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第3章
第133話 リリス14歳 再び森へ2
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「ねえ、メイル。あなたがここを離れない理由ってなあに?」
ヘンリーとの話がつくと、リリスは改めてメイルに話しかけた。しかしメイルはネージュを見つめるだけで、当然返事は返ってこない。リリスは「まっ、そうよね」と肩をすくめた。そして立ち上がると、ヘンリーに言った。
「ねっ、メイルいたでしょう?」
「そうだね。ここから動かないってことは、やっぱりこの木が理由かな」
そう言って燃える木を下から見上げたヘンリーはほんの僅かに目を閉じる。そして頭の中を整理したのかぱっと目を開けると、リリスに向かって微笑み言った。
「触ってみようか」
「えっ?」
まさか彼からそんな提案がされるなんて思ってもみなかったリリスの瞳は驚きの色を滲ませ、ヘンリーを見る。
「だからこの木に触ってみようか。メイルがこんなに気にしてるってことは、危険なものではないかもしれない。でも危険がないとも言えないから、僕がやる。
それに好奇心旺盛な君が触ってみることを考えなかったとは思えないなぁ」
「うっ・・なんで分かったの。それは私も考えたよ。でももし貴方に何かあったら、どうするの?もし・・・もしもディファナが絡んでたら・・」
リリスはそう言いながら、彼の袖をギュッ掴んだ。ヘンリーは彼女のその手に自分の手を優しく重ね、言った。
「やっぱり。リリィならそうしそうだなって、思っちゃったんだよね」
そう言って微笑み、リリスの手に触れていた自身の手を彼女の頬に移す。そして「大丈夫だよ」と安心させるように笑った。リリスはそれに渋々頷くと「何もなかったら、私も触る」と言った。ヘンリーは「分かったよ」と了承した。
話がまとまると、二人は横に並び燃えさかる炎と向き合った。そしてヘンリーが前へ出て、ゆっくりと手を伸ばす。その様子を真剣な眼差しで見守るリリス。
(いよいよね。結界の類なら弾かれるかな。幻なら何もなく、木に触れるよね)
彼の手は炎に触れるか触れないかの距離で一旦止まる。そして一旦拳を握りしめると、それをすぐに開き炎に触れた。炎に触れた手はそのまま中へと入っていき、手のひらが幹に届くのがはっきり見えた。
「何もない」
そう呟いたヘンリーが幹を擦るように手を動かす。それを心配そうに見つめながら、リリスは聞いた。
「本当に大丈夫なの?熱くない?痛くない?」
「全然平気。熱くもないし、痛くもない。何も感じないし、普通に木に触ってる感触だけだよ」
「そっか。それなら私も触ってみる」
リリスの言葉にヘンリーは炎に突っ込んでいた手を引き抜き、彼女を振り返った。リリスはヘンリーと目を合わせると、前へ出て炎へと手を伸ばす。ゆっくりと炎の中へと彼女の手が吸い込まれていく。そして手のひらが木に触れた。
「本当だ。何ともない。やっぱりこの木変よ。普通じゃない炎で燃えて・・んん?そもそも燃えてるって言える?だって炎に見えるだけで、これ炎じゃないし」
「あはは。リリィ、今そこ気にする?まー、とにかく何もなくて良かったよ。リリィも満足だろう。そろそろ戻ろうか」
ヘンリーの言葉にリリスが空を見上げると日がだいぶ傾いていた。
「そうね」
そう言ってリリスが触れた木から手を離そうとすると、少し手のひらが僅かに熱くなったような気がした。
(ん??・・・・何か熱く・・)
リリスは確認しようと離そうとした手を動かし、幹を触る。
(・・・・んー、熱くないか)
「どうしたの?リリィ?」
一向に手を離さずにペタペタと触るリリスの様子を横で不思議そうに見つめるヘンリー。一通り幹を触ったリリスは「気のせいか」と言うと手を離した。ヘンリーの心配そうな眼差しにリリスはニッコリ笑顔を返すと言った。
「一瞬熱くなったような気がしたんだけど、気の所為だったみたい」
心配そうな表情のヘンリーはリリスの言葉に「そっか」と言うと、ホッとした笑顔をする。
こうしてリリスたちは帰ることにした。そして今度もメイルは帰ろうとしなかった。
