美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん

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アーリオーリ王国編

最終話

 目覚めたアフロディーテと交わされた誓約は、主権移譲。自治を認める、ただし、現王家は国外追放、というものだった。今回アフロディーテについて来た者たちについては、レイガードの許可なくアーリオーリの地から出てはいけない、という恩情厚い罰を与えた。アフロディーテは誓約を交わした後、罪人として拘束。処刑が一ヶ月後に決まった。
 報せに青ざめたアーリオーリの王と王妃、王太子の三人が、慌てて駆けつけた。
 平伏し、震えるアーリオーリの王族に、ディアンは冷たく言い放つ。
 「貴国の姫は随分我が国をお気に召していたようだ。まるで自国のように、実に自由であった」
 王族たちは、何も言えない。
 ディアンは肘置きに片肘をつき、頬杖をしたままで話し続ける。
 「王女という義務を忘れ、その権利だけを遺憾なく振るっておられた。実に楽しませていただいたよ」
 「そ、その件につきましては、」
 「ああ、いい。貴殿らの言葉には何もないと実感している。口を開くな」
 ディアンの圧に、王族たちの冷や汗が止まらない。
 「どのような教育をしたらあのような者が出来るのか。今後の参考までに是非ご教示願いたいものだ」
 ディアンは立ち上がり、平伏すアーリオーリ王の前に屈み込む。王は縮こまった体を更に縮こまらせた。
 「我が国と同等だと、むしろ貴国の方が優位であると、なぜ勘違いしているのだろうな」
 ディアンは喉の奥で嗤った。
 国土はレイガードの方が広い。だが、国力は大して差がない、むしろ輸入の件があるので、自分たちの方が上であると、アーリオーリの王族たちは思っていた。
 賢い国はわかっている。レイガードは眠れる獅子だと。国土を広げないのは面倒だから。油断をしたら、レイガードに捕って食われる。だから、レイガードには触れてはいけない。眠れる獅子を、起こしてはならない。強大な帝国、シュヴァルタインでさえレイガードには敬意を払う。各国の、暗黙の了解だ。
 「二度と会うことはない。ご機嫌よう、アーリオーリの王族たちよ」
 「お、お、お待ちください!お待ちください、レイガード王!お待ちくださいぃ!」
 ディアンは振り返ることなく、謁見の間を去った。
 ひと言の弁解の余地も与えられないなどとは思ってもいなかったアーリオーリ王。それこそが、立場を弁えられない者たちの思考であったと気付くことさえ出来ない。チャンスがあると、なぜ思うのだろう。
 王の去ったのち、醜く言い争うアーリオーリの王族たちの声が響いた。
 その場で待機していた者たちは、呆れた溜め息と侮蔑の目を、隠そうともしなかった。

*~*~*~*~*

 「輸入で優位に立っていると勘違いするからこうなる」
 そんなものいくらでもひっくり返せるというのに、それを理解できないことが理解できない。世界の宗主国になり得る強大な力を秘めた国を相手に、何を勘違いしているのか。優位に見せてあげているだけだと気付かない無能は滅ぶだけ。
 「バカは扱いやすくていい」
 ディアンの言葉に、エリアストは口の端を上げた。
 「ディレイガルドの。本当に助かった。ありがとう。結局すべて任せてしまった。そちらの条件さえ、自ら手に入れたものであったし、私は何もしていないな、本当に」
 エリアストが手を貸す代わりに出した条件は、アーリオーリ国を手に入れることだった。
 「国土を広げるのはあまり得策ではない。自治権があるとはいえ、今後の面倒はおまえが見るんだ」
 その面倒を請け負うことが、エリアストの出した条件の本質だ。
 「まあ、そうではあるんだが」
 ディアンは苦笑いをした。
 「聞いてもいいか、ディレイガルドの」
 エリアストは視線で続きを促す。
 「なぜ、アーリオーリを?」
 アーリオーリは隣国と呼べるほどではない程度に、僅かにレイガードに隣接している。国境は二キロ程度接しているだけ。
 エリアストは言った。
 「前にエルシィが海を見てみたいと言ってな。一緒に行ったときの、ああ、いい。おまえに聞かせるのはもったいない。国境を越えるのは手続きが面倒だろう」
 もっと気軽に行けるようにしただけだ。
 「そう、ですか」
 何となく、予想はしていました。


*アーリオーリ王国編おしまい*

 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。アーリオーリ王国編はこれにて終了です。
 この後番外編を挟んで、新章ディレイガルド事変編へと移ります。後味の悪い、暗いお話し本編10話+幕間1話となっておりますので、好まれない方は、さらに次の章リカリエット王国編にお付き合いくださると嬉しいです。今後とも、よろしくお願いいたします。
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