美食倶楽部クーラウ ~秘密は甘い罠~

米原湖子

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第6章 再就職

13

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「どうしてそんなこと言い切れるの?」
「理由は言えません」

いくら樫野チーフが西園寺オーナーの親友だからと言っても、やっぱり彼がひた隠しにしていることを本人の同意なしにバラすわけにはいかない。

頑なな私の態度に樫野チーフもとうとう「分かったわ」と深い溜息と共に降参した。

「でも、私が折れたとしても、綾時はきっと貴女を連れ戻すわ」

溜息を吐きたいのは私の方だ。樫野チーフは理由を知らないからそんな無責任な発言ができるのだ。

「――私だって、戻れるなら戻りたい――でも、無理なんです」

本音が零れる。

「だから、この話はこれでおしまい! 樫野チーフのお料理、食べさせて下さい。これで最後かもしれないし……」

持ったままだった箸をサーモンで作られた見事な薔薇に持っていく。

――こういうところだと思う。樫野チーフが海外で人気だったのは……。

味もさることながら、持って生まれた美的感覚もあったのだろう。とにかく彼の料理はどれも繊細で美しいのだ。

「チーフって天才ですね」

ポツリと呟く私の言葉に白戸さんが笑みを浮かべた。

「ああ、友宏は天才だ」

そう言いながら白戸さんが出し巻き卵を口に入れたその時、彼の頭上に吹き出しが現われた。

――これは!
そう、それは白戸さんと樫野チーフの出会いのシーンだった。
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