美食倶楽部クーラウ ~秘密は甘い罠~

米原湖子

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第5章 解雇

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彼女が立ち去ると私はコックコートを羽織り、厨房に向かった――だが、フロアーは元より、厨房にももう誰の姿もなかった。

『スタッフだけで打ち上げをするから、賄いを作り終えたら“居酒屋ダイニング猫のトール”においで』

私が眠っている間に、急遽そんな計画が持ち上がっていたのだ。マミさんも神乃マネージャーももういないということは、すでに出掛けてしまったのだろう。

「本当にタフな人たちだ」

私も今日は身体が軽い。当然だ。あれだけ眠ったのだから。でも、皆のように飲みに行きたいとは思わなかった。しかし、お腹は減っている。だからトールの料理には惹かれる。

悩ましい取捨選択に、「そうだ!」と閃く。
一人分も二人分も手間は同じだし――とついでに私の分の“お握り定食”も作り始めた。

「でも、先に食べて彼を待たせるわけにはいかないかぁ」

後が怖い。だから、行儀は悪いが、味見と称してつまみ食いをしながら作ることにした。

私はつまみ食いほど美味しいシチュエーションはないと思っている。
誰に対してか分からない背徳感が、エッセンスとなりより料理を美味しくさせると思うからだ。

これについては何の根拠もない。ただ単に空腹状態の脳が誤作動を起こしているだけかもしれない。でも、私はつまみ食いが好きだ。

嬉々としながら西園寺オーナーのおむすびを三個作り終える。具はいつも一緒だ。梅におかか、それから生姜をたっぷり使った牛の時雨煮しぐれにだ。それらはあの時あの食堂で食べた具と同じだった。

それにラップをかけ、もう一個自分用におむすびを握る。
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