あの時の歌が聞こえる

関枚

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考え方

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ガタタン…ガタタン……ブロロロロロ…
バスの揺れはなんとも言えない安心感を与えてくれる。
ゆりかごにいれたれているような、それは言い過ぎか。
「どこにいくの?ヒカル君」
「麓の村だよ、知り合いがいるんだ」
  ホノカとは後ろの2人席で隣り合っていてこれからどこにいくのかが楽しみなのかたくさん話しかけてくる。
「知り合いってなにをしているんだ?」
「神主だよ」
それを言うとみんなビクっと体を震わせた。
神主なんてあまり馴染みのない職業だからなぁ。無理もない。
「次は~四獣峰~四獣峰です」
バスの機械音が僕たちが降りる駅を言う。
「し、四獣峰?厨二病チックな地名だな」
「神社についたらわかるよ」
その駅で僕らは降りて少し歩くと鳥居が見えてきた。
「ここか?」
「そう、入るよ」
僕は鳥居をくぐる。みんな全員くぐったのをみて僕は長い階段を登った。長い、本当に長い。
終わりがくるのか?というほど長い。ゆういつの救いは木が日光を遮ってくれているところだろう。
僕らは階段をなんとか登りきった。
「はぁー長い階段だぜ」
「みんな手を清めよう」
僕が慣れた柄杓を手に持ち手を清めているがみんな清めようとしない。
「あれ?清めないの?」
「あ、やり方よくわかんないからさ」
なるほど、たしかに神社なんてそういくもんじゃない。
「教えてあげるよ。まずこの柄杓を…」
一通り教え終わりみんな順に清めていった。その時だった。
「誰かと思えばヒカルじゃないか!」
こちらに歩み寄ってくる神服姿の青年。
「あ、修也さん、久しぶりです」
「本当に久しぶりだね。ざっと三年ぶりか?大きくなったもんだ」
ポスンと手を置かれて撫でられた。
「あ、みんな紹介するよ。日村修也さん。ここの神主だよ」
「なんか照れるってまだ神学校卒業したばかりなのに」
「あ、どうも春日野圭です」
「副島舞です」
「北沢ホノカです」
「みんないい名前だね」
「なあヒカル。日村さんとはどう言う関係だ?」
「あ、えっと」
「元カノの友達の息子さ、元カノと友達とは高校が一緒だったんだ」
「え?別れたんですか?」
「病気で高校1年の頃なくなってしまってね」
修也さんは笑顔を作っているがあんまり思い出したくなかったんだろう。
「みんな気にしなくてもいいよ、しっかりとお別れした後だから。後俺のことは修也でいいよ」
これが修也さんの人間力だろう。
「あ、ありがとうございます」
修也さんは背が高く今はたしか26歳だった気がするが184センチもある。
「君達、本堂は見たくないか?」
「本堂?」
「うん、今日は特別に中まで見せてあげるよ。神様も喜ぶさ」
修也さんは本堂の鍵をがチャリと開けた。
そして中のものを見て圧巻する。
木像だ。四体の木像があった。
「これは?」
「これは四獣の木像さ」
「し、四獣?」
「うん、聞いたこともあるんじゃないかな?北の方位から時計回りに玄武、青龍、朱雀、白虎ってね」
何か遠くのものを見つめるように佇みゴツゴツした甲羅を持つ玄武。
勢いよく上がる水柱にとぐろを巻く青龍。
飛び上がろうとしているのか飾りのような羽を広げる朱雀。
獲物を見つけたかのように姿勢を低くして構える白虎。
「この生き物がこの神社の神様さ」
「どうしてこの獣が神様なんですか?」
「いい質問だねマイちゃん。さっきも言ったけどはそれぞれの方位を司ってるんだ。だからこの地域も四つの方位からお護りくださいいって言う意味だな」
こいつら?神主にしては呼び方が適当なんじゃないか?
そんな意味を持った視線で返事をすると
『やらかした!バレたらまずい』
なにをやらかしたんだ?
「こいつらって呼び方バチは当たらないの?」
「あ、いやべつに」
なんか隠してるな
「修也さん、なんか隠してない?」
「え?そんなことないだろ?」
「嘘ね」
さすが嘘発見器。
「はぁー、流石だね。それは能力かい?」
「そうですよってえ?」
『この人嘘ついてない。まさか能力者!?』
まさかのまさかだった。修也さんは
「君たちなら信じてもらえそうだな。ここじゃなんだし俺の家に案内するよ」
僕らは一旦神社から出て彼の家へと案内される。久しぶりに見る形の一軒家だった。
「さ、入って入って」
僕らは少し警戒しながら家の中に入る。中はおしゃれよりも機能性を重視した家具が置いてあるシラフな部屋だった。
「君たちはそれぞれ能力を持ってるんだろう?」
「あ、私以外です」
