美食倶楽部クーラウ ~秘密は甘い罠~

米原湖子

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第1章 発端

08

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そして、彼は「ほら、これを見ろ!」と言って胸の内ポケットから二つ折りの財布を取り出し、それを開くと札束を見せた。

案の定だ。おそらく二十万円ぐらいはあるだろう。

「まぁ!」とマネージャーさんが声を上げる。すっかり騙されている様子だ。でも……カードを入れるスペースには何も入っていない。

現金主義の人は多いが、お金持ちそうにみえるのに一枚もないなんて……変だと思わないのだろうか? 私なら思うが……。

「これでも私が無銭飲食をするとでも?」
「とんでもない! 申し訳ございませんでした」

だが、私の思いとは裏腹に、マネージャーさんは深々と頭を下げた。
詐欺師は鬼の首を取ったとでもいうような顔で私を見る。

「小娘こそ、この騒ぎに乗じて無銭飲食を働こうとでも思ったんじゃないのか?」

フンと鼻で笑い、すっくと立ち上がった。

「気分が悪い! 私はもう帰る。小娘の処分はお宅に任せた」

そう言うと、男性は西園寺オーナーが一言も話さないうちに部屋を出て行ってしまった。

「あっ、お待ち下さい!」

マネージャーさんが慌ててその後を追いかけていく。

あーあっ、逃げられてしまった。心の中で溜息を吐く。
でも、あれ以上のことは話せない。話しても信じてもらえないからだ。

「君は……三時半に面接をする予定だった聖天寧々さんだね」
「えっ?」

突然、西園寺オーナーが口を開いた。今の件ではなく面接の件でだ。
思わず彼を見つめてしまい――ネットの情報は正しかったと、この時初めて思った。

二十八歳にしては少し老け顔かもしれないが、物凄い美形。老け顔なのは整いすぎた大人顔だからだろう。
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