貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子

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攻防

戦闘開始

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「こちらの準備は整いました」

「こちらも万全です」

「よし。時間までそのまま待機だ」

「「は!」」

とうとう作戦決行の日がやって来た。あれから、各国でベルガの領地で起こったことと同じことが起きた。最近になって発展してきた街や村の中でも比較的警備の行き届いていない街や村が狙われた。だが、りーぱぱの破壊神の力の源についての考察をパパが皇帝陛下に奏上。そこから各国に話が回った結果、王様たちは、そういった自分たちで防衛できない町や村に冒険者や騎士たち、魔術師たちを国やギルドから派遣することを決定したことで被害は最小限に抑えられたと言っていいだろう。つまり、りーぱぱの予想は当たっていたということになる。破壊神の恩恵を称号に持つ者の強さとアンデッドに苦戦したものの数の多さで捩じ伏せたようだ。やはり、あの犯罪者たちが闇国からの、破壊神からの使者だったのだろう。犯罪者も無限にいるわけではないから、それからは静かなものだった。それが不気味ではあるのだけど。ともかく、『聖魔法をぶっ放せ』計画はいよいよ決行となる。


(シャナ、準備はいいか?)

(うん。何時でもいけるよ!)

わたしはガルとスノウに乗って、巨人の国の王都上空に来ている。当然ながら、人影は全くない。ただ、お城から破壊神の魔力を感じる。神聖結界を張っていても怖気がたつ。ここで破壊神を逃してしまうと次にいつこんな機会に恵まれるか分からない。わたしに与えられた任務は重大だと思うと身体に力が入る。と、腰に回されたガルの腕に力がこもった。

「大丈夫だ。シャナは何があっても俺が守る。リールもザラムもいる。ジャイ、クレー、シアン、バル、それにもうひとりの聖剣保持者も万端だ。各国の騎士団もこの日のために鍛えてきたんだ。魔術師団だって聖属性を得た者はたくさんいる。聖属性の魔力を貯め込める魔道具だってある。だから、不安にならなくていい。みんなを信じろ」

わたしはこくりと頷いた。身体の力を抜いて、ゆっくりと魔力を巡らせる。そして、いつでも聖魔法をぶっ放せるように準備を整えた。1度、ガルが闇落ちしそうになった時、無意識に放ったあれである。お蔭でベルガの領地は普通に作物が育つようになったという、おまけ付きで。今回はあの時より広範囲だけど、MP∞のわたしには関係ない。と、狼煙があがった。

「いっけぇー!!!」

渾身の力を込めて聖魔法をぶっ放す。

ズザザザザザザザザザ

凄い勢いでわたしの魔力が巨人の国の王都を駆け抜けていく。それを合図に、城から多数のアンデッドが姿を現した。その中に破壊神は居ない。

「続けー!!!」

戦闘が始まった。わたしとガルはスノウで王城を目指す。目指すは破壊神。他の聖剣保持者もそれぞれ王城に向けて、進撃しているはずだ。その間にも聖魔法を放ち続ける。そして、玉座の間に破壊神は居た。

(破壊神を見つけた!玉座の間だ)

(すぐに行く!)

(手前まで来ています)

ドーン

ここから近い場所で花火があがった。破壊神を見つけた時の合図をりーぱぱが上げたのだ。念話はわたしたちの間でしか出来ないから、見つけた人は居場所を教えるためにそう決められた。これなら、戦闘中でも間違えることはない。

「来たか。探す手間が省けるというもの。その身体貰い受けよう」

わたしたちを視界に入れて早々、巨人の国の魔法師団長は、いや破壊神はニヤリと表情を歪めた。だが、冗談じゃない。これは、ガルと一緒に居るために女神様がくれたもの。破壊神に渡すわけがない。

「嫌に決まってる。もうさ、いい加減この地から出て行ってよ。発展し始めたこの地に用はないはずでしょ?」

「1度、破壊すると決めたからにはやり遂げねばならぬ」

面倒くさ!やっぱり倒すしかないの?聖剣で切り刻んで?どこまで切り刻めばいいのかな?細切れ、とか?わたしがどうしたら破壊神を倒したことになるのかな?と考えているうちにりーぱぱとざらぱぱがここに走り込んできた。

「シャナ!」

「待たせたな」

「りーぱぱ。ざらぱぱも!」

「ジャイたちもすぐに来るぞ。王城に入ったのを確認した」

「さて、では始めましょうか?」

りーぱぱの一言でガルがスノウの上から飛び降りて行った。ざらぱぱもりーぱぱもそれに呼応して破壊神に向かって行く。わたしはスノウに乗ったまま聖魔法を放つのが仕事だ。アンデッドまではさすがに相手に出来ないだろう。

「遅くなった」

「もう始まってんのか?!」

「僕も行かせてもらうね」

「腕が鳴る」

「いいとこ取り、させてもらちゃおうかなぁ」

ジャイ、クレー、シアン、バルと残りの聖剣保持者も参戦して、破壊神に乗っ取られた巨人の国の魔法師団長との戦いが始まった。破壊神に強化されている魔法師団長は、強かった。8人がかりでも手も足も出ない。

「フハハハハハハ。その程度か。口ほどにもないな。この身体もなかなかどうして。使い勝手がいい。だが・・・・」

戦いの最中、破壊神はその視線をわたしに向けてきた。そして、視線が交わる。それだけで、身体がカタカタと震え始める。恐怖に全身全霊で聖魔法を繰り出してしまった。破壊神めがけて。

「シャナ!!!」

ガルの呼ぶ声が聞こえた気がする。それでもわたしの中の恐怖はどんどんと膨れ上がっていく。そして、以前と同じように真っ暗な場所に突き落とされた。右も左も、上と下すらも分からない漆黒の空間へ。不意に何かに捕まれて、元いた場所から引き離される感覚にさらに恐怖が募る。

(シャナ。ダメだよ?恐怖に囚われちゃダメ)

(何?)

(今のシャナは魂と肉体がちゃんと引っ付いてるから簡単には離れないよ。だから、怯えないで)

(本当?)

(今、ガルが一生懸命こっちに来ようと足掻いてるよ)

(ガル?)

(そう。シャナの大切な番)

(番?)

わたしを掴んで離さない何かに引っ張られていると、わたしの魂を直接振るわせるように音が響いた。

「シャナ!」

そうだ。ガルの為にも抗わなくては!恐怖に負けてなんていられない!

「チッ。余計な真似を」

その言葉の直後、わたしはスノウに乗っている自分を思い出した。
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