貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子

文字の大きさ
95 / 103
攻防

建国宣言

しおりを挟む
ザイツェルア陛下の呟きに、巨人の国の総帥はその身を翻してホールから出て行った。出て行った?続くように各国の総帥と魔術師団長も出て行く。

「・・・・・・。ねぇ、ガル?王様ひとりにしていいの?」

「よくはないな。よくはないが、この場合は仕方ない。魔術師団長の確保のほうが優先順位が高い。それに、ここには俺たちもいるからな。戦力的には問題ない」

護衛するかは別として、という副音声が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。

「巨人の国の魔術師団長の名に誰も気付かなかったのは何故だ?」

ざらぱぱの疑問はもっともだ。

「彼奴は、我が弟より1月程前の生まれでな。ハイデルベルクと名付けられたのだが、さすがに同じ歳で同じ名前は・・・と、ハイディールと名付け直されたのだ。だが、真の名は、ハイデルベルクなのだろうな」

「だが、巨人の国の魔術師団長もこちらに来る前に鑑定を受けたのだろう?引っかからなかったのは何故だ?」

皇帝陛下がもっともな意見を述べる。全員の目が私に向いた。鑑定したのは私だけどさ。

「あの時はバタバタしてたし」

「シャナ。思い出して」

うーん、と巨人の国の冒険者ギルドでの出来事を反芻する。

「あれ?魔術師団長、いた?」

「「「は?」」」

「いないわけ・・・・ん?私は見ていませんね。それどころではありませんでしたし」

「ザイツェルア陛下と王妃殿下たちと一緒にいたはずだが?」

「ギルドにいたのは確かだぞ?気付いたらいなかったが。あの時は、門の騎士が順番に来ていたからなぁ。それに紛れたのかもと気にもしなかったな」

これは・・・・。

「そういえば、破壊神も転移できるよね?女神様が出来るんだし。乗っ取られた人も出来ちゃったりする?」

「「「「「「「「・・・・」」」」」」」」

「そうするとさ、わたしの神聖結界を破壊神は通過できるってことになる、かな?あっ、そういえば、身体を乗っ取られそうになった時も、神聖結界があったわけだから」

衝撃の事実に唖然としていると、慌ただしく出ていった者たちが戻ってきた。

「どこにもおりません!我々の離宮はおろか、城内をくま無く探しましたが、目撃者すら見つけられません」

おう。何処に行った?

「シャナ、場所を特定できるか?」

「う~ん。・・・・さすがに出来ない。りーぱぱ、この城の隷属された人たちの解除をしておいた方がいいかも」

「そうですね。すぐにしましょう」

出来ることはしたし、わたしたちがこの場にいる意味もないというりーぱぱの判断で、隷属の解除に向かうことになった。取り敢えず、隷属された人たちは解除したが、翌日、皇帝陛下のお願い・・・で、城に勤務する全員に鑑定を受けてもらうことになった。あまりにも人数が多すぎて、終わったのはそれから6日後。相変わらず、酷使されてるね、わたし。

巨人の国の魔術師団長が姿を消した翌日、意識の朦朧とした巨人の国の王弟殿下が、冒険者ギルドの転移陣に飛ばされてきた。皇宮にいたわたしたちは、らいじいに呼び出されて慌てて駆けつけ、王弟殿下を鑑定してみると、やはり隷属されており、主はハイデルベルクとなっていた。つまり、王弟殿下ではないハイデルベルクがいると言うことだ。それは・・・・。

「殿下。お気を確かに」

「ハイディは?ハァハァあいつに行けと、ハァハァクッかい、解呪して、もらえとフゥフゥ・・・・。」

わたしたちは顔を見合わせた。王弟殿下の途切れ途切れの話はまだ続いている。

「転移陣は破壊するとフッ・・・・言って、いた。ハァハァもう、意識がハァハァ保たないともフゥフゥ」

「殿下。貴重な情報をありがとうございます。殿下に掛けられていた隷属は解除致しました。こちらのポーションをお飲みいただいた後、ザイツェルア陛下の元にお連れいたします」

王弟殿下は、兄であるザイツェルア陛下の無事を確認できた為か、肩の力を抜いたように見えた。そして、ポーションで体力を回復しなんとか自力で歩けるようになったのを確認して、皇宮から寄越された馬車で巨人の国の離宮へ向かってもらった。

