貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子

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攻防

ベルガの危機

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わたしたちがベルガの領地を心配していた頃、皇帝陛下の下に緊急の伝令がもたらされていた。サムとホトの軍事施設に隣接された犯罪者の収容施設から犯罪者が消えたというものだ。他にもネラル鉱山、バイカ鉱山の犯罪者も看守の目の前で消えたという。それは、すぐに騎士団総帥であるパパの元に届けられ、そこにいたリールとザラムの知るところとなる。

「どう考えても破壊神の仕業だろ?」

「それ以外に考えられません」

「だが、何処に消えた?いや、違うな。何のために連れ去ったか、だな」

ザラムの言葉に総帥がはっとした顔をした。

「すぐにサムとホトの軍事施設を閉鎖する。施設にいる者が帰還次第、転移陣を止めよ。ネラル鉱山、バイカ鉱山も閉鎖!看守は近隣の街へ退避。急げ!」

騎士団は慌ただしくなり、話し合いどころではなくなった。

「ベルガの領地が心配ですね」

「ホトからアツまでは、1月だからな。普通の人間にはあの砂漠は超えられんが、破壊神が味方についていたらわからん」

「確かに。総帥、我々は暫くここを離れます。何かあれば、ハウゼン家に連絡を入れてください」

「分かった。気をつけて行けよ」






騎士団に赴いていたりーぱぱとざらぱぱが慌てた様子で戻ってきた。そして、すぐにベルガの領地に行くという。わたしとガルは顔を見合わせた。ちょうど行きたいと思っていたところだ。

「サムとホトの収容所の罪人たちが消えたと連絡があった。ベルガの領地に辿り着かないとは言い切れん」

「罪人たちをどうするつもりだ?」

「あ。ねぇ、破壊神はさぁ、各国に使者を送るって行ってたよねぇ?」

「まさか。その使者に?」

「だが、罪人たちは女神様に能力を制限されているんだぞ?普通に生活するだけでも精一杯じゃないか?」

「破壊神が手を貸してたら?そんなの簡単に解除できるじゃない?」

嫌な可能性に辿り着いたわたしたちは急いでカフェイの森に転移した。ここは、領主主導で整備され、引退したB級以上の冒険者によって管理されている。そのはずなのに・・・・。

「ここ、カフェイの森だよね?」

「間違いなく」

分かってる。見間違うわけもない。だって、コーヒーの木があるんだもん。

「人の気配が全くありませんね」

いつもなら、冒険者の居場所を避けてベルガの家に向かう。

「何で誰もいねーんだ?」

「取り敢えず、領主館に行きますよ」

カフェイの森から領主館までの道のりにある農地にも人は見当たらない。収穫できる野菜もあるのにこれはおかしい。

カン・・・・カン・・キン
ザッ・・・・ブッ
ドーン・・ガラガラ・・・・ザー

遠くから金属のぶつかり合う音や地面が抉れる音が微かに耳に届く。

「!!!これは!戦闘ですか?!」

「急ぐぞ」

ガルはさっと私を抱え、全員が全速力で走り出した。

(スノウ、先行しろ!)

ガルもざらぱぱもりーぱぱも全速力で走りながら、酷く警戒しているのが分かる。一足先に辿り着いたスノウから念話が届いた。

(う~。気持ち悪い~)

(スノウ!大丈夫?)

(破壊神の気配がする人たちがいるぅ。アンデッドもいるのぉ)

それを聞いたガルたちのスピードがさらに上がった。漸く辿り着いたそこは、さながら地獄の一丁目というやつだろうか。内臓の飛び出した死体がズルズルと蠢いているんだから、吐きそうになる。

「ベルガ!」

「クッ・・・・。ガルドか?」

「今助ける。シャナ!」

ガルたちに神聖結界を纏わせる。

「シャナ、聖水を雨のように降らせなさい」

わたしはりーぱぱの指示に従うべく、急いでインベントリーから聖水の入った樽を取り出して、魔法でシャワーのように辺り一帯にばら撒いた。これで、出来たての人間のアンデッドなら消える。

「チッ。余計なことしてんじゃねえ!!!」

ドスの効いた声で怒鳴る男とその仲間が忌々しそうにわたしたちを睨みつけてきた。その周囲には、少し弱っただけの魔獣のアンデッドが護衛のように取り囲んでいる。

「シャナ、ベルガたちを!」

「うん!」

アンデッドと男たちはガルたちに任せて、わたしはベルガや倒れている人たちにポーションを飲ませてまわる。上級ポーションの大盤振る舞いだ。戦える者たちは直ぐさまガルたちに加勢するために走り出した。その後ろ姿に神聖結界を纏わせるのもわたしの役目だ。わたしは、何とか一命を取り留めた戦えない者を1カ所に集めて、神聖結界を張った後、ガルたちを手伝うべく戦いに参戦する。聖剣を持つガルたちですらてこずる魔獣のアンデッドたちに加えて、男たちも相当の力の持ち主だった。

「ハハハハハハ!破壊神様のお力を得ている俺たちに敵うと思うなよ!」

「ガル!りーぱぱ!ざらぱぱ!アンデッドは任せて!!!スノウはガルたちの援護、よろしく!」

(まっかせてぇ!)

わたしは自前の聖剣を握りしめた。80歳になったとき、りーぱぱから持つように言われて創ったのだ。破壊神は聖剣でしか切り裂けない。万が一の時、身を守れるようにと。わたしだってガルたちとずっと一緒にパパたちの訓練を受けてきたのだ。ベルガたちも援護してくれるだろう。

「無茶はするなよ」

「助かります」

「思いっきりやれ!」

「うん!ベルガ!」

「ここに居る!」

「アンデッドをガルたちから引き離すよ」

「分かった。全員、行くぞ」

ガルたちの周りに聖水を降らせて、ベルガたちが少しずつ追い込んでいく。ガルたちも男たちを攻撃しつつ、アンデッドと隔離していく。ガルたちと距離をとらせたアンデッドに絶えず聖水をかけ続ける。そして、聖剣で屠っていく。ベルガたちも聖水付きの剣で何度も斬りつけ討ち取っている。わたしも途中、上級ポーションを飲みながら、身体の限界まで剣を振るった。いくらポーションで体力を回復しても疲れは蓄積されていくのだ。そして、最後の一体を屠ったわたしは、ガルたちの戦闘も終結したことを確認して、フラフラとその場に倒れ込んだ。その直前、走り込んできたガルに受け止められたのだった。
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