愛の行方

河野彰

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第一章:静謐な誓い

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 夜の帳が静かにその部屋に落ちていた。
 コンクリートが打ちっぱなしの壁、音を吸収する完全防音のそっけない部屋。
 まるで自分のようだと奏多は思う。
 誰にも執着せず、男女を相手にSMプレイを行う。決して受け側やM側には回らず支配する側に立っていた。
 深い夜の静寂を切り裂くように、シトラスとスパイスが混じり合う鋭い香りが部屋に立ち込める。シャネルのエゴイストプラチナム。奏多が好んで纏うその香りは、彼が築き上げた冷徹な壁そのものだった。  
 二十八歳。建築士という光の世界を目指しながらも、奏多は違法な名簿屋を生業にしていた。百八十五センチの長躯、鍛え上げられた肉厚な肢体は、白人特有の透き通るような白い肌に覆われ、夜の帳の中でも異様な存在感を放っていた。  
 窓の外には、都会の無機質な夜景が広がっている。
 ベッドの中でかすかに甘い声が漏れた。
 恋人の汐里の甘えた声だった。
「奏多くん、眠らないの……?」
 奏多が唯一愛し、執着し、その身をゆだねて甘えられる年下の女。長い腰までのアッシュグレージュの髪は柔らかく、ほんのり乗せたチークと柔らかなピンクのルージュが今は半分落ちかけている。奏多がその唇を貪ったからだ。
「何だよ、寂しいのか」
「うん。一緒に寝よう……?」
 甘え声はその実、奏多を甘やかすためのものだ。明日も早いんでしょう?とそのまん丸な瞳が問うてくる。だから早く寝ようと。
 吐息まで甘い女に奏多は口づける。縋るように、甘えるようにその胸に手を当て柔らかく揉む。小ぶりだが形の良いおわん型の乳房が手の中で潰される。
「んふふ……甘えん坊なんだから」
 汐里はいつも、奏多の言動を止めたりはしない。ただ傍で見つめているだけだ。
 だから……。と奏多は思う。乳房の先端の突起を甘く舌の上で転がしてやりながら、内股に手を差し入れる。しっとり湿ったそこに指を深く沈めて先ほどまで自分の熱が押し入っていた膣内に指を挿入する。
「んふ……、んぅ」
 絶対拒まれない。そんな安心感があるから奏多は決心する。この夜の家業はもう辞めよう。普通の男として働き、汐里と家族を持ち、普通の未来を手に入れる。
 深く楔を汐里の内側に突き入れて奏多は夜が更けるまで彼女の中から出ることはなかった。
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