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第3章
第126話 リリス14歳 西の森1
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門を出たリリスは目の前に広がる景色を見渡した。
いつも馬車の中から見る景色とは全く違った。街の近くには民家も点在する。そこから子供の遊ぶ声が聞こえ、忙しそうに畑を手入れする農夫の姿もあった。リリスには、とても新鮮だった。
(不思議よね。目線が少し変わるだけで、見える景色がこんなにも違うなんて・・・)
そして大きく深呼吸したリリスは、ネージュの追跡を再開した。
テクテクと一本道を歩くネージュは、もうリリスを振り返ることはなかった。さすがにこの道では、迷うことはないと思っているのだろう。
やがて辿り着いたのは、西の森だった。
歩みを止めたネージュは森の入口で座った。リリスは横に立ち、森の木々を見上げる。そしてアルバスの言葉を思い出した。
『森には近付かないこと。絶対にだ』
(先生、ごめんなさい。約束破ってしまって。いま森が目の前です)
「精霊を従えし者。森に来たれ。汝失われた過去を求めよ。さすれば与えられん」
リリスはディファナの手紙の文言を口にすると、ブルっと身体を震わせた。
ちょうどその時、歌が聞こえてきた。それは、いつも深夜に流れてきた歌だった。屋敷で聞くよりもはっきり聞こえる。声は男性のもののようだった。
(あっ、いつもの歌・・・そう言えば昨日、西から聞こえてきた気がした。ここからだったんだ)
すると横に座っていたネージュが立ち上がると、ウーオーンと鳴いた。そして森へと入っていく。
リリスはディファナの手紙のこともあり、森に入るのが怖かった。しかし同時に歌への好奇心もあった。
「手紙には"失われた過去を求めよ"とあったわ。それなら求めなければ、大丈夫ってことよね。
大丈夫。大丈夫。私は求めないから・・そもそも失われた過去なんてないし」
そう自分に言い聞かせるように呟いたリリスは、恐る恐る前へと足を踏み出し、ネージュとリリスの姿は森へと消えた。
森の中は所々陽の光が差し込み、リリスが思っていたよりも明るかった。しかしその明るさも奥へ進むにつれ、仄暗いものへと変わっていった。
ネージュはどんどん進む。それは歌の聞こえてくる方角だった。
(ネージュは歌っている人の所へ行こうとしてるの?この言葉、知らないわ。どこの言葉だろう。知らない言葉ってことは、この国の人じゃない・・・
ディファナさんって可能性もあるわね。魔女語?みたいなのあったりする?あぁ、アルミーダさんにもっと聞いておけばよかった
それよりディファナさんだったら、私どうなっちゃうの?まさか物騒なことしないよね・・・・いやいや、ないない!手紙にはそんなこと書いてなかったもん。"求めればあげるよ"的なこと書いてあったし・・)
しばらく歩くと森の木々が赤く染まりだした。ネージュの進む先も辺りが一面が赤く染まっている。
リリスはゴクリと喉を鳴らすと、大きく息を吐いた。彼女の表情は明らかに緊張していたが、その歩みは震えることもなく止まることもなかった。
そしてリリスは、少し開けた場所に辿り着いた。そこだけ木が生えておらず、ちょっとした広場になっている。そして、その真ん中に一本の樹木がそびえ立っていた。
その木はリリスが見上げるほど大きかった。歌はこの木から聞こえてくるようだった。そしてなにより周りの木々とは全く違っていた。リリスの目の前の木は、赤い炎を上げていたのだ。ここへ来る直前の木々が赤かったのもこの炎のせいだったのだ。
いつも馬車の中から見る景色とは全く違った。街の近くには民家も点在する。そこから子供の遊ぶ声が聞こえ、忙しそうに畑を手入れする農夫の姿もあった。リリスには、とても新鮮だった。
(不思議よね。目線が少し変わるだけで、見える景色がこんなにも違うなんて・・・)
そして大きく深呼吸したリリスは、ネージュの追跡を再開した。
テクテクと一本道を歩くネージュは、もうリリスを振り返ることはなかった。さすがにこの道では、迷うことはないと思っているのだろう。
やがて辿り着いたのは、西の森だった。
歩みを止めたネージュは森の入口で座った。リリスは横に立ち、森の木々を見上げる。そしてアルバスの言葉を思い出した。
『森には近付かないこと。絶対にだ』
(先生、ごめんなさい。約束破ってしまって。いま森が目の前です)
「精霊を従えし者。森に来たれ。汝失われた過去を求めよ。さすれば与えられん」
リリスはディファナの手紙の文言を口にすると、ブルっと身体を震わせた。
ちょうどその時、歌が聞こえてきた。それは、いつも深夜に流れてきた歌だった。屋敷で聞くよりもはっきり聞こえる。声は男性のもののようだった。
(あっ、いつもの歌・・・そう言えば昨日、西から聞こえてきた気がした。ここからだったんだ)
すると横に座っていたネージュが立ち上がると、ウーオーンと鳴いた。そして森へと入っていく。
リリスはディファナの手紙のこともあり、森に入るのが怖かった。しかし同時に歌への好奇心もあった。
「手紙には"失われた過去を求めよ"とあったわ。それなら求めなければ、大丈夫ってことよね。
大丈夫。大丈夫。私は求めないから・・そもそも失われた過去なんてないし」
そう自分に言い聞かせるように呟いたリリスは、恐る恐る前へと足を踏み出し、ネージュとリリスの姿は森へと消えた。
森の中は所々陽の光が差し込み、リリスが思っていたよりも明るかった。しかしその明るさも奥へ進むにつれ、仄暗いものへと変わっていった。
ネージュはどんどん進む。それは歌の聞こえてくる方角だった。
(ネージュは歌っている人の所へ行こうとしてるの?この言葉、知らないわ。どこの言葉だろう。知らない言葉ってことは、この国の人じゃない・・・
ディファナさんって可能性もあるわね。魔女語?みたいなのあったりする?あぁ、アルミーダさんにもっと聞いておけばよかった
それよりディファナさんだったら、私どうなっちゃうの?まさか物騒なことしないよね・・・・いやいや、ないない!手紙にはそんなこと書いてなかったもん。"求めればあげるよ"的なこと書いてあったし・・)
しばらく歩くと森の木々が赤く染まりだした。ネージュの進む先も辺りが一面が赤く染まっている。
リリスはゴクリと喉を鳴らすと、大きく息を吐いた。彼女の表情は明らかに緊張していたが、その歩みは震えることもなく止まることもなかった。
そしてリリスは、少し開けた場所に辿り着いた。そこだけ木が生えておらず、ちょっとした広場になっている。そして、その真ん中に一本の樹木がそびえ立っていた。
その木はリリスが見上げるほど大きかった。歌はこの木から聞こえてくるようだった。そしてなにより周りの木々とは全く違っていた。リリスの目の前の木は、赤い炎を上げていたのだ。ここへ来る直前の木々が赤かったのもこの炎のせいだったのだ。
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