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第3章
第154話 リリス14歳 追跡1
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その日の放課後、街のカフェにリリスやアリーナたちいつものメンバーの姿があった。様子のおかしいリリスを心配してアリーナたちが誘ってくれたのだ。
アリーナ曰く「美味しいものを食べて楽しい時間を過ごせば、すべて上手くいく」だそうだ。リリスは昨夜の夢のこともあり気分が沈んでいたが、彼女の明るさに今日こそ救われたことはなかった。
「ヘンリー様には申し訳ないけど、今日はリリスを私たちが癒やすからね」
これは出かける直前のアリーナのセリフだ。ヘンリーは用があるため、今日は不参加だった。いつもなら彼も当然参加するところだったが「早急にリリスには癒やしが必要なんです」とアリーナに言われてしまっては"明日一緒に"というヘンリーの願いはいとも簡単に却下された。リリスには、彼が名残惜しそうに一人馬車に乗り込む後ろ姿に犬のように垂れた耳と尻尾が見えた。その時、リリスの心はギュッと締め付けられたが、今は美味しいケーキを目の前にそんなことも忘れ去っていた。
「んんー、美味しいぃ。はぁぁぁ、幸せぇ」
口の中の美味しい甘さに顔がほころぶリリスを皆微笑ましく見ている。そしてアシュリーが口を開いた。
「みんながこうして揃って出かけるのも久しぶりだよね」
「そうだな。リリス嬢の顔色も随分良くなったみたいだし安心したよ」
スタイラスがホッとした表情で笑みを浮かべた。
「本当よ。朝見たときは驚いたのよ。いつものリリス様と全然お顔の色が違うんだもの」
エリーゼの言葉にリリスは「あはははっ」と乾いた笑いを浮かべる。
「化粧じゃ誤魔化せなかったわね。本当に心配かけてごめんなさい。この埋め合わせは必ずするからね」
「そんな水臭いなぁ。あっ、でもどうしてもと言うなら、夏休みにはまたアルバート領に行きたいわ」
アリーナのお願いに皆も顔を輝かせる。リリスは「任せて!大歓迎しちゃからね」と言い、微笑んだ。それからエリーゼに向くと「エリーゼ」と呼んだ。いつもと違う呼び方に一瞬戸惑ったエリーゼはすぐに微笑みを浮かべ「はい、リリス様?」と言う。それにリリスは人差し指を振り言った。
「ずーっとこうしたかったんだけど、これから貴女のことエリーゼって呼ぶことにしたわ。だから貴女もリリスと呼んで。"様"なんて水臭いわよ・・・あっ、家格がとか言わないでよ」
黙って聞いていたエリーゼの笑みは次第に満面のそれへと変わり「はい!リリス」と嬉しそうに言った。その言葉にリリスも嬉しそうな笑顔を返すと「今更だけど、何だか照れくさいわね」と頬を染めた。そしてどちらともなく「フフッ」と声を漏らし、笑いあった。
その後、ケーキを堪能したリリスたちは店を出ると、アルミーダの店へ行くことにした。ディファナの手紙で呼び出された時は裏の住居だったので、キャンディー屋へこうして皆で揃って行くのは久しぶりだった。
彼女の作るキャンディーは相変わらず人気だった。今では商品に魔力が込められてることは周知の事実となり、食べると幸せになれるとか好きな人と両思いになれるとか色々いわれている。アルミーダはその事実に「ふんっ」と鼻を鳴らし「まったく忙しいったら、ありゃあしない」と文句を言ったが、その顔には嬉しそうな色が滲んでいたことを皆知っていた。
「今日はアルさんいるかな」
アシュリーの言葉に皆口々に「どうだろうね」と言った。"アルさん"というのはアルミーダのことだ。街など人目のある場所では彼女の名を出さぬようそう呼ぶことにしたのだ。
「新商品とかあるかしら」
「どうだろうね。アルさん、積極的に新商品とか作らなそうだけど」
「えー、でもなんだかんだ口では言ってても、褒められるといつも嬉しそうじゃない?」
