美食倶楽部クーラウ ~秘密は甘い罠~

米原湖子

文字の大きさ
45 / 170
第2章 愉快な仲間たち

22

しおりを挟む
「何を言ってるの?」

マミさんがハテナ顔になる。

「だって、今『愛』を感じないって」
「言ったわよ。彼の料理はいつも見栄えばかりなの。確かに味もいいけどね」
「だったら問題ないのでは?」
「それがアリアリなの」

キョトンとする私に「貴女、それでも料理人?」とマミさんが溜息を吐いたので、「いえ、皿洗いです」と返事をすると、デコピンされた。

「痛いです。暴力反対!」
「寧々がふざけたことを言うからでしょう!」

「こらこら」と横から樫野チーフが止めに入る。

「で、続きは? 教えてあげて」
「本当、世話が焼けるんだから」

チーフに促されてマミさんは文句を言いつつも説明してくれた。

「愛とは食べる人に対する思いやりみたいなものなの。例えば、これって秋のお弁当を意識したと思う。でも、秋秋秋。飽き飽きするのよね」

ダジャレ?

「秋に失恋する人って多いって聞くでしょう? ひと夏のアバンチュール、その成れの果てらしいわ。で、お客様の中にはそういった人もいると思うの。そこに秋をバーンと出した料理が出てきたら……食欲もなくなるってこと」

樫野チーフがクスクス笑い出した。

「なるほど、マミさんはそんな風に愛を感じていたんだ。他には?」
「食べやすさかなぁ。お弁当だし、一口の大きさを考えるべきでは?」
「味付けが全体に濃いと思う。旬の食材を使っているんだし、それを生かすべき」

次々出てくる意見はマミさんのよりも至極まっとうで、全てお客様を思っての言葉だった。

確かにどれも“愛”だと思うが、私が感じる漠然とした“愛”ではなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

処理中です...