貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子

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新しい試み

はしゃぐおっさんふたり

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島での訓練を控えた前日、ウキウキとおじさん二人が我が家にやって来た。

「約束は明日のはずだが?」

分かってて聞くあたり、ざらぱぱも鬱陶しいんだよね。分かるよ。

「明日の朝1の鐘なら今日来ておかねば間に合わんだろう?」

「我が家に来る理由はないな」

「父を追い返すのか?」

「そうだぞ。父の友人も追い返すつもりではなかろうな?」

追い返すよ?ジャイやクレーやシアンだって宿に泊まって当日の朝ちゃんと来るよ?

「明日の朝会おうね?バイバイ、おじさんたち」

「「あ」」

バタン!

暑苦しいのはざらぱぱだけで充分お腹一杯だ。ガルもたまに暑苦しくなるから、これ以上増やしたくない。宿は空いてるんだし、総帥なんて肩書きがあるんだからタルの街にお金を落とすのもお仕事だよ。その日の夕方、疲れた顔をしたりーぱぱが足取りも重く帰宅した。

「ザラム、自分の父親を閉め出したとか。ギルドに総帥が二人も来ましたよ?ギルドの宿に泊めてくれと」

「シャナが追い返したんだ」

そこでわたしに振る?ずるいよ、ざらぱぱ。

「だって、張り切り方が暑苦しかったんだもん!」

「でしょうね。ギルドでもたむろしていた中堅を捕まえて地下で稽古をつけていましたよ」

そんな話をしていると、ガルが漸く帰って来た。今日はわたしはざらぱぱとお留守番でガルは知り合いの冒険者と依頼を受けてマレビの森に行っていた、はずなのだが・・・・。

「酷い目に遭ったぞ。なんなんだ、あのふたりは?依頼帰りだしシャナが待ってると言っているのに無理矢理地下で手合わせさせられた」

おじさんふたりは各方面に迷惑をかけているらしい。浮かれすぎなのか、体力があり余っているのか・・・・。翌日も朝1の鐘よりも早く我が家のベルを鳴らした。

「「さあ、行くぞ♪!」」

声がでかい。息もぴったりだ。こんなおっさんたちと1月も一緒なんて嫌すぎる。わたし、早まったかも。リビングでりーぱぱたちとコーヒーで一息入れていたのに、台無しだ。

「ジャイたちがまただ。朝から近所迷惑だ。とにかく入れ」

朝のゆっくりとした時間を邪魔されて不機嫌なざらぱぱの声が玄関から聞こえてくる。

「お!いい薫りだな。コーヒーか。俺にもくれ。ブレンドコーヒーだ」

「儂は“野性味漂う大人の苦味”が好みだな」

ここはカフェじゃないんだけど。ガルが仕方無さそうにわたしを抱き上げてキッチンに連れていった。コーヒーを愛飲しているなら淹れるのは吝かではない。ただあのテンションが鬱陶しいだけだ。ちょっとばかり雰囲気をだして、カフェの朝食を模したプレートを添えてみた。

「豪勢だな。サンドイッチにスープにサラダもつくのか」

「このサンドイッチは何だ?見たことないぞ」

鳥の照り焼きサンドなんだけど、まだ特許登録してないからね。

「シャナ、サービスしすぎだ。癖になると面倒だぞ」

「そうですよ。毎回、朝を食べずに押し掛けるようになりますよ」

はっ!そこまで考えてなかった。ガルも止めてよ!

「シャナが楽しそうだったから、つい止めるのを忘れた」

夢中になって食べているおっさんふたりは私たちの会話をまるっと聞いていなかった。

「「うまかった。次回も頼む」」

こういう時は仲良く揃うんだよね、このふたり。朝のまったりとした時間をおっさんに邪魔されたまま、朝1の鐘がなり、ジャイたちが訪ねてきたので、島にとんだ。

「「うおおおおおおお!!!!!」」

はしゃぐおっさんふたりを溜め息を吐きつつ、ざらぱぱとりーぱぱがコテージに連れていった。りーぱぱが一緒なのはざらぱぱひとりでは手に余るからだ。ジャイたちはさっさと自分の部屋に引き上げている。少ししたら夕食の調達に出てくるだろう。

「あの部屋はすごいな。俺の専用だぞ」

「景色といい内装といい、あれを作ったやつは趣味がいい」

ありがとう。わたしとりーぱぱの渾身の作だよ。

「それで、早速行かんのか?」

「だから、明日の早朝からだと言ってるだろ!」

「今日は先程のコテージに泊まりですよ。今から今日の昼と夜の食材の調達です」

「よし!任せておけ!」

ふたりはりーぱぱの話をそこそこに森へと走り去った。

「まあ、あの森で手こずるようでは連れていけませんし、放っておきましょう」

げんなりした表情のりーぱぱを労いつつ、わたしたちは自分達のコテージでゆっくりまったりと朝邪魔された時間をやり直したのだった。

そして、翌日。パパたちにジャイたちにも渡したマジックバッグとお昼を渡すとまた一騒動あったが、なんとかダンジョンに向けて出発できた。いつもにも増して、森の中が大変なことになっている。張り切ったパパたちの暴れ具合が凄まじい。よほどストレスが貯まっていたようだ。それを上手く掻い潜り、魔獣を避けつつ、一番乗りで野営地点にたどり着いたわたしは、夕食の準備だ。陽が落ちるまでにここに来るのがルールになった。主に脳筋たちへのルールである。

「ハッハァ!久し振りに暴れたわい」

「こんなに楽しいのは久し振りだな!」

おじさんたちは興奮冷めやらぬ状態だが、流石に騎士団に所属しているだけあって、ルールは守るらしい。陽が落ちきる前にちゃんと野営地点に来た。

「昼も旨いし言うことなしだ」

それから、何をどれだけ倒したとか自慢話に花を咲かせていたが、わたしはさっさとガルに凭れて眠ってしまった。そして、3日かけてパパたちが希望するアンデッド巣窟、死のダンジョンに辿り着いた。1日の休息日を挟み、いよいよ死のダンジョンに挑むパパたちの表情は流石に厳しい。一昨日までのハッチャケ振りが嘘のようだ。

「さて、どこまでやれるか楽しみだな」

「ああ。腕がなるわい」

パパたちは森で愛用していた自分達の愛剣から聖剣に持ち変えるとわたしたちを振り返り、ニヤリと不敵に嗤った。ざらぱぱたちがその気迫に息を飲んだのがわかった。

「シャナ、結界を張れ」

わたしは言われるままみんなに神聖結界を纏わせた。

「では、行こうか」

この時だけは、パパたちをちょっとかっこいいと思ってしまった。
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