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第3章 事件、事件、事件
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「この記事のこと、寧々ちゃん、知ってた?」
苦虫を噛み潰したような西園寺オーナーの代わりに、神乃マネージャーがデスク上の一点を指差した。
「記事?」
何のことだろうと思いながら一歩前に出て身を乗り出した。神乃マネージャーの指先にあったのはコピー用紙だった。それを凝視して、「えぇぇぇ!」と思わず声を上げてしまった。
「その様子では知らなかったみたいね」
それはカラー印刷された写真付きの記事だった。
写っていたのは西園寺オーナーと私の姿だ。二人は仲睦ましそうに見つめ合っていた。おまけに見出しには『時の人、西園寺綾時 初ラブロマンス発覚! この美女は誰?』の文字がデカデカと踊っていた。
「誰が撮ったのかベストショットだよね。最高のできだと思わない?」
誰に向かっての質問かよく分からないが、樫野チーフはそう言うとクスクス笑い始めた。対面する西園寺オーナーの顔がどんどん渋面になっていく。相当怒っているようだ。
――これ……よく見るとロケーションに見覚えがあった。
確かあの時だ。クーラウに勤めだして三日後。その日は店の定休日で、私は前日から『スフレの美味しい店』と評判の“ハニー・ハニー”に行くことに決めていた。そこで――。
「バッタリ会った時の写真ですよね?」
「ああ」と物凄い不機嫌な声が答える。
あの時、西園寺オーナーは『視察に来た』と言っていた。彼の他にもそれらしき人たちが数人いたと記憶する。しかし……他の人は写っていない。
「誰がこんな……。美女? 大嘘もいいところです。こんなのが記事になったら『詐欺』だと購入者から訴えられますよ」
六つの目が呆れたように私を見る。
「気にするところはそこ? 流石と言おうか……」
フルフルと樫野チーフが頭を振る。
苦虫を噛み潰したような西園寺オーナーの代わりに、神乃マネージャーがデスク上の一点を指差した。
「記事?」
何のことだろうと思いながら一歩前に出て身を乗り出した。神乃マネージャーの指先にあったのはコピー用紙だった。それを凝視して、「えぇぇぇ!」と思わず声を上げてしまった。
「その様子では知らなかったみたいね」
それはカラー印刷された写真付きの記事だった。
写っていたのは西園寺オーナーと私の姿だ。二人は仲睦ましそうに見つめ合っていた。おまけに見出しには『時の人、西園寺綾時 初ラブロマンス発覚! この美女は誰?』の文字がデカデカと踊っていた。
「誰が撮ったのかベストショットだよね。最高のできだと思わない?」
誰に向かっての質問かよく分からないが、樫野チーフはそう言うとクスクス笑い始めた。対面する西園寺オーナーの顔がどんどん渋面になっていく。相当怒っているようだ。
――これ……よく見るとロケーションに見覚えがあった。
確かあの時だ。クーラウに勤めだして三日後。その日は店の定休日で、私は前日から『スフレの美味しい店』と評判の“ハニー・ハニー”に行くことに決めていた。そこで――。
「バッタリ会った時の写真ですよね?」
「ああ」と物凄い不機嫌な声が答える。
あの時、西園寺オーナーは『視察に来た』と言っていた。彼の他にもそれらしき人たちが数人いたと記憶する。しかし……他の人は写っていない。
「誰がこんな……。美女? 大嘘もいいところです。こんなのが記事になったら『詐欺』だと購入者から訴えられますよ」
六つの目が呆れたように私を見る。
「気にするところはそこ? 流石と言おうか……」
フルフルと樫野チーフが頭を振る。
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