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再びリベラ王国(2)
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弟子二人に心配してもらえたクロイツはこれが望んでいた絆かと心が熱くなるが、二人の弟子の心遣いに感謝しつつも、弱みは見せたくないクロイツは申し出を断る。
「あ~、心配かけて悪いな。だが大丈夫だ。俺はあいつらを家族だと思った事はねーからな。心配すんな。きっちりリージョの仇は生きたまま連れてきてやるからな。ホラ、行った行った!」
弱みを見せたくない思いの他にもう一つ理由はあるのだが、リサとリージョの二人を半ば強制的に、追い立てるようにダンジョン1階層に送らせる。
「師匠はきっと、気持ちを切り替えるために態々お気に入りの場所に来たのでしょうね」
「あんな事を言っていましたけれど、師匠は初めて会った時から寂しがりやでした。今思えば、家族というものに憧れていたのかもしれませんね。正直もっと私達を頼ってほしかったですが、これも師匠なりの優しさです。お兄ちゃん、私達も師匠の優しい心に応えないといけませんね!」
こうして二人のSランカーはその実力を如何なく発揮して、僅か数時間でリベラ王国に到着する。
その間にギルドでは、ミューテルが一旦席を外して再び連絡係の男と会話をしている。
「依頼は明日から実行するそうよ。でも全てを信用するわけにはいかないわね。移動に5日と言っても、あの化け物達であれば2日程度でリベラ王国に到着できるかもしれないわ。その旨も書いてあるから、確実に商会長に伝えて頂戴」
ミューテルはクロイツ達の言葉をそのまま信用する事はないのだが、その実力の全てを知っているわけではないので、移動速度についてもかなり不正確だ。
一応かなり余裕を持った情報として伝えているつもりで、2日程度で混乱が起きる可能性が高く、それまでに赤の紋章を付けられる術者達をリベラ王国に集結させるように書き添えている。
連絡係の男はこの場から消え去り、何らかの手段……飛行可能な魔獣なのか魔道具なのかは不明だが、間違いなく商会長に情報がわたり、そこから再び各方面に指示が飛ぶ。
「そうですか。今回は愚兄は出ないのですか。それならば危険は少ないかもしれませんが、油断は禁物ですね。即リベラ王国に赤の紋章を付けられる人物を向かわせなさい。それとドレア。リベラ王国を援助すると言う体で、騎士と共に向かいなさい」
「はい」
虚ろな目のドレアは完全にリーナのスキル<傀儡>の影響下にあるので、リーナの命令は完全に覚えているのだが、自らの希望として認識した状態で意識を取り戻す事になる。
リーナが玉座から立ち上がって部屋からいなくなると、ドレアは意識を取り戻す。
「……なんでここにいるんだ?まぁ良いか。国王が玉座の間にいるのは何ら不思議ではないからな。アルファ、ガンマ、デルタ!」
「「「はっ」」」
この騎士三人も<傀儡>の影響下にあり、無意識化でリーナの思い通りに行動している。
「今回ナスカリベラ王国に“白套のリサ”と“黒套のリージョ”の兄妹が出向いてSランク魔獣を始末するらしい。だが、俺達も責任ある大国として冒険者ごときに全てを任せるわけにはいかない。野蛮な冒険者に対して騎士の何たるかを教えてやる良い機会だ。我らも即向かい、獣共を始末するぞ!」
「「「仰せのままに」」」
この場の四人は口ではこのように言っているが、リーナの影響も少なからずあるが、混乱に乗じて自分達に恥をかかせた“白套のリサ”を始末してやろうと企んでいる。
ついでとばかりに、リサの兄と知れ渡っている元Aランカー“無音のリージョ”改め現Sランカーの“黒套のリージョ”も始末して、騎士としての優位さを示してやろうと画策している。
残念な事にナスカ王国周辺でもSランク魔獣の目撃情