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第29話
しおりを挟む「「「「――あっ……!」」」」
それまで虚ろだったバルドたちの表情が、パッと明るくなる。『神々の申し子』パーティーが目指していた山奥の村が遂に見えてきたからだ。
彼らが無我夢中の様子で走り村の入り口へと到着する頃には、治癒使いのウッド以外、疲労困憊になって地面にへたり込んでいるという有様だった。
「……ぜ、ぜぇ、ぜぇ……。や、やったぞ……。僕たちは、ラウル並みの無能に足を引っ張られても、ここまで辿り着くことができたのだ……」
「……ほ、本当に感慨深い、ですね……。ラウルといいウッドといい、私たちはサポート役に恵まれませんけれど、それだけ地力はあるということでしょう……ふぅ、ふぅ……」
「……はぁ、はぁ……うん、そうだね……。ばっちいラウル二世がいたけど……それでも、こうして着いた……」
「あのー、さっきからおいらに対して文句並べてるの、普通に聞こえてるんだけども……?」
最早隠す気力もないバルドたちの悪態に対し、心底呆れた表情のウッド。
「ウッド……。よく聞くがいい。クエスト攻略まで堪えようかと思ったが、もう我慢の限界だ。貴様をパーティーから追放する!」
「へっ……?」
「フンッ。ショックだろうが、自業自得だと思え。こうして貴様を追い出すのは、ラウルよりも無能だと判明したからだ。僕たちがこれほど疲れることなんて今までなかったのに、歩くだけでこれだからな……」
「そうですよ。むしろ、私たちの足を引っ張っていたとしか思えませんね。ウッド、あなたはもう用済みですし、その辺の石ころにすぎません。いきなり踏みつけられて悔しいですか?」
「……わかったなら、さっさと消えて、ウッド。邪魔……」
「ん-。別にそれでもいいけど、せめて変異種に勝ってからイキったほうがいいんじゃ? ま、おいらがいたところであんたらじゃ脆弱すぎるし、全力でサポートしても勝てるとは到底思えないけどね~」
「おい、なんだと、おいウッド、もう一度言ってみろ――イダダッ……!?」
ウッドの胸ぐらを掴もうとして、逆に腕を捻られる格好になるバルド。
「「バルド……!?」」
「イデデッ! こ、こいつ、すげー怪力だ……!」
「はぁ。怪力って……。ちょっと技術があればこれくらいできるって。あんた、パワーばっかりで技術はまったくないのか? こんなやつがS級パーティーのリーダーをやってるなんて、おいらには何かの間違いとしか思えないね。それじゃ、お疲れさん。バイバイッ」
「……チッ! い、今のは不意を突かれただけだ! ウッドのやつめ、無能だから僕たちに捨てられただけなのに、勘違いしすぎというものだろう!」
「「……」」
「お、おい、シェリー、エミル、その疑いの眼差しはなんだ!? さっきのはただのまぐれだろうが!」
「い、いえ、別に。まぐれ、ですよね……」
「……う、うん。まぐれ、だよね……」
「とにかく、僕たちは目的地の村へ着いたのだ、早速ジャイアントレイブンの変異種を探すぞ!」
「「……」」
「おい、シェリー、エミル、どうした!?」
中々ついてこない二人に対し、業を煮やしたのか怒鳴り声を上げるバルド。
「バルド、そんなことより、何か様子がおかしくないですか?」
「は? 様子だと?」
「周りを見てくださいな」
「…………」
バルドはいかにも怪訝そうな表情をしつつも、シェリーに言われた通り周囲の様子を窺う。
すると、変異種が出現したという村であるにもかかわらず、その辺で遊んでいる小さな子供たちの歓声が響き渡り、活気に満ち溢れていた。
「……な、なんだこれは? おいお前ら! 変異種のモンスターがいるのに、外を出歩くな! いくらなんでも危険すぎるだろうが――!」
「――あ、それならもう大丈夫ですよ、冒険者様」
「「「え……?」」」
近付いてきた一人の女性に声をかけられ、きょとんとした顔になるバルドたち。
「結構前の出来事ですが、『聖域の守護者』というパーティーが来て、ジャイアントレイブンの変異種を倒してくださいましたから!」
「「「……」」」
「あ、あれ? どうかされましたか……?」
村人の呼びかけに対し、『神々の申し子』パーティーは呆然自失とした様子で、一切の返事をすることはなかった。
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