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攻防
疑問
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あれから、わたしたちは離宮に留まり、タルには帰れていない。
「なあ、シャナ。今回、シャナは、破壊神に乗っ取られた魔術師団長から破壊神の気配を感じなかったが、何故だ?」
破壊神の建国宣言から幾日か経ち、思い出したようにガルがこんなことを言い出した。
「確かに。聖剣の日の冒険者からは気配を感じていましたよね?その違いは分かりますか?」
違い?りーぱぱも無茶を言う。
「そう言えば、そんなこともあったな」
ざらぱぱは、その時のことを思い出すように首が傾いている。もう、随分昔過ぎて、記憶の底に埋もれちゃってたよね。あれから、90年ちょっと。ここに来る前の世界なら確実に死んでる、老衰で。わたしは背も伸びて幼女から少女になったけど、3人の見た目はほとんど変わってない。
「あの時はバタバタしてたし、転移陣の気持ち悪い魔力もあったし、人も沢山いたし」
「聖剣の日も多くの人がいましたよね。破壊神がいると知っていたわけでもありません。今回とそれ程条件的には変わらないはずです」
そうなんだよね。あの当時に比べれば、鑑定も魔力感知も気配察知もその他のどの能力も上がっている。なのに、どうしてあの強烈な破壊神の気配と魔力が分からなかったのか?あの時、第2王子の隷属を解除した後、魔術師団長と対峙したが、破壊神の気配は全くしなかった。神官長の時は、黒い靄が見えたけど、あの時はまだ破壊神の魔力も気配も知らなかった。聖剣の日の時は、破壊神の魔力と気配に、乗っ取られた相手が分からなくても寒気がした。
「魔術師団長のせいか?」
「どういうことだ?ザラム」
ガルの膝の上で、う~んう~んと唸っているわたしに確かめるようにぽつりと溢したのはざらぱぱだった。相変わらず、言葉が足りない。
「あの時はまだ魔術師団長は完全に乗っ取られてはいなかった。そうだな?」
「なるほど。そうですね」
りーぱぱは、ざらぱぱの言わんとすることが分かったようだ。
「正気の魔術師団長が破壊神を抑えていたってことだ」
ん?それって・・・・。
「そんなこと出来るの?破壊神の魔力を抑えてたんじゃなくて?わたしは抗うのも出来なかったよ?」
「伊達に魔術師団長を名乗っていないと言うことですよ。それに・・・・もしかしたら、破壊神の力が以前より弱まっているのかもしれません」
「そんなことあるのか?」
「あくまでも推測ですが、破壊神が停滞した世界の再構築の為に世界を破壊すると考えるとあり得ないとは言い切れません」
「停滞していた世界がまた動き始めたから、力を得られていない?どころか、力を削がれている?」
「可能性ですが」
この世界は、この百年足らずで随分と様変わりした。特許登録した料理が広まり、そこから派生した新しい料理も生み出されているし、わたしもちょくちょく登録している。カフェもベルガの領地にある温泉付き美容エステホテル、つまり、リゾートスパ的なものの一角にオープンしてから、各国の皇都・王都を中心に増えだした。コーヒーだけじゃなく紅茶を専門に扱うカフェもある。ざらぱぱのパパの領地の特産品の紅茶にフルーツの香りを加えたフレーバーティーは、アリア姉様・・・ざらぱぱのママによるスパルタマナー訓練に放り込まれた時に瀕死の状態で作った一品だったりする。紅茶の香りに吐き気をもよおすほど飲まされるとは思わなかった。それを回避するために林檎の皮を入れたのだが、この世界にそういったフレーバーティーは存在しなかった。ミルクティーすらなかった。ハーブティーは言わずもがな。他にも自転車が開発され、今や平民には必需品。タルの衛兵のみんなもそれで移動しているくらいだ。自動車は魔力効率が悪すぎて実用化はまだ難しい。