「「あー」」
皆はアルミーダの天邪鬼な表情を思い浮かべ、声を揃えて言った。
「あっ」
その時スタイラスが足を止め、声を上げた。
アリーナ曰く「美味しいものを食べて楽しい時間を過ごせば、すべて上手くいく」だそうだ。リリスは昨夜の夢のこともあり気分が沈んでいたが、彼女の明るさに今日こそ救われたことはなかった。
「ヘンリー様には申し訳ないけど、今日はリリスを私たちが癒やすからね」
これは出かける直前のアリーナのセリフだ。ヘンリーは用があるため、今日は不参加だった。いつもなら彼も当然参加するところだったが「早急にリリスには癒やしが必要なんです」とアリーナに言われてしまっては"明日一緒に"というヘンリーの願いはいとも簡単に却下された。リリスには、彼が名残惜しそうに一人馬車に乗り込む後ろ姿に犬のように垂れた耳と尻尾が見えた。その時、リリスの心はギュッと締め付けられたが、今は美味しいケーキを目の前にそんなことも忘れ去っていた。
「んんー、美味しいぃ。はぁぁぁ、幸せぇ」
口の中の美味しい甘さに顔がほころぶリリスを皆微笑ましく見ている。そしてアシュリーが口を開いた。
「みんながこうして揃って出かけるのも久しぶりだよね」
「そうだな。リリス嬢の顔色も随分良くなったみたいだし安心したよ」
スタイラスがホッとした表情で笑みを浮かべた。
「本当よ。朝見たときは驚いたのよ。いつものリリス様と全然お顔の色が違うんだもの」
エリーゼの言葉にリリスは「あはははっ」と乾いた笑いを浮かべる。
「化粧じゃ誤魔化せなかったわね。本当に心配かけてごめんなさい。この埋め合わせは必ずするからね」
「そんな水臭いなぁ。あっ、でもどうしてもと言うなら、夏休みにはまたアルバート領に行きたいわ」
アリーナのお願いに皆も顔を輝かせる。リリスは「任せて!大歓迎しちゃからね」と言い、微笑んだ。それからエリーゼに向くと「エリーゼ」と呼んだ。いつもと違う呼び方に一瞬戸惑ったエリーゼはすぐに微笑みを浮かべ「はい、リリス様?」と言う。それにリリスは人差し指を振り言った。
「ずーっとこうしたかったんだけど、これから貴女のことエリーゼって呼ぶことにしたわ。だから貴女もリリスと呼んで。"様"なんて水臭いわよ・・・あっ、家格がとか言わないでよ」
黙って聞いていたエリーゼの笑みは次第に満面のそれへと変わり「はい!リリス」と嬉しそうに言った。その言葉にリリスも嬉しそうな笑顔を返すと「今更だけど、何だか照れくさいわね」と頬を染めた。そしてどちらともなく「フフッ」と声を漏らし、笑いあった。
その後、ケーキを堪能したリリスたちは店を出ると、アルミーダの店へ行くことにした。ディファナの手紙で呼び出された時は裏の住居だったので、キャンディー屋へこうして皆で揃って行くのは久しぶりだった。
彼女の作るキャンディーは相変わらず人気だった。今では商品に魔力が込められてることは周知の事実となり、食べると幸せになれるとか好きな人と両思いになれるとか色々いわれている。アルミーダはその事実に「ふんっ」と鼻を鳴らし「まったく忙しいったら、ありゃあしない」と文句を言ったが、その顔には嬉しそうな色が滲んでいたことを皆知っていた。
「今日はアルさんいるかな」
アシュリーの言葉に皆口々に「どうだろうね」と言った。"アルさん"というのはアルミーダのことだ。街など人目のある場所では彼女の名を出さぬようそう呼ぶことにしたのだ。
「新商品とかあるかしら」
「どうだろうね。アルさん、積極的に新商品とか作らなそうだけど」
「えー、でもなんだかんだ口では言ってても、褒められるといつも嬉しそうじゃない?」
「「あー」」
皆はアルミーダの天邪鬼な表情を思い浮かべ、声を揃えて言った。
「あっ」
その時スタイラスが足を止め、声を上げた。
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