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新しい試み
おっさんたちの本気
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死のダンジョンに入ったわたしたちはパパたちの指示に従って攻略を進めた。やはり総帥の名は伊達じゃない。1階層目の個別に向かってくるアンデッドですら、ガルたちに指示を飛ばし効率よく捌いていた。わたしは邪魔にならないところから時々水鉄砲で攻撃しているのだが、それさえも計算に入れているかのように隙がない。自分たちも参加しながらそれである。目がいくつあるのか知りたいものだ。
「無駄が多すぎるな」
「触れればいいのだから大振りするな」
そして、的確にアドバイスまでしている。どうやってみんなを見ているのか不思議だ。
「俺たちは普段から大勢の騎士たちを1度に見るからな。6人程度なら自分たちが戦っていても目が届く」
「実際の戦場や討伐はもっと多くの人が動く。そのすべてを把握し動かすのが仕事だ。それに比べれば、この程度出来んでどうする」
ぽかんとふたりの顔を見比べた。なんでわたしの疑問が分かったんだろう?
「シャナは素直だから分かりやすいぞ?」
「ファミアリアに鍛えてもらうか?」
ブンブンブン。わたしは勢いよく首を横に振った。りーぱぱだけで充分だ。
「フム。それはいいですね。もう少し大きくなったら、預かってもらいましょうか。私たちでは女性らしい優雅な動きを教えることはできませんからね」
パパの馬鹿!余計なこと言わないで!りーぱぱがその気になっちゃったじゃない。泣きそうな顔をしているとざらぱぱのフォローが入った。
「リールにマナーを教わってるシャナなら耐えられるはずだ」
どういう意味?!怖いこと言わないで!
「わたし、貴族にはならないもん!」
そんなことになったら逃げてやる!密かに決意していると横にいるエルフの総帥がニヤリと嗤った。
「匿ってやるぞ?」
へ?!
「本当に分かりやすいですね。逃がしませんから逃亡先は必要ありません。からかうのは止めてください」
からかう?遊ばれたのか、わたし!エルフの総帥は豪快に笑っている。
「からかってはおらんさ。いつでも歓迎するに決まっておる」
「シャナ、気にしなくていいぞ?」
「さて。おしゃべりは終わりだ。先に進むぞ」
息抜きにわたしをからかったおっさんたちは元気にアンデッドに向かっていった。あの姿勢が聖剣を抜く秘訣かもしれない。死のダンジョンに入ってからどれくらい経ったか。時間の感覚がおかしくなりそうな中、ナビーの日にちのお知らせだけが外との唯一の繋がりだ。それによると10日は入りっぱなしらしい。恐らく、おっさんたちはダンジョンから出るつもりはないのだろう。アンデッドを研究したい思いがひしひしと伝わってくる。
1階層から9階層までは今地上にいるアンデッドとあまり変わらない。1度に遭遇する数が多くなるくらいだ。だから、何事もなくサクッと進んだ。10階層辺りでアンデッドの連携が始まってから、パパたちの指示で同じ階層を何回も行ったり来たりしている。パパたちがいなかったときは先に進むことを優先していたから、こんなふうに同じ階層で留まることはなかった。流石に夜寝るときにはひとつ前のセーフティエリアまで戻るか突き進んで次のセーフティエリアで休むが、とにかくパパたちの指導が熱血過ぎてみんな毎日ぐったりしている。
「ガルド!遅い!」
「ジャイ、そのまま突っ込め!」
「ザラムは待機だと言っただろ!」
「シアンは短剣だろうが!長さを考えろ!」
「振り回すな、クレー!」
「シャナはもっと狙いをつけんか!」
戦力外のわたしにまで被害が及んでいる。
「全員一旦引け!体制を整えろ!!!」
おじさんふたりは一緒に戦っている上に指示まで出しているのに、誰よりも元気だ。しかもふたりの指示が矛盾することがない。
「今日は次のセーフティエリアで休憩だ。とっとと進むぞ」
「おらおら!ちんたらしてるとシャナの料理が遠くなるぞ」
わたしはさっさとこの集団から離脱して一足早くセーフティエリアで料理を用意した。アンデッドに見つからないように移動するのはまだこの階層なら出来る。料理の準備が整う頃、ガルたちがフラフラしながらセーフティエリアに辿り着いた。
「なんで総帥たちはそんなに元気なんだ?」
「俺、もう立てねぇ」
「僕も。食欲ないよ」
「あほ。ちゃんと食わんと明日に響くだろうが」
「分かってるよ」
わたしはとりあえずみんなにスポーツ飲料を配って回った。
「シャナを見習え。料理を作った上に飲み物まで用意する元気があるぞ?」
いや、おっさんたちには負けるよ。立ったままスポーツ飲料を「プハァ」とビールのように煽る元気はどこから来るの?