つまり、まあ、ほとんどわたしのせいなんだけど。
「なら、今の状態はよくないな」
「そうですね。闇国の誕生でアンデッドが増えて、流通が滞るのも時間の問題ですから」
「もうさ、巨人の国を更地にする覚悟で聖魔法をぶちかましたらいいんじゃない?」
だんだんと考えるのが面倒になってきた。だって、放っておいたら、アンデッドは増える一方。巨人の国は荒れ放題になるんだから。
「過激だな。が、まあ、それもありだ」
実行可能なら後先考えずに一も二もなくわたしに賛成してくれるのは、もちろんざらぱぱ。
「それで破壊神は討ち取れるのか?逃すとシャナの身が危なくなる」
ガルはわたしの身を案じて、膝に乗るわたしを抱き締める力が増した。
「悪くはないですが、こちらの戦力を集結させるのに時間が掛かりますし、その場合、シャナひとりで巨人の国を網羅するのは難しいでしょうから聖魔法を使える魔術師をどれくらい配置できるか。逃げ道も塞がなくては意味がありません」
あっという間にシュミレーションして、ダメ出しするのは、りーぱぱの役目。でも、出来ないとも無理だとも言わなかった。この分だとすぐに作戦会議に入りそうだ。
「総帥のところに行ってきます」
案の定、りーぱぱはざらぱぱを連れて離宮を出て行った。
「シャナ。破壊神の配下とやらが現れると忙しくなる。その前に、皇都の散策に行くか?」
「行く!!!」
りーぱぱとざらぱぱが出ていって、特にやることのないわたしとガルは息抜きも兼ねて皇都の市場や工房を見て回ることにした。巨人の国が乗っ取られて、まだそれ程経っていないにも関わらず、物価は上昇し、路地には今までいなかった路上生活者が見受けられた。
「ガル。ベルガの領地が心配になってきた。スパのこともあるから、行っちゃダメ?」
「そうだな。あそこは国境に近い。リールに相談しよう」
うん。今までもガルと一緒にベルガのところに遊びに行くことはよくあった。でも、今は非常事態だから、りーぱぱに相談したほうがいいのは分かる。そして、相談するまでもなく、すぐにベルガの領地に行くことが決まった。
「なあ、シャナ。今回、シャナは、破壊神に乗っ取られた魔術師団長から破壊神の気配を感じなかったが、何故だ?」
破壊神の建国宣言から幾日か経ち、思い出したようにガルがこんなことを言い出した。
「確かに。聖剣の日の冒険者からは気配を感じていましたよね?その違いは分かりますか?」
違い?りーぱぱも無茶を言う。
「そう言えば、そんなこともあったな」
ざらぱぱは、その時のことを思い出すように首が傾いている。もう、随分昔過ぎて、記憶の底に埋もれちゃってたよね。あれから、90年ちょっと。ここに来る前の世界なら確実に死んでる、老衰で。わたしは背も伸びて幼女から少女になったけど、3人の見た目はほとんど変わってない。
「あの時はバタバタしてたし、転移陣の気持ち悪い魔力もあったし、人も沢山いたし」
「聖剣の日も多くの人がいましたよね。破壊神がいると知っていたわけでもありません。今回とそれ程条件的には変わらないはずです」
そうなんだよね。あの当時に比べれば、鑑定も魔力感知も気配察知もその他のどの能力も上がっている。なのに、どうしてあの強烈な破壊神の気配と魔力が分からなかったのか?あの時、第2王子の隷属を解除した後、魔術師団長と対峙したが、破壊神の気配は全くしなかった。神官長の時は、黒い靄が見えたけど、あの時はまだ破壊神の魔力も気配も知らなかった。聖剣の日の時は、破壊神の魔力と気配に、乗っ取られた相手が分からなくても寒気がした。
「魔術師団長のせいか?」
「どういうことだ?ザラム」
ガルの膝の上で、う~んう~んと唸っているわたしに確かめるようにぽつりと溢したのはざらぱぱだった。相変わらず、言葉が足りない。
「あの時はまだ魔術師団長は完全に乗っ取られてはいなかった。そうだな?」
「なるほど。そうですね」
りーぱぱは、ざらぱぱの言わんとすることが分かったようだ。
