美食倶楽部クーラウ ～秘密は甘い罠～

第１章 発端

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〈では、次のニュースです。自称、会社役員の男が詐欺の容疑で逮捕されました〉

何気なくテレビの画面に目を向け、「あぁぁぁ！」と指を差して叫んでしまった。
アップで映し出されていたのは、あの詐欺師だったからだ。

〈……余罪があるとして、引き続き捜査が行われるもようです〉

捕まった……夢ではないかと頬を抓る。痛い……夢じゃない！
ということは……ムフフと口角が上がる。

この半月、私は朝な夕なにあの店に通った。いや、遠くから眺めていた。
もう十一月だ。この秋を半分棒に振ってしまったようなものだ。

あの店でもう一度美味なる秋を食べたい！　今度はフィニッシュであるデザートまで。そう思ってどれだけ恋い焦がれたことか。

約束は守ってもらわなければ！

意気揚々と家を出ようとしたとき、携帯の着信音が鳴った。ディスプレイ画面を見ると見知らぬ番号だった。

「誰？」

躊躇いながらも出ると、〈聖天寧々か？〉と電話の向こうから偉そうな声が私を呼び捨てた。

「どちら様ですか？」
〈もう忘れたのか？　案外馬鹿だな。履歴書の記載は詐称か？〉

「あぁぁぁ！」と電話口で叫びながら誰もいない空を指差す。

「西園寺綾時！」