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2.馴れ初め
しおりを挟むだから、正宗君のことは「こんなイケメンと一回だけでもやりたいなぁ」なんて思ったりもしたけれど、彼は自他共に認める真面目君なので、自分みたいな貞操観念がバグっている女とは無縁の人間だと思っていた。
それなのになぜあんなことが起こったんだろう。
「彩さんは……彼氏とか、いるだろうか」
「はえ?」
講義が終わり教室から人がまばらになった頃、突然正宗君に話しかけられる。
「いや、その、急にすまない」
正宗君はいつものポーカーフェイスを崩し、顔を真っ赤にしている。
「君は男性が苦手だと聞いたから……俺が友達として一緒に過ごすのも嫌なんじゃないかとずっと悩んでいたんだ」
「私は嫌いな人と友達にならないよ」
「……でも、これから俺が言うことはきっと君を困らせることになると思う……それでも言わせてほしい」
そう言うと正宗君は私をまっすぐ見据えてこうはっきりと告げた。
「俺は彩さんのことが好きだ。付き合ってください」
私は思いもよらない出来事にしばらくぽかんとしてしまった。
だってあの正宗君が私のことを好きだなんて思いもしなかったから。
「え……どうして、正宗君?」
「やっぱり困らせてしまったな……ごめん、いきなりこんなことを」
「ぎゃ、逆に聞いてもいい?正宗君。なんで私のことを好きになったの?」
純粋な疑問で私は正宗君に逆に聞き返してしまった。
はじめての出会いから半年。
正宗君とはたまに他愛ない話をするようになり、私たちはゼミ仲間としてそれなりに仲が良いとは思っていたけれど。
これまでのやり取りを辿っていっても正宗君が私と付き合いたいと思うようになった決定的なものが何か私には思い当たらなかったからだ。
「す、すきな、と、ところ…」
また正宗君は耳まで真っ赤にして言い淀んだものの、こう答えた。
「か、かわいい……から……だ」
「……そっか」
(ああ、そうか)
学科でもイケメンで誠実と名高い正宗君に可愛いと言われて喜ばない女子はいないだろう。
けど私は手放しに喜ぶことはできなかった。
(結局正宗君も私の上っ面に騙されているだけ)
これまでも何人かに好意を寄せられたことはあったけど、私の本性を知ると皆逃げしてしまった。
真面目な正宗君だもの。大学では猫かぶって純粋ぶっている私に騙されてしまったんだ。
「ごめんなさい」
そんな汚い私は、綺麗な正宗君には相応しくない。
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