貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子

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聖剣の日に破壊神と殺りあって以来、ちょこちょことアンデッドの集団が出没するようになった。聖水のお蔭で今のところ大きな被害は出ていない。

「シャナ。今日、皇帝陛下より呼び出しがありました。半月後に皇城に行きます」

「分かった。ガルと大人しく待ってるよ。気を付けて行ってきてね?」

皇都に行くなんて珍しいことじゃない。ざらぱぱも3月に一度は行っている。りーぱぱだってギルドマスターなんだから皇城に用があるんだろう。

「何を勘違いしているのですか?あなたに・・・・呼び出しですよ?」

「へっ?!」

わたしに何の用があるというのか?行きたくない。あそこにはろくな思い出がないから当然だ。

「ええ~・・・・。お断りしてください」

「出来るわけがないでしょう!」

「りーぱぱたちが許可しなければいいんでしょ?」

「皇帝陛下相手に軽々しくそんなことは出来ませんよ。今回は私もガルドもザラムも許可しました。他国の国王と宰相、それに騎士団の総帥も同席します」

ムッとしてガルとざらぱぱを睨んだ。

「登城要請だ。諦めろ」

「俺たちも行く。逃げようなんて考えるなよ?スノウ、聞こえるか?シャナの居場所を把握しておけ」

(分かった!!!)

ガルの呼び掛けにグースカ寝ていたスノウがピョコンと飛び出してきた。

(暫くは起きてるよ)

「頼みますね?」

(任せて!)

「また無理難題吹っ掛けられるんじゃないのぉ?」

胡乱な目でりーぱぱをジロッと見た。

「それは分かりませんが、コーヒーを紹介するいい場だとは思いませんか?」

はっ!そうだ。王様たちに振る舞えばいいんだよ!試飲を用意して、お菓子もコーヒー味にしよう。

「頑張って売り込むよ!」

よし!やる気が出てきた。

「単純だな」

「俺に似てきたか?」

「扱いやすくて助かりますね」

(素直なの)

「ものは言いようだな」

ガルたちが言いたい放題言っていたが、わたしはコーヒーの売り込みを考えるのに忙しくて全く聞いていなかった。聞いていたら、少しは抵抗出来たかもしてないのに残念なことをした。



ガルとギルドの依頼を受けたりざらぱぱと衛兵の訓練に加わったりして過ごすうちに半月はあっという間に過ぎた。昨日、タルを出てマレビの森にある洞窟から皇城の離宮にとんだ。

「シャナ、準備はいいですね?」

「うん。コーヒーは持ったしお菓子も用意したよ!」

「いや、ちょっと違うんだけどな。まあ、いいか」

(一直線なの~)

「違いない」

りーぱぱはわたしの服装をチェックして頷いている。合格したらしい。ガルもりーぱぱもざらぱぱもちゃんとした格好をしている。見た目だけなら貴公子のようだ。

「よく来たな。待っていたぞ?」

ぶぅ~・・・・。皇帝陛下への膨れっ面をりーぱぱに笑顔で睨まれて、営業スマイルを張り付けた。既に他国の王様と宰相、騎士団の総帥も着席しわたしたちを待っていた。何故かジャイ・クレー・シアンが王様の隣に座っている。手を振ってみた。振り返してくれた。幻じゃなかったよ。

「遅くなりました」

決して遅くはないのだが、本来ならわたしたちが1番始めにこの部屋に入っていなくてはならないのだ。

「みなさん、シャナーリエ嬢にお会いしたくて少々早く来てしまっただけですよ。まずはお掛けください」

「失礼します」

うへぇ。龍神の国の宰相に促されて、ガルを中心にして、りーぱぱとざらぱぱも座った。わたしはガルの膝の上で頭の上にはスノウがいる。

「ハウゼン領に行っていたそうだな」

「はい。シャナの強い希望で」

「ほお。何か面白いものでもあったか?」

わたしの強い希望と聞いて興味をそそられたようだ。あった。あったよ!これ、売り込みのチャンスじゃない?王様から振ってくれるなんて、いい人だ。

「フフフーン。知りたい?」

「随分と愉しそうだな?」

「えっとねぇ。これとこれとこれとこれ」

まず、コーヒーの粉を詰めた箱。これは例の5種類。パッケージのデザインも目を引くものにした。次にコーヒーを使ったお菓子。クッキー、シフォンケーキ、ゼリー、アイスクリームを順に出すと、全員の目がそれに釘付けになった。

「それは?」

「カフェイの森にしかないコーヒーだよ・・・・です」

「まずは、こちらをお配り致します」

りーぱぱのフォローが入った。全員にコーヒーだけが行き渡った。

「いい薫りだ」

獣人の王様がポツリと呟いた。それを皮切りにみんな思い思いに話し出した。

「この5種類ある黒い液体、コーヒーと言いますが、味わいが少しずつ異なります。お好みのものをお選びください。苦すぎる方は砂糖とミルクを少し足すと飲みやすくなります。そして、後程お配りするお菓子ですが、これもコーヒーを使ったものです」

「クッキーとシフォンケーキとゼリーとアイスクリームです。アイスクリームは、コーヒーに入れても美味しいよ♪です」

説明が終わると早速とばかりに飲み始めた。コーヒーの苦味に顔を顰めつつも、その薫りは好ましいのか匂いを堪能している人もいた。

「苦いな。だが、止められん」

「確かに5種類とも少しずつ趣が異なるのぉ。儂はこの“気品溢れる薫りを纏って”が好きじゃな」

「それを言うなら俺は“野性味漂う大人の苦味”だ」

等と話が弾んだ。お菓子を配り出すとコーヒーとの相性に味わうようにコーヒーを飲み始めた。いい傾向だ。

「して、シャナよ。これは売り出されるのか?」

「うん・・はい。アツのハウゼン家から近々売り出し予定です。お菓子も近々特許登録します」

「ハウゼンから謁見の申請があったが、これか?」

「はい、陛下。この場でお出しすることも了承を得ております。お好みのブレンドがあれば、お届けしますとの伝言を預かっております」

りーぱぱが率なく答えてくれる。有り難い。

「ふむ。ならば、私は“仄かなあま味と共に”が好みだな」

「他の方々も後日、お好みのコーヒーを献上致したいとのことです」

「「「「おおおお♪」」」」とどよめきが上がったことからもコーヒーの売り込みは成功でいいだろう。わたしの用事は終わったし帰りたい。

「さて、では本題に入ろうか」

逃がさないとでもいうような笑みを浮かべた王様の一声で和やかだった場の雰囲気が引き締まり、再びわたしに全員の視線が集まった。
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