リリスたちを見送るメイルに「また来るね」と一言残し、ネージュと共に森の出口へと歩くその後ろで、炎が僅かに勢いを増したことにこの時、誰も気付かなかった。
ヘンリーとの話がつくと、リリスは改めてメイルに話しかけた。しかしメイルはネージュを見つめるだけで、当然返事は返ってこない。リリスは「まっ、そうよね」と肩をすくめた。そして立ち上がると、ヘンリーに言った。
「ねっ、メイルいたでしょう?」
「そうだね。ここから動かないってことは、やっぱりこの木が理由かな」
そう言って燃える木を下から見上げたヘンリーはほんの僅かに目を閉じる。そして頭の中を整理したのかぱっと目を開けると、リリスに向かって微笑み言った。
「触ってみようか」
「えっ?」
まさか彼からそんな提案がされるなんて思ってもみなかったリリスの瞳は驚きの色を滲ませ、ヘンリーを見る。
「だからこの木に触ってみようか。メイルがこんなに気にしてるってことは、危険なものではないかもしれない。でも危険がないとも言えないから、僕がやる。
それに好奇心旺盛な君が触ってみることを考えなかったとは思えないなぁ」
「うっ・・なんで分かったの。それは私も考えたよ。でももし貴方に何かあったら、どうするの?もし・・・もしもディファナが絡んでたら・・」
リリスはそう言いながら、彼の袖をギュッ掴んだ。ヘンリーは彼女のその手に自分の手を優しく重ね、言った。
「やっぱり。リリィならそうしそうだなって、思っちゃったんだよね」
そう言って微笑み、リリスの手に触れていた自身の手を彼女の頬に移す。そして「大丈夫だよ」と安心させるように笑った。リリスはそれに渋々頷くと「何もなかったら、私も触る」と言った。ヘンリーは「分かったよ」と了承した。
話がまとまると、二人は横に並び燃えさかる炎と向き合った。そしてヘンリーが前へ出て、ゆっくりと手を伸ばす。その様子を真剣な眼差しで見守るリリス。
(いよいよね。結界の類なら弾かれるかな。幻なら何もなく、木に触れるよね)
彼の手は炎に触れるか触れないかの距離で一旦止まる。そして一旦拳を握りしめると、それをすぐに開き炎に触れた。炎に触れた手はそのまま中へと入っていき、手のひらが幹に届くのがはっきり見えた。
「何もない」
そう呟いたヘンリーが幹を擦るように手を動かす。それを心配そうに見つめながら、リリスは聞いた。
「本当に大丈夫なの?熱くない?痛くない?」
「全然平気。熱くもないし、痛くもない。何も感じないし、普通に木に触ってる感触だけだよ」
「そっか。それなら私も触ってみる」
リリスの言葉にヘンリーは炎に突っ込んでいた手を引き抜き、彼女を振り返った。リリスはヘンリーと目を合わせると、前へ出て炎へと手を伸ばす。ゆっくりと炎の中へと彼女の手が吸い込まれていく。そして手のひらが木に触れた。
「本当だ。何ともない。やっぱりこの木変よ。普通じゃない炎で燃えて・・んん?そもそも燃えてるって言える?だって炎に見えるだけで、これ炎じゃないし」
「あはは。リリィ、今そこ気にする?まー、とにかく何もなくて良かったよ。リリィも満足だろう。そろそろ戻ろうか」
ヘンリーの言葉にリリスが空を見上げると日がだいぶ傾いていた。
「そうね」
そう言ってリリスが触れた木から手を離そうとすると、少し手のひらが僅かに熱くなったような気がした。
(ん??・・・・何か熱く・・)
リリスは確認しようと離そうとした手を動かし、幹を触る。
(・・・・んー、熱くないか)
「どうしたの?リリィ?」
一向に手を離さずにペタペタと触るリリスの様子を横で不思議そうに見つめるヘンリー。一通り幹を触ったリリスは「気のせいか」と言うと手を離した。ヘンリーの心配そうな眼差しにリリスはニッコリ笑顔を返すと言った。
「一瞬熱くなったような気がしたんだけど、気の所為だったみたい」
心配そうな表情のヘンリーはリリスの言葉に「そっか」と言うと、ホッとした笑顔をする。
こうしてリリスたちは帰ることにした。そして今度もメイルは帰ろうとしなかった。
リリスたちを見送るメイルに「また来るね」と一言残し、ネージュと共に森の出口へと歩くその後ろで、炎が僅かに勢いを増したことにこの時、誰も気付かなかった。
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