「正気の魔術師団長が破壊神を抑えていたってことだ」
ん?それって・・・・。
「そんなこと出来るの?破壊神の魔力を抑えてたんじゃなくて?わたしは抗うのも出来なかったよ?」
「伊達に魔術師団長を名乗っていないと言うことですよ。それに・・・・もしかしたら、破壊神の力が以前より弱まっているのかもしれません」
「そんなことあるのか?」
「あくまでも推測ですが、破壊神が停滞した世界の再構築の為に世界を破壊すると考えるとあり得ないとは言い切れません」
「停滞していた世界がまた動き始めたから、力を得られていない?どころか、力を削がれている?」
「可能性ですが」
この世界は、この百年足らずで随分と様変わりした。特許登録した料理が広まり、そこから派生した新しい料理も生み出されているし、わたしもちょくちょく登録している。カフェもベルガの領地にある温泉付き美容エステホテル、つまり、リゾートスパ的なものの一角にオープンしてから、各国の皇都・王都を中心に増えだした。コーヒーだけじゃなく紅茶を専門に扱うカフェもある。ざらぱぱのパパの領地の特産品の紅茶にフルーツの香りを加えたフレーバーティーは、アリア姉様・・・ざらぱぱのママによるスパルタマナー訓練に放り込まれた時に瀕死の状態で作った一品だったりする。紅茶の香りに吐き気をもよおすほど飲まされるとは思わなかった。それを回避するために林檎の皮を入れたのだが、この世界にそういったフレーバーティーは存在しなかった。ミルクティーすらなかった。ハーブティーは言わずもがな。他にも自転車が開発され、今や平民には必需品。タルの衛兵のみんなもそれで移動しているくらいだ。自動車は魔力効率が悪すぎて実用化はまだ難しい。
つまり、まあ、ほとんどわたしのせいなんだけど。
「なら、今の状態はよくないな」
「そうですね。闇国の誕生でアンデッドが増えて、流通が滞るのも時間の問題ですから」
「もうさ、巨人の国を更地にする覚悟で聖魔法をぶちかましたらいいんじゃない?」
だんだんと考えるのが面倒になってきた。だって、放っておいたら、アンデッドは増える一方。巨人の国は荒れ放題になるんだから。
「過激だな。が、まあ、それもありだ」
実行可能なら後先考えずに一も二もなくわたしに賛成してくれるのは、もちろんざらぱぱ。
「それで破壊神は討ち取れるのか?逃すとシャナの身が危なくなる」
ガルはわたしの身を案じて、膝に乗るわたしを抱き締める力が増した。
「悪くはないですが、こちらの戦力を集結させるのに時間が掛かりますし、その場合、シャナひとりで巨人の国を網羅するのは難しいでしょうから聖魔法を使える魔術師をどれくらい配置できるか。逃げ道も塞がなくては意味がありません」
あっという間にシュミレーションして、ダメ出しするのは、りーぱぱの役目。でも、出来ないとも無理だとも言わなかった。この分だとすぐに作戦会議に入りそうだ。
「総帥のところに行ってきます」
案の定、りーぱぱはざらぱぱを連れて離宮を出て行った。
「シャナ。破壊神の配下とやらが現れると忙しくなる。その前に、皇都の散策に行くか?」
「行く!!!」
りーぱぱとざらぱぱが出ていって、特にやることのないわたしとガルは息抜きも兼ねて皇都の市場や工房を見て回ることにした。巨人の国が乗っ取られて、まだそれ程経っていないにも関わらず、物価は上昇し、路地には今までいなかった路上生活者が見受けられた。
「ガル。ベルガの領地が心配になってきた。スパのこともあるから、行っちゃダメ?」
「そうだな。あそこは国境に近い。リールに相談しよう」
うん。今までもガルと一緒にベルガのところに遊びに行くことはよくあった。でも、今は非常事態だから、りーぱぱに相談したほうがいいのは分かる。そして、相談するまでもなく、すぐにベルガの領地に行くことが決まった。
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