻撃魔法でなくてよかったと思うことにしよう。

「ごめんなさい?」

あれは、ガルが悪いと思うの。

「やってしまったものは仕方ありません。それに、誰も気付いてはいませんからいいことにします」

りーぱぱが普通の・・・笑顔だ。そうだね。気づかれなきゃやってないのと同じだ。わたしは頷いて話題を変えることにした。今はカフェイの森のコーヒーの木だ。わたしたちはずんずんと進んで、カフェイ火山の2合目付近までやって来た。この辺りから魔力の濃度が一気に上がったのが分かる。

「肌がチクチクするぅ」

「この辺りまで来れるのは、Bランクの冒険者からでしょうね。魔獣だとBランク相当が居てもおかしくないんですが、何故かカフェイの森には居ないんですよ。ですから、ここまで来る冒険者は稀です」

ガルやざらぱぱやりーぱぱやベルガが普通に歩いているからと騙されてはいけない。ランクが低いと、というか、MPが足りないと周りの魔力が濃すぎて意識を保てない。それくらい魔力が濃い。

「お、コーヒーの木があったぞ」

ざらぱぱの言葉に指差す方を見ると、わたしの背よりも少しだけ高い木が群生していた。わたしはガルに下ろしてもらい、コーヒーの木を間近に見て絶句した。そのわたしの横では、ざらぱぱがしゃがみこんでその豆を食べている。

「焙煎されてる・・・・」

おかしい。不思議を通り越して、あり得ない光景に空笑いが洩れる。よく見ると、緑色の豆?種?から順番に少しずつ茶色くなり濃い茶色の豆が地面に落ちていた。つまり、浅煎りから深煎りまで色によって選べるということだ。便利すぎる。この辺りの豆はふっくらとまあるい。視線を巡らせると更に先に別のコーヒーの木が群生している場所がある。トコトコとそちらに行こうとしたわたしを、ガシッとガルが捕まえた。

「こら、フラフラするな。・・・・よし!いいぞ」

迷子紐を装着されたわたし。迷子になんてならない!と強気で言えないわたしは、ちょっとムッとしながら、視線の先にあるコーヒーの群生する場所に走った。拗ねてなんてないもん!

走っているわたしとのんびり歩く彼らのスピードが同じなのは気にしてはいけない。フン!しょうがないなぁとでも言いたげな大人4人を引き連れてもうひとつの群生場所でコーヒー豆を観察する。こっちのコーヒー豆は異様に細長かった。他にも何ヵ所か群生している場所を見つけて、比較のために持って帰って来た。ベルガもコーヒー豆の色や形の違いは知っていたが、どんな違いがあるかは気にしたことがなかったらしい。こういうところで損をしていると思うんだぁ。

「早速、飲み比べてみよう♪」

「そんなに違いがあるのかなぁ?」

ベルガもりーぱぱたちも首を傾げているけど、気にならないのかなぁ?

「分からないから飲み比べてみるんだよ」

うん。探究心が無さすぎる。

わたしは、豆の形毎にコーヒーを淹れて少しずつ提供した。薫りも既に微妙に違うのだけど気付いたのはりーぱぱだけ。

「「「「あ・・・・!」」」」

さすがに飲むと違いが分かるらしい。豆が丸に近いほどマイルドで細長くなるほどクセが強くなった。

これ、ブレンドしたらオリジナルが作れる!!!

早速、4種類のブレンドコーヒーを淹れたところ、見事に好みが別れた。面白い♪りーぱぱは薫り高く苦味があとを引くもの、ガルは少し甘味を感じるもの、ざらぱぱは酸味のある濃いもの、ベルガは後味のスッキリとしたものを好んだ。

「こんなにも違うんだ」

「シャナ、このブレンドのものは再現できますか?」

「うん。もちろん!」

コーヒーの奥深さを知ったベルガたちは、明日から作戦会議を開くことにして、今はコーヒーとコーヒーを使ったクッキーやシフォンケーキなどのお菓子を味わいつつ幸せな時間を堪能した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

処理中です...