貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子

文字の大きさ
97 / 103
攻防

ベルガの危機

しおりを挟む
わたしたちがベルガの領地を心配していた頃、皇帝陛下の下に緊急の伝令がもたらされていた。サムとホトの軍事施設に隣接された犯罪者の収容施設から犯罪者が消えたというものだ。他にもネラル鉱山、バイカ鉱山の犯罪者も看守の目の前で消えたという。それは、すぐに騎士団総帥であるパパの元に届けられ、そこにいたリールとザラムの知るところとなる。

「どう考えても破壊神の仕業だろ?」

「それ以外に考えられません」

「だが、何処に消えた?いや、違うな。何のために連れ去ったか、だな」

ザラムの言葉に総帥がはっとした顔をした。

「すぐにサムとホトの軍事施設を閉鎖する。施設にいる者が帰還次第、転移陣を止めよ。ネラル鉱山、バイカ鉱山も閉鎖!看守は近隣の街へ退避。急げ!」

騎士団は慌ただしくなり、話し合いどころではなくなった。

「ベルガの領地が心配ですね」

「ホトからアツまでは、1月だからな。普通の人間にはあの砂漠は超えられんが、破壊神が味方についていたらわからん」

「確かに。総帥、我々は暫くここを離れます。何かあれば、ハウゼン家に連絡を入れてください」

「分かった。気をつけて行けよ」






騎士団に赴いていたりーぱぱとざらぱぱが慌てた様子で戻ってきた。そして、すぐにベルガの領地に行くという。わたしとガルは顔を見合わせた。ちょうど行きたいと思っていたところだ。

「サムとホトの収容所の罪人たちが消えたと連絡があった。ベルガの領地に辿り着かないとは言い切れん」

「罪人たちをどうするつもりだ?」

「あ。ねぇ、破壊神はさぁ、各国に使者を送るって行ってたよねぇ?」

「まさか。その使者に?」

「だが、罪人たちは女神様に能力を制限されているんだぞ?普通に生活するだけでも精一杯じゃないか?」

「破壊神が手を貸してたら?そんなの簡単に解除できるじゃない?」

嫌な可能性に辿り着いたわたしたちは急いでカフェイの森に転移した。ここは、領主主導で整備され、引退したB級以上の冒険者によって管理されている。そのはずなのに・・・・。

「ここ、カフェイの森だよね?」

「間違いなく」

分かってる。見間違うわけもない。だって、コーヒーの木があるんだもん。

「人の気配が全くありませんね」

いつもなら、冒険者の居場所を避けてベルガの家に向かう。

「何で誰もいねーんだ?」

「取り敢えず、領主館に行きますよ」

カフェイの森から領主館までの道のりにある農地にも人は見当たらない。収穫できる野菜もあるのにこれはおかしい。

カン・・・・カン・・キン
ザッ・・・・ブッ
ドーン・・ガラガラ・・・・ザー

遠くから金属のぶつかり合う音や地面が抉れる音が微かに耳に届く。

「!!!これは!戦闘ですか?!」

「急ぐぞ」

ガルはさっと私を抱え、全員が全速力で走り出した。

(スノウ、先行しろ!)

ガルもざらぱぱもりーぱぱも全速力で走りながら、酷く警戒しているのが分かる。一足先に辿り着いたスノウから念話が届いた。

(う~。気持ち悪い~)

(スノウ!大丈夫?)

(破壊神の気配がする人たちがいるぅ。アンデッドもいるのぉ)

それを聞いたガルたちのスピードがさらに上がった。漸く辿り着いたそこは、さながら地獄の一丁目というやつだろうか。内臓の飛び出した死体がズルズルと蠢いているんだから、吐きそうになる。

「ベルガ!」

「クッ・・・・。ガルドか?」

「今助ける。シャナ!」

ガルたちに神聖結界を纏わせる。

「シャナ、聖水を雨のように降らせなさい」

わたしはりーぱぱの指示に従うべく、急いでインベントリーから聖水の入った樽を取り出して、魔法でシャワーのように辺り一帯にばら撒いた。これで、出来たての人間のアンデッドなら消える。

「チッ。余計なことしてんじゃねえ!!!」

ドスの効いた声で怒鳴る男とその仲間が忌々しそうにわたしたちを睨みつけてきた。その周囲には、少し弱っただけの魔獣のアンデッドが護衛のように取り囲んでいる。

「シャナ、ベルガたちを!」

「うん!」

アンデッドと男たちはガルたちに任せて、わたしはベルガや倒れている人たちにポーションを飲ませてまわる。上級ポーションの大盤振る舞いだ。戦える者たちは直ぐさまガルたちに加勢するために走り出した。その後ろ姿に神聖結界を纏わせるのもわたしの役目だ。わたしは、何とか一命を取り留めた戦えない者を1カ所に集めて、神聖結界を張った後、ガルたちを手伝うべく戦いに参戦する。聖剣を持つガルたちですらてこずる魔獣のアンデッドたちに加えて、男たちも相当の力の持ち主だった。

「ハハハハハハ!破壊神様のお力を得ている俺たちに敵うと思うなよ!」

「ガル!りーぱぱ!ざらぱぱ!アンデッドは任せて!!!スノウはガルたちの援護、よろしく!」

(まっかせてぇ!)

わたしは自前の聖剣を握りしめた。80歳になったとき、りーぱぱから持つように言われて創ったのだ。破壊神は聖剣でしか切り裂けない。万が一の時、身を守れるようにと。わたしだってガルたちとずっと一緒にパパたちの訓練を受けてきたのだ。ベルガたちも援護してくれるだろう。

「無茶はするなよ」

「助かります」

「思いっきりやれ!」

「うん!ベルガ!」

「ここに居る!」

「アンデッドをガルたちから引き離すよ」

「分かった。全員、行くぞ」

ガルたちの周りに聖水を降らせて、ベルガたちが少しずつ追い込んでいく。ガルたちも男たちを攻撃しつつ、アンデッドと隔離していく。ガルたちと距離をとらせたアンデッドに絶えず聖水をかけ続ける。そして、聖剣で屠っていく。ベルガたちも聖水付きの剣で何度も斬りつけ討ち取っている。わたしも途中、上級ポーションを飲みながら、身体の限界まで剣を振るった。いくらポーションで体力を回復しても疲れは蓄積されていくのだ。そして、最後の一体を屠ったわたしは、ガルたちの戦闘も終結したことを確認して、フラフラとその場に倒れ込んだ。その直前、走り込んできたガルに受け止められたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

処理中です...