「殿下が尋ねられたハイディという人物が破壊神に身体を乗っ取られた人物でしょうね」

「冒険者ギルドの転移陣を破壊出来る人物か。破壊神に乗っ取られたのは、魔術師団長でほぼ確定だな」

「破壊とは言っても、そんな簡単じゃないだろう?」

「普通の人には無理でしょうね。ですが、破壊神の力を手に入れているならあるいは。どうやら、シャナの勘があたりのようです。乗っ取られた後も抵抗するほどの人物だと思うと惜しい人材を奪われましたね」

「王弟殿下とは、同級生だったか。仲がよかったんだろうな」

王弟殿下の心中を慮ったのか、3人の表情は憂いに歪んだ。体力が回復した後も心労で顔色の悪かった王弟殿下を気遣い、詳細は明日改めて聞くことになっている。

「冒険者ギルドの転移陣からあの状態の王弟殿下を送りつけてきたということは、分かってはいましたが、シャナの神聖結界でもやはり、破壊神には効かないのですね。ということは、王都の神聖結界も巨人の国を覆う神聖結界も破壊神には通用しないということですか。厄介な」

「だが、アンデッドには有効だろ?」

「確かに。それだけでも違いますか・・・・」





王弟殿下を保護したその日の夜。

「私は破壊神である。巨人の国は、私がいただいた。ここに闇国あんこくの誕生を宣言する。破壊の限りを尽くし、この地を原初のようにまっさらにしてくれよう。手始めに、各国に私の配下を送ることにする。神聖結界など、私には効かぬ。せいぜい、楽しみにするがよい」

悍ましい声が直接頭に響いた。聞くに堪えない不協和音に頭痛がする。頭を抱えて蹲った。

「シャナ。大丈夫か?」

米神に指をあて、眉を顰めたガルが私を抱き上げた。

「うん。何なの、あの酷い音は!」

本当っ!ガラスを爪でキーッと引っ掻いて出すあの音より耳障りな不快音だった。

「フゥ。建国宣言、ですか」

「どうするつもりだ?配下とは、誰のことだ?まさか、アンデッドを送り込んでくるわけじゃないよな?」

「そのまさかのような気がする」

破壊神の配下って、それしかいないよね?まさか、隷属した人を送り込む?

さすがに、総帥や騎士団長、近衛騎士団長、魔術師団長たちも考えることは同じだったようで、すぐに騎士団と魔術師団はアンデッドに対応した配置に切り替えられた。そして、聖剣保持者が防衛のために各国に呼び戻される。冒険者ギルドや商業ギルドなどもアンデッドを想定した対応になった。

この日を境に、アンデッドが至る所で見られるようになり、騎士団も冒険者たちもその対応に追われることになる。そして、農村から少しずつ人がいなくなり、食糧不足が懸念され始めるのも時間の問題となりつつある。

もー!やっと、カフェが定着してきたところだったのに!!!温泉付き美容エステホテルも閑古鳥が鳴いちゃうじゃない!

むっきー!許すまじ、破壊神!!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

【完結】愛しくない、あなた

野村にれ
恋愛
結婚式を八日後に控えたアイルーンは、婚約者に番が見付かり、 結婚式はおろか、婚約も白紙になった。 行き場のなくした思いを抱えたまま、 今度はアイルーンが竜帝国のディオエル皇帝の番だと言われ、 妃になって欲しいと願われることに。 周りは落ち込むアイルーンを愛してくれる人が見付かった、 これが運命だったのだと喜んでいたが、 竜帝国にアイルーンの居場所などなかった。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

数多の想いを乗せて、運命の輪は廻る

紅子
恋愛
愛する者を失った咲李亜は、50歳にして異世界へ転移させられた。寝耳に水だ。しかも、転移した先の家で、訪ねてくる者を待て、との伝言付き。いったい、いつになったら来るんですか? 旅に出ようにも、家の外には見たこともないような生き物がうじゃうじゃいる。無理無理。ここから出たら死んじゃうよ。 一緒に召喚されたらしい女の子とは、別ルートってどうしたらいいの? これは、齢50の女が、異世界へ転移したら若返り、番とラブラブになるまでのお話。 16話完結済み 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付きで書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

処理中です...