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第3章 事件、事件、事件
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それは私と入れ違いに辞めた アルバイトの佐藤環君だった。
彼とは二日一緒に働いただけだが、様子が全然違った。
前に見た私服姿は全身スポーツブランドだった。その姿から快活な少年というイメージだったのだが、視線の先にいる彼は……高級ブランドのスーツに身を包んだ大人の男性だった。
――チタンフレームの眼鏡にオールバックの前髪って、まるで別人だ。でも……間違いなくあれは佐藤君だ。
***
(相変わらずこの店のは何でも旨いな)
佐藤君が口にしていたのは、“蒸しサーモンの香味油シャワー アスパラ添え”だった。軽く蒸したサーモンに、熱した香味油をたっぷりかけた逸品だ。
佐藤君の思い出の食べ物は、蒸したサーモンではなく香味油の方だ。
(でも……父さんの香味油には負けるな)
彼の実家は有名なラーメン屋さんだったようだ。だが、十数年前、とある記事のせいで潰れた。彼がゲテモノ好きになったのはそれからみたいだ。
(食うか食われるか! なら、食ってやる)
佐藤君が唇の端を不敵に上げた。
彼の言った『食ってやる』は文字通りではない。クーラウを他の店同様こけ下ろす気なのだ。
どうしてそんなことをと思っていると――カメラ? 驚いたことに、彼の掛けている眼鏡には隠しカメラが仕込んであった。
彼は店に入ってきたときから、眼鏡を直すフリをして何枚も写真を撮っていたのだ。
――スパイ映画みたい。我が目を疑ったが、吹き出しはそれが事実だと雄弁に物語る。
彼とは二日一緒に働いただけだが、様子が全然違った。
前に見た私服姿は全身スポーツブランドだった。その姿から快活な少年というイメージだったのだが、視線の先にいる彼は……高級ブランドのスーツに身を包んだ大人の男性だった。
――チタンフレームの眼鏡にオールバックの前髪って、まるで別人だ。でも……間違いなくあれは佐藤君だ。
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(相変わらずこの店のは何でも旨いな)
佐藤君が口にしていたのは、“蒸しサーモンの香味油シャワー アスパラ添え”だった。軽く蒸したサーモンに、熱した香味油をたっぷりかけた逸品だ。
佐藤君の思い出の食べ物は、蒸したサーモンではなく香味油の方だ。
(でも……父さんの香味油には負けるな)
彼の実家は有名なラーメン屋さんだったようだ。だが、十数年前、とある記事のせいで潰れた。彼がゲテモノ好きになったのはそれからみたいだ。
(食うか食われるか! なら、食ってやる)
佐藤君が唇の端を不敵に上げた。
彼の言った『食ってやる』は文字通りではない。クーラウを他の店同様こけ下ろす気なのだ。
どうしてそんなことをと思っていると――カメラ? 驚いたことに、彼の掛けている眼鏡には隠しカメラが仕込んであった。
彼は店に入ってきたときから、眼鏡を直すフリをして何枚も写真を撮っていたのだ。
――スパイ映画みたい。我が目を疑ったが、吹き出しはそれが事実だと雄弁に物語る。
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