ホノカがそっと手をあげる。
「いや、君能力あるよ」
「へ?」
「僕には見えるんだ。君たちの力がね」
「修也さん、わけがわかりません」
「僕の能力は能力を見ることさ。誰がなんの能力を持ってるのかが文字として見える。ヒカルの能力は心で思ったことが声として聞こえる力。圭君の能力は動物と意思疎通をとる力。マイちゃんの能力は人が口に出したものを嘘か本当か知る力。そしてホノカちゃん、君はね」
怖いぐらいにあっていた。マイも本当のことだと悟る。ホノカは未だに信じることができていないと思うけど。
「ホノカちゃん、君は周りから勘が鋭いってよく言われないか?」
「え?まぁ、よく」
「それが君の力だ」
修也さんはホノカを指差していった。
「君は対象となる人を見るとその人の末路を知ることができる。それが君の力だ」
なんだそのあまり嬉しくない能力。
マイを見ると小声で「本当よ」と呟いた。
「だからあの時ヒカルに警告したのか」
なるほど、ピンと来た。ホノカは僕を見て放課後に山内からボコられるということを知ったんだ。
「そ、それが力だったんですね。なんか、ぼんやりと浮かんでくるんですよ、人を見たら。こうなるんだろうなって勝ってに想像しちゃうっていうか」
「修也さん、能力にきずいたきっかけは?」
「あの木像を覚えているかい?」
「はい」
「あの神様がくれたんだ」
「はい!?」
「僕が君たちぐらいの頃、僕はあの神様に出会った。そしていろんなことを教えてもらった。自分に自信がなくてぼんやりしていたのが俺だったのだがそれを救ってくれたり、人間関係で悩んでたら優しく慰めてくれたり」
修也さんは思い出話に浸りきった。
僕らはその話を聞いていた。他じゃ聞けない貴重な話だ。
「俺が一番印象に残った話は羽虫の話だったな」
「羽虫?」
「そう、街灯とかに群れている虫のこと。彼らは街灯を太陽の光と勘違いしてそれに向かって必死に群れているんだ。」
「へぇ」
「人間も同じだって、人間もなにかをするとき意味を持っておこなうだろって。その意味を追い求めながら現在を俺たちは歩いてるんだって言ってくれたんだ」
意味がある、か。
「だから君たち、正直いって能力を手にして嫌なことだって感じた日もあるかもしれない。能力を呪って眠りについた日もあるかもしれない。けどね、これは君たちにしか学べないことなんだ。それを神様は学ばせてくれている。そう考えて見たらどうかな?」
僕は心の声を聞くことができる。これは僕にしかできない。そうだ僕にしか聞こえないんだ。必死に隠しながら生きている人の叫びを聞くことができるのは僕だけなんだ。圭もそうだ。彼は人以外の存在の痛みを知ることができる。その分周りに優しくできる。マイだってどれが嘘でどれが本当かを知り、自分にとっていいことだけを信じることができる。ホノカはこれからなにが起こるのかを把握してその人を傷つけないようにすることができる。
「この世界に無意味なんてない。意味があるから君たちはこの世界に生まれてきたんだ」
修也さんは少し涙を浮かべながら僕たちに語りかけた。
「この力も神様がくれた。もしもこの先痛みを持って生まれた人がいたらその人の痛みを無くしてあげるようにって。私たちの代わりにお前が人を導いて上げろって神様に託されたんだ」
「だから神主を?」
「そう、全てに感謝して生きていきたいからね」
修也さん、泣いていた。きっとその神様にも同じことを言われたんだろう。同じように導かれたんだろう。
「修也さん、ありがと。もう僕たち大丈夫だよ」
「そうだぜ!ほら仕事もどんねぇとクビになるぞ!」
「べつにクビにはならんでしょ」
「修也さん、綺麗な心を持ってるんですね」
修也さんはただ一言「ありがとう」
嬉しかった。初めて能力をいい方向に使える自信を持てた。
修也さんは仕事に戻り、僕らは修也さんと別れた。
「いやぁ涙もろい人だったな」
「けど最後は笑ってたね」
「神様ってどんなんだろうね」
僕らは笑い合いながら神社の横を通り過ぎるその時鳥居の影にとても紅くて綺麗な鳥がこちらを微笑むように見ていたのを発見した。僕は目をこすりもう一度見るがそこにはなにもいなかった。
「?どうした」
「あ、なんでもないよ。ほらもう昼だ。どっかで飯食おうぜ!ばあちゃんには連絡しておくからさ」
「いいねぇ!」
あの鳥はなんだったんだろう?もしかしてあれが神様か!?
けどそんなことどうでもよかった。なんだか僕らを見守っていたような気がしてあの鳥のためにも頑張ろうと僕は
思った。
考え方を変えるだけでいつでも翔けるんだ。
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