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第2章

第9話 リリス13歳 魔法学園入学式1

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リリスは王都の屋敷で朝からバタバタしていた。

「リリスお嬢様、お急ぎください。初日から遅刻してしまいます」

そうリリス本人より焦った表情で声をかけるのは、侍女のマリー。

「分かってるわ。やっぱり昨日の夜、読書しちゃったのが、ダメね。大丈夫だと思ったのに」

「お嬢様の"大丈夫"は大抵ダメなパターンです。いい加減、学ばれたらいかがですか?」

「むぅ。マリーに朝からお説教されるとは」

リリスは自虐的な笑みで顔を引きつらせながら、自室をパタパタと出ていく。
階段を急いで下りていくと、母と弟が待っていた。

「リリス、あなたは相変わらずね。もう13歳なんだから、いい加減落ち着きなさい」

「本当に姉さまは、僕を見習って落ち着いたほうがいいと思います。これではヘンリー様に呆れられてしまいます」

母のローズはため息をつきながら、弟のアーウィンは呆れ顔でリリスに声をかけた。

「うっ、うるさいなあ。アーウィン、生意気よ」

「何がうるさいもんですか。姉さんが僕に文句を言われないよう行動すればいいだけです」

「もう、分かったわよ。それじゃ、行ってまいります」

そんなアルバート家のやり取りをまわりに控えている執事や侍女が生温かい目で見ている。
 
「いってらっしゃい」

「姉さん、忘れ物ない?」

「「行ってらっしゃいませ」」

屋敷の皆の言葉を背にリリスは、飛び出していった。

「もうアーウィンは私をなんだと思ってるのよ」

ブツブツつぶやきながら、リリスは馬車に乗り込んだ。その少女のきれいに手入れされた髪には、婚約者から送られた髪留めが付けられていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


今日はリリスが学園に入学する記念すべき日である。

学園とは、プロメア王国の王都ギャレーに建つセントラード魔法学園だ。

王国の貴族から一般国民まで通うことができる。
しかし学費がそれなりにかかるため、一般国民で入学できるのは必然的に上流階級の商家などの子供たちが大半だ。

学園には魔法科と勉学科があり、魔力を持つものは魔法科に在籍し、魔力のコントロールや魔法を学ぶ。
一方、魔力のない者は勉学科に在籍し、日々勉強に励む。魔力がないといっても、勉学科でも魔法についても学ぶ。
要するに、魔法科との違いは魔法の実技があるかないかだけだ。

アルバート家はみんな魔力持ちなので、両親もこの学園の卒業生だった。
父のダーウィンは氷魔法、母のローズは癒し魔法を使える。
弟のアーウィンも来年、学園に入学する予定だ。

魔法の属性は入学後に判定する為、リリスのそれはまだわからない。
魔法科所属だけが、いまわかっていた。

リリスの婚約者ヘンリーは一年前に入学しており、魔法科で学んでいる。
どうやら彼の属性は風らしい。


リリスは馬車に揺られながら、これからの学園生活へ想いを馳せる。

小窓から外を見ると、まるでお祝いするように雲ひとつない青空が広がっていた。
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