美食倶楽部クーラウ ～秘密は甘い罠～

エピローグ

03

「西園寺オーナーをどうにかして下さい！」
「どうにかって？　どうにもならないのは寧々ちゃんも知っているじゃない？」
「たとえそうだとしても、チーフならできます！」
「無茶言う子だねぇ」

呆れるのは当然だ。無理を言っているのは自分でもよく分かっている。だが――。

「雑用が多すぎて仕事に集中できません！」

このままでは皿洗いで一生が終わってしまいそうだ。
うーん、と宙を見た樫野チーフが閃いたとばかりにパチンと手を打つ。

「こうなったら、仕事は諦めて本当に綾時のお嫁さんになったら？　ここに居る目的は賄いのためだったわけだし、身内なら大手を振って食べたい放題じゃない」

『じゃない』って何を言い出すんだ、と樫野チーフのまじまじと見詰める。

「良い考えだ。クーラウが平和になる」

白戸さんまで！

「今でも十分平和じゃないですか！　これ以上の平和をお望みなら夢の国にでも行かれたらどうですか？」

こちらは真剣に悩んでいるというのに……。
「ああ、それなら今度のお休みに行く予定よ」と樫野チーフがニヤリと笑った。

「聖天君は知らないからそんな風に言うんだ」
「純也の言うとおり。貴女が店に来てから、本当に平和になったわ」

そう言えば、と数々あった事件を思い出す。あれは序の口だったらしい。

「綾時に対する過剰なファンも鳴りを潜めたし、店に対する嫌がらせも無くなったし。寧々ちゃんのお陰と言っても過言じゃ無いのよ」

フフッと微笑み、「それに……」と意味深に笑った。