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第3章 事件、事件、事件
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しかし……と考える。過去、樫野チーフのように半信半疑の人はいた。だが、赤の他人で佐藤君のように全面的に信じてくれたのは神田先生だけだった――ということは、西園寺オーナーの反応の方が明らかに自然だった。
「さぁ、先程も申したように、私にも分かりません」
だから素直に答えたのに――。
「それなのに他人に分かれというのはお門違いも甚だしいとは思わないか?」
「――別に分かって貰おうなんて思っていませんけど」
今までもそうだった。だから今更だ。
「だが、私は訳も分からない奴を雇っておくほど心が広くない」
アッと気付く。彼はこれを理由に私をクビにするつもりなのだ。やられた!
「しかし、いきなりクビにして非情な人間と思われるのも腹立たしい。だからお前にチャンスをやろう」
西園寺オーナーが薄く笑った。凄く悪い笑みだ。
「私の思い入れのある食べ物とやらが分かったら言ってくれ。期限は今年いっぱい。それが当たっていたら、お前をクーラウの一員として認めてやる」
今年いっぱいって、後一ヶ月ちょっと……。
「そんな無理です」
「いきなり弱音か? なら今すぐ……」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
その間、幾度彼の食事シーンが見られるだろう? それでなくても、ここのところ店にいないというのに……。
「えっと――後を付いて歩いてもいいでしょうか?」
「馬鹿か! 仕事をしないのなら即クビだ」
「そんなメチャクチャな」
「それが嫌なら、今すぐ自主退職しろ?」
腹立たしい! どう転んでもクビということではないか。
鬼の首でも取ったような満面の笑みの西園寺オーナーに怒りを覚えるが、「承知しました」と私は返事をしていた。勤め続けるには彼の要求を聞くしかないからだ。
「年末までに西園寺オーナーの思い入れのある食べ物をきっと見つけます」
「さぁ、先程も申したように、私にも分かりません」
だから素直に答えたのに――。
「それなのに他人に分かれというのはお門違いも甚だしいとは思わないか?」
「――別に分かって貰おうなんて思っていませんけど」
今までもそうだった。だから今更だ。
「だが、私は訳も分からない奴を雇っておくほど心が広くない」
アッと気付く。彼はこれを理由に私をクビにするつもりなのだ。やられた!
「しかし、いきなりクビにして非情な人間と思われるのも腹立たしい。だからお前にチャンスをやろう」
西園寺オーナーが薄く笑った。凄く悪い笑みだ。
「私の思い入れのある食べ物とやらが分かったら言ってくれ。期限は今年いっぱい。それが当たっていたら、お前をクーラウの一員として認めてやる」
今年いっぱいって、後一ヶ月ちょっと……。
「そんな無理です」
「いきなり弱音か? なら今すぐ……」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
その間、幾度彼の食事シーンが見られるだろう? それでなくても、ここのところ店にいないというのに……。
「えっと――後を付いて歩いてもいいでしょうか?」
「馬鹿か! 仕事をしないのなら即クビだ」
「そんなメチャクチャな」
「それが嫌なら、今すぐ自主退職しろ?」
腹立たしい! どう転んでもクビということではないか。
鬼の首でも取ったような満面の笑みの西園寺オーナーに怒りを覚えるが、「承知しました」と私は返事をしていた。勤め続けるには彼の要求を聞くしかないからだ。
「年末までに西園寺オーナーの思い入れのある食べ物をきっと見つけます」
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