「お前たちは無駄な動きが多すぎだ。そんなんじゃ体力ばかりなくすぞ」
「自分の武器の特性をもっと把握するんだな。特にシアンの短剣は近づかにゃあならんだろ?そのリスクも考えるんだな」
「はいはーい!」
「どうした、シャナよ」
「剣の形は変えられるよ?」
「「「「「「「「は?」」」」」」」」
「んとね、女神様の要望だったから、クラスターに刺さってるときの形状は変えられないけど、抜いた後なら自分の使いやすい形に変更可能なはずだよ?弓矢は無理だけど」
「「「「「もっと早く教えてくれ!」」」」」
「そんなに重要だと思わなかったんだもん」
「まあ、素人じゃそう思うのも仕方ないか」
「幼児だしな」
「よし!明日からは各自の得意な形状に変えた聖剣で訓練するぞ」
そして、1月をまるっと死のダンジョンで過ごした後、艶々になったおじさんたちは意気揚々と帰っていった。わたしたちは暫くコテージで疲れを癒した。はっきり言おう。ここまで帰ってくるのも辛かったのだ。おっさんたちと同じに考えてはいけない。あの人たちは体力お化けだ。漸く心身の疲れがとれた時、クレーの「普通に魔獣を狩りたい」という希望に全員が賛同し、森のダンジョンの攻略を進めた後、タルに戻ったのだった。
「無駄が多すぎるな」
「触れればいいのだから大振りするな」
そして、的確にアドバイスまでしている。どうやってみんなを見ているのか不思議だ。
「俺たちは普段から大勢の騎士たちを1度に見るからな。6人程度なら自分たちが戦っていても目が届く」
「実際の戦場や討伐はもっと多くの人が動く。そのすべてを把握し動かすのが仕事だ。それに比べれば、この程度出来んでどうする」
ぽかんとふたりの顔を見比べた。なんでわたしの疑問が分かったんだろう?
「シャナは素直だから分かりやすいぞ?」
「ファミアリアに鍛えてもらうか?」
ブンブンブン。わたしは勢いよく首を横に振った。りーぱぱだけで充分だ。
「フム。それはいいですね。もう少し大きくなったら、預かってもらいましょうか。私たちでは女性らしい優雅な動きを教えることはできませんからね」
パパの馬鹿!余計なこと言わないで!りーぱぱがその気になっちゃったじゃない。泣きそうな顔をしているとざらぱぱのフォローが入った。
「リールにマナーを教わってるシャナなら耐えられるはずだ」
どういう意味?!怖いこと言わないで!
「わたし、貴族にはならないもん!」
そんなことになったら逃げてやる!密かに決意していると横にいるエルフの総帥がニヤリと嗤った。
「匿ってやるぞ?」
へ?!
「本当に分かりやすいですね。逃がしませんから逃亡先は必要ありません。からかうのは止めてください」
からかう?遊ばれたのか、わたし!エルフの総帥は豪快に笑っている。
「からかってはおらんさ。いつでも歓迎するに決まっておる」
「シャナ、気にしなくていいぞ?」
「さて。おしゃべりは終わりだ。先に進むぞ」
息抜きにわたしをからかったおっさんたちは元気にアンデッドに向かっていった。あの姿勢が聖剣を抜く秘訣かもしれない。死のダンジョンに入ってからどれくらい経ったか。時間の感覚がおかしくなりそうな中、ナビーの日にちのお知らせだけが外との唯一の繋がりだ。それによると10日は入りっぱなしらしい。恐らく、おっさんたちはダンジョンから出るつもりはないのだろう。アンデッドを研究したい思いがひしひしと伝わってくる。
1階層から9階層までは今地上にいるアンデッドとあまり変わらない。1度に遭遇する数が多くなるくらいだ。だから、何事もなくサクッと進んだ。10階層辺りでアンデッドの連携が始まってから、パパたちの指示で同じ階層を何回も行ったり来たりしている。パパたちがいなかったときは先に進むことを優先していたから、こんなふうに同じ階層で留まることはなかった。流石に夜寝るときにはひとつ前のセーフティエリアまで戻るか突き進んで次のセーフティエリアで休むが、とにかくパパたちの指導が熱血過ぎてみんな毎日ぐったりしている。
「ガルド!遅い!」
「ジャイ、そのまま突っ込め!」
「ザラムは待機だと言っただろ!」
「シアンは短剣だろうが!長さを考えろ!」
「振り回すな、クレー!」
「シャナはもっと狙いをつけんか!」
戦力外のわたしにまで被害が及んでいる。
「全員一旦引け!体制を整えろ!!!」
おじさんふたりは一緒に戦っている上に指示まで出しているのに、誰よりも元気だ。しかもふたりの指示が矛盾することがない。
「今日は次のセーフティエリアで休憩だ。とっとと進むぞ」
「おらおら!ちんたらしてるとシャナの料理が遠くなるぞ」
わたしはさっさとこの集団から離脱して一足早くセーフティエリアで料理を用意した。アンデッドに見つからないように移動するのはまだこの階層なら出来る。料理の準備が整う頃、ガルたちがフラフラしながらセーフティエリアに辿り着いた。
「なんで総帥たちはそんなに元気なんだ?」
「俺、もう立てねぇ」
「僕も。食欲ないよ」
「あほ。ちゃんと食わんと明日に響くだろうが」
「分かってるよ」
わたしはとりあえずみんなにスポーツ飲料を配って回った。
「シャナを見習え。料理を作った上に飲み物まで用意する元気があるぞ?」
いや、おっさんたちには負けるよ。立ったままスポーツ飲料を「プハァ」とビールのように煽る元気はどこから来るの?
「お前たちは無駄な動きが多すぎだ。そんなんじゃ体力ばかりなくすぞ」
「自分の武器の特性をもっと把握するんだな。特にシアンの短剣は近づかにゃあならんだろ?そのリスクも考えるんだな」
「はいはーい!」
「どうした、シャナよ」
「剣の形は変えられるよ?」
「「「「「「「「は?」」」」」」」」
「んとね、女神様の要望だったから、クラスターに刺さってるときの形状は変えられないけど、抜いた後なら自分の使いやすい形に変更可能なはずだよ?弓矢は無理だけど」
「「「「「もっと早く教えてくれ!」」」」」
「そんなに重要だと思わなかったんだもん」
「まあ、素人じゃそう思うのも仕方ないか」
「幼児だしな」
「よし!明日からは各自の得意な形状に変えた聖剣で訓練するぞ」
そして、1月をまるっと死のダンジョンで過ごした後、艶々になったおじさんたちは意気揚々と帰っていった。わたしたちは暫くコテージで疲れを癒した。はっきり言おう。ここまで帰ってくるのも辛かったのだ。おっさんたちと同じに考えてはいけない。あの人たちは体力お化けだ。漸く心身の疲れがとれた時、クレーの「普通に魔獣を狩りたい」という希望に全員が賛同し、森のダンジョンの攻略を進めた後、タルに戻ったのだった。
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