貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子

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攻防

緊急招集 国王陛下が集まりました

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皇帝陛下の緊急招集に、全ての国の国王陛下と重鎮が集まった。巨人の国だけは国王陛下と騎士団総帥のみがこの場にいることを許された。誰が破壊神と繋がっているのか、判明していないのだから仕方ない。わたしたちは、この場にまたも狩り出された。

「巨人の国が乗っ取られたと言うのは本当か?!!!」

これは、ドワーフの国の国王陛下カルフェグア様の発言だ。隣の国が乗っ取られたのなら、自国の防衛に頭を抱えることになるから当然と言えば当然か。因みに、巨人の国はドワーフの国と龍人の国、そして海と面している。龍人の国は全ての国と国境を接しているから、有事の場合一番大変なのはこの国かもしれない。

「まあ、静まれ。カルフェグアよ」

「これが興奮せずにいられるか!」

ん?顔を紅潮させているけど、今後の防衛を考えて苦慮している、と言うよりは、とても好戦的な笑みを浮かべているように見える。

(カルフェグア陛下は、戦いを好む御仁だ。国王の中では、一番聖剣に近いと言われている)

ざらぱぱの冷静な声が頭に響いた。

脳筋か?!顔が引き攣る。

「まあまあ。まずは詳細を聞こうではないか」

獣人の国の国王陛下ワイオバーグ様が苦笑しながら、カルフェグア陛下を宥めてくれた。そして、全ての視線は巨人の国の国王陛下ザイツェルア様に。

「あー。不甲斐ないことに、現在の我が国は破壊神に乗っ取られた状態だ。王弟ハイデルベルクが破壊神に操られ、王位簒奪を企てたようだ。聖剣保持者のジャイによると、我が弟は破壊神に乗っ取られてはいないと言うことだった。が、破壊神が現在どこにいるかは不明だ。また、王都の住人は知らぬ間にアンデッドと化していた。事態が露見するまでに異変は全く感じなかった」

「知らぬ間に?では、一日二日で王都中の者がアンデッドに成り果てたということか?」

「そうなるのか?」

「恐ろしいな」

「アンデッドの対策はしたのであろうな?」

「それは、私から」

りーぱぱがザイツェルア陛下の言葉を引き継いだ。

「王都周辺を除く地方は無事を確認しました。既に王都一帯に神聖結界を張り、隔離状態にしてあります。念の為、巨人の国全体にも神聖結界を張りましたが、各国との関所のみ通過可能にしてあります。また、希望者はこの国で一度受け入れる予定ですが、各国に縁のある者は受け入れてもらいたい」

りーぱぱの提案に各国は同意を示し、ザイツェルア陛下は深い感謝の意を示した。

「その方の弟は、王位簒奪を企てるような輩だったか?」

ワイオバーグ陛下は心底不思議そうにしている。

「言われてみれば、そうだな」

エルフの国の国王陛下オスカルロ様もそれに同意した。どうやら、ハイデルベルク様の人となりを知る陛下たちからすると、今回の王位簒奪は納得のいくものではないらしい。

「何者かに唆されたか?いや、あり得ぬな。そのような野心すら、持っておらぬだろう?」

「ああ。我が弟は、気弱で優しい性質だ。王位継承権すら早く手放したいと言っていた。だからこそ、第2王子のリンデンバーグを隷属させ軟禁するなど信じられない」

どうやら、王弟殿下に破壊神が取り憑けなかった理由が明らかになった。破壊神は、恨み辛みや妬みなどの負のエネルギーだけでなく、野心がある者に囁きかける。心の弱い者はそれにつけ込まれて乗っ取られるのだ。

「つまり、ハイデルベルクも隷属させられている可能性があるということか?」

「破壊神に隷属されたハイデルベルクに隷属していると言うことになるが、何のために?」

オスカルロ陛下の疑問に会議室がざわざわとし始めた。

「ハイデルベルクを隷属する意味が分からんな。ハイデルベルクはアンデッドにして、自身で必要な者を隷属すればいいのではないか?あるいは、乗っ取った者を介して隷属すればいい」

ワイオバーグ陛下の言うことはもっともだ。破壊神の存在は周知されているのだから、隠す意味が無い。

「あ」

ポロッと零れ落ちたわたしのたった一声は、この場の全員の耳に届き、一瞬にして視線を集めることになった。

「あうぅぅ」

この緩~い口め!我が身の口が呪わしい。

「シャナ?」

全然笑っていないりーぱぱの怖~い笑顔に顔が引き攣る。

「口の緩さは治らないな」

ガルが追い打ちをかけてくる。

「う~っ。勝手に出ちゃうんだもん!」

「それで、何に気付いたんでしょう?」

圧が!りーぱぱの圧が!

「ハァ。あのね、王弟殿下をアンデッドにしたくない人がいるんじゃないかと思ったの。第2王子殿下もそう。破壊神が乗っ取った人の意識がまだ辛うじて残ってるんじゃないかなぁって。ただ、それも時間の問題だと思うけど」

「「「「「「「「!!!」」」」」」」」

「とても魔力の強い、意志の強い人。なんで、そんな人が破壊神に乗っ取られたかは分からないけど」

「では!では、早く!王弟殿下をお助けせねば!」

巨人の国の総帥なら、そうなるよね。

「ですが、隷属されている者の主は、王弟殿下なんですよね?シャナ」

「チッチッチッ。りーぱぱ、違うよ。主は、ハイデルベルクだよ」

「だから、それが王弟の名前なんだろ?」

ガルは分かってないねぇ。

「確かに。シャナの言う通りですね。主は、ハイデルベルク」

「どういう意味だ、リール?」

ざらぱぱも不思議顔してる。気付いたのは、王様たちと宰相、それに魔術師団長たち。総帥の一部も気付いたようだ。脳筋!がんばれ!

「つまり、鑑定に出てくる主の名前は、ハイデルベルクであって、王弟殿下ではない。ハイデルベルクという名前の誰か。それが王弟殿下とは限らないと言うことです」

「なるほど。だが、その年代は王弟殿下にあやかって、と人気のあった名前だからなぁ。沢山いるぞ?」

「いいえ。かなり限られますよ。魔力が豊富にあり、強い意志を持つ者など、そうはいません。まして、乗っ取られてなお、抗い続けるなど、並の精神では出来ませんよ」

この場にいる年嵩の者たちはハッと何かに気付いた顔をした。何だろう?

「魔術師団長か・・・・」

ザイツェルア陛下のぽつりと呟いた一言がホールにこだました。
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