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第3章
第153話 リリス14歳 ナイトメア2
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「リリィ、大丈夫?」
翌日、迎えに来たヘンリーが朝の挨拶よりも先にリリスにかけた言葉だった。彼にそうさせるほどリリスの顔色は酷いものだった。朝の身支度の時も心配するマリーに散々"今日は学園を休んで"と言われたのだ。頑なに"大丈夫"と言うリリスに折れたマリーは、少しでも血色良く見えるよういつもより化粧に時間をかけてくれた。しかしリリスの少しの変化も見逃さないヘンリーには通用しなかった。
「おはよう、ヘンリー。見た目は酷いけど、本当に大丈夫なのよ。それより話があるの」
そう言ったリリスは、ヘンリーに馬車へ乗るよう促した。その言葉に心配な表情まま彼はリリスを馬車へ乗せると、自身も乗り込んだ。直ぐに扉が閉められ、馬車が動き出す。するとリリスはさっそく話を始めた。
「今日、ひどい顔でしょう。これでもマリーが化粧を頑張ってくれたのよ」
そう言ったリリスは苦笑する。ヘンリーは顔を横に振り、何も言わずにリリスの手を取った。そのチョコレートブラウンの瞳は真っ直ぐにリリスに向けられている。リリスは努めて明るく話を続けた。
「実は昨日、また夢を見たの。それがひどい夢でたぶん相当魘されていたと思う」
「魘される程の夢って、どんな夢?」
リリスの手に添えられた彼の指に力が入り、見つめる瞳は動揺が色が濃くなる。
「えっと・・始めはあの金色の獣と森で出会うの。貴方はいなくて、代わりにアリーナとエリーゼがいるわ。それから・・・」
リリスは言葉を止め小さく息を吐くと、ゆっくりと続けた。
「アリーナとエリーゼに魔法で襲いかかるの」
「獣が?」
「ううん、私が」
「えっ!リリィが?!」
思いがけない夢の内容にヘンリーは驚きの声をあげた。苦笑したリリスは「そうだよね。そうなるよね」と言った。続きが気になるヘンリーが先を話すよう促した。それに応えリリスが再び口を開く。
「とにかく私が魔法をアリーナとエリーゼに放つのよ。それで・・二人は倒れてしまうと・・・ここで目が覚めたから、これで話は終わりなの」
「思ったよりハードな夢だったな」
「そうでしょ?自分でも何でこんな夢を見たのか今でも信じられないもん」
「でもリリィ。夢だと言って侮れないよ。だって・・」
言いよどむヘンリーに代わりリリスが言った。
「そうだよね。最近、私変な時あるもんね。もしかしたら、無意識にやってしまうかもしれないよね」
肩をすくめたリリスは笑った。その自虐的な笑みに真剣な表情のヘンリーは「リリィ、笑い事じゃないでしょ」と言うと、唇を噛みしめた。そんな彼の様子に「ごめんなさい」と一言口にした。
少しの時間、二人の間に沈黙が流れる。そしてその沈黙を破ったのはヘンリーだった。
「リリィ・・いいかい。アルミーダさんの準備ができるまで、森へ行くのは禁止だよ」
「準備って、サラマンデルを開放するって話の?」
「そう。もし夢のとおりになったら、困るでしょ?メイルのことも気になるだろうけど、我慢して」
彼の提案にリリスは一瞬迷いがあったが、彼の言うとおりなので小さく頷いた。
「・・・うん・・分かった」
ここで学園へ到着した馬車がゆっくりと停車した。最後にヘンリーは念押しした。
「約束だ。絶対に森へ行ってはダメだよ」
そうして開かれた扉からふたりは外へ出ると、揃って校舎へと歩みを進めた。
翌日、迎えに来たヘンリーが朝の挨拶よりも先にリリスにかけた言葉だった。彼にそうさせるほどリリスの顔色は酷いものだった。朝の身支度の時も心配するマリーに散々"今日は学園を休んで"と言われたのだ。頑なに"大丈夫"と言うリリスに折れたマリーは、少しでも血色良く見えるよういつもより化粧に時間をかけてくれた。しかしリリスの少しの変化も見逃さないヘンリーには通用しなかった。
「おはよう、ヘンリー。見た目は酷いけど、本当に大丈夫なのよ。それより話があるの」
そう言ったリリスは、ヘンリーに馬車へ乗るよう促した。その言葉に心配な表情まま彼はリリスを馬車へ乗せると、自身も乗り込んだ。直ぐに扉が閉められ、馬車が動き出す。するとリリスはさっそく話を始めた。
「今日、ひどい顔でしょう。これでもマリーが化粧を頑張ってくれたのよ」
そう言ったリリスは苦笑する。ヘンリーは顔を横に振り、何も言わずにリリスの手を取った。そのチョコレートブラウンの瞳は真っ直ぐにリリスに向けられている。リリスは努めて明るく話を続けた。
「実は昨日、また夢を見たの。それがひどい夢でたぶん相当魘されていたと思う」
「魘される程の夢って、どんな夢?」
リリスの手に添えられた彼の指に力が入り、見つめる瞳は動揺が色が濃くなる。
「えっと・・始めはあの金色の獣と森で出会うの。貴方はいなくて、代わりにアリーナとエリーゼがいるわ。それから・・・」
リリスは言葉を止め小さく息を吐くと、ゆっくりと続けた。
「アリーナとエリーゼに魔法で襲いかかるの」
「獣が?」
「ううん、私が」
「えっ!リリィが?!」
思いがけない夢の内容にヘンリーは驚きの声をあげた。苦笑したリリスは「そうだよね。そうなるよね」と言った。続きが気になるヘンリーが先を話すよう促した。それに応えリリスが再び口を開く。
「とにかく私が魔法をアリーナとエリーゼに放つのよ。それで・・二人は倒れてしまうと・・・ここで目が覚めたから、これで話は終わりなの」
「思ったよりハードな夢だったな」
「そうでしょ?自分でも何でこんな夢を見たのか今でも信じられないもん」
「でもリリィ。夢だと言って侮れないよ。だって・・」
言いよどむヘンリーに代わりリリスが言った。
「そうだよね。最近、私変な時あるもんね。もしかしたら、無意識にやってしまうかもしれないよね」
肩をすくめたリリスは笑った。その自虐的な笑みに真剣な表情のヘンリーは「リリィ、笑い事じゃないでしょ」と言うと、唇を噛みしめた。そんな彼の様子に「ごめんなさい」と一言口にした。
少しの時間、二人の間に沈黙が流れる。そしてその沈黙を破ったのはヘンリーだった。
「リリィ・・いいかい。アルミーダさんの準備ができるまで、森へ行くのは禁止だよ」
「準備って、サラマンデルを開放するって話の?」
「そう。もし夢のとおりになったら、困るでしょ?メイルのことも気になるだろうけど、我慢して」
彼の提案にリリスは一瞬迷いがあったが、彼の言うとおりなので小さく頷いた。
「・・・うん・・分かった」
ここで学園へ到着した馬車がゆっくりと停車した。最後にヘンリーは念押しした。
「約束だ。絶対に森へ行ってはダメだよ」
そうして開かれた扉からふたりは外へ出ると、揃って校舎へと歩みを進めた。
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