貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子

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新しい試み

要請

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「総帥」

王様に促されて、龍神の国の騎士団の総帥、つまりざらぱぱのパパだ、が立ち上がり、わたしをここに呼んだ理由を話し出した。長々と現状を解説したあとおもむろにこう言った。

「・・・・ということで、我々にアンデッドの集団と戦う訓練をさせてほしい」

総帥が頭を深々と下げると、それに倣って他の国の総帥たちも立ち上がり頭を下げた。

ええ~。鬱陶しいんですけど?チラッとガルやりーぱぱ、ざらぱぱを見ると思わぬことを言われたという顔をしている。よかった、グルじゃなかったんだ。

「訓練、すればいいんじゃないですか?わたしには関係ありませんよね?」

「いや。そういうことではなくて、だな。アルトザラムやリーランス様、ガルドラム様、聖剣保持者の3人がしている訓練を我々にもお願いしたいんだ」

分かってるよ。惚けただけだよ。

「え?ガルたちがしている訓練なんて、知りませんよ?わたし」

こてんと首を傾げてみた。ジャイたちが島のことをポロッと話したのかとも思ったが、そんな様子はない。何言ってんだ、こいつら、って顔だ。

「そんなはずはない!定期的に居なくなるのは分かっている。そして、戻ってくると格段に腕が上がっていることもだ」

気付いてたか。

「そうだとして、何故わたしに話をするんですか?ざらぱぱやりーぱぱやガルに話をすればいい」

わたし、まだ、40歳。

「だが、君の許可は必要だろう?」

・・・・。

「・・・・」

「今はこの世界の危機なんだ。分かるだろう、お嬢ちゃん」

どこかの国の宰相が口を挟んだ。

「君の協力が必要なんだよ」

「アンデッドの脅威は分かるだろう。我々にも訓練が必要なんだ」

「世界のためなんだ」

それを皮切りにいろんな人がわたしの罪悪感を煽ろうとしてくる。必死なのは分かる。でもね?

「うるさ~い!!!!!」

ガルの膝から飛び降りながら叫び、仁王立ちで睨む。

「そんなに訓練したいなら、女神様にアンデッドのダンジョンでも創ってもらえばいいんじゃないの!!!」

淡々とそれだけ告げるとわたしはその場から島に逃げるように転移した。







「シャナ!!!」

一歩遅かった。俺の手は虚しく宙を切り何も掴むことはなかった。張り詰めたシャナの後ろ姿が目に焼き付いている。

「確かにその通りだ。頼めば創ってもらえるだろうか?」

何処かの愚か者がポツリとこぼした。

「この世界の危機なんだ。女神様も融通してくださるに違いない」

他にも馬鹿がいた。頷いている馬鹿がたくさんいることに呆れ返る。

「父上・・、いえ、総帥はどうお考えですか?」

ザラムが怒りを押さえた表情で自分の父親に冷たい目を向けている。本当に言いたいのはもっと別のことだろう。握りしめる拳が震えている。

「私も国王陛下方に同じ事をお伺いしたい」

リールの氷のような微笑に怒りのほどが分かる。

「・・・・私は・・危険がないなら、聞き入れてもらえるかはともかく頼むべきだと思うが」

総帥がこれでは話しにならないな。

「・・・・」

「・・・・」

「危険過ぎんじゃねぇか。アンデッドは破壊神の手先なんだろう?」

女神様にお願いしようという雰囲気の中で、ジャイが冷静に違うのか?と問いかけた。

「フッ。どいつもこいつも馬鹿ばっかりですね。それでよく国王だの宰相だの総帥だのと名乗っていられますよ」

確かにリールの言うとおりだが、煽りすぎだ。シャナのことではらわたが煮えくり返っているのは分かるが。だが、リールに小バカにされた国王も宰相も総帥もリールのあまりの怒気に反論したくても言葉が出てこないようだ。

「アンデッドのダンジョン?はっ!そのダンジョンは破壊神の拠点に成り果てるでしょうね。そんなものを女神様に頼んだ時点でこの世界は破滅ですよ」

その通りだ。島にアンデッドのダンジョンを創ったときにシャナに言われた。ここは女神様の加護があるしダンジョンをコントロール出来るから大丈夫だけど、もし外にアンデッドのダンジョンが出来たら速やかに徹底的に破壊して閉鎖しないと魔王城になると。

「まさか国のトップに気付かないやつがこんなにいるとは驚きだ」

「なんだと?!自分の番が言ったんじゃないか!」

しまった。口に出ていたか。

「シャナはそんな馬鹿じゃないさ。俺たちはちゃんと忠告されていたからな。あんたたちを試したんだろう?本当にこの世界のことを考えて言っているのか」

「王侯貴族ってのは、俺たち平民ですら分かることも分からないんだな。それでよくシャナに世界のためだなんて言えたもんだ」

「本当に。子供の罪悪感を刺激するなんてやり方が卑怯だよね」

「結局なんだかんだ言っても、自分達の都合のいいようにシャナを使おうとしただけじゃねぇか」

全くその通りだ。皇帝陛下は目を瞑り、何か考えているし、他国の国王も深刻な表情だ。重苦しい空気が場を支配する。




バン!!!


重苦しい空気を引き裂くように、勢いよく貴賓室の扉が開いた。全員がその扉を開けた人物に注目する。

「ごきげんよう、皆さま。シャナちゃんが来ていると伺いましたの。子供には退屈でしょうから引き取りに参りましたわ。・・・・あら?どうかされまして?シャナちゃんは何処に?」

なんてタイミングで来るんだ、母上よ。先触れくらい出してくれ。シャナがいたら教育に悪い影響を与えそうだ。

「「「「「・・・・」」」」」

誰も何も言えない。誓約に引っ掛かるかもしれないのに言えるわけがない。

「ガルドラム、シャナちゃんは?」

「・・・・」

「リーランス」

「・・・・」

「アルトザラム」

「・・・・」

「陛下?」

「・・・・」

「陛下?」

「いや、その・・・・」

その後、母上の厳しい追及にあい、詳細は国家機密ということでぼかされはしたが、シャナをそんなことに参加させたこと自体を説教されることになった。そして、ここにいるすべての妻たちがお茶会と称して皇城に緊急召集された。歴史に名を残すこととなる妻の反乱が勃発し、各国で妻との冷戦状態が続き、終息するまでに3月を要したという。自業自得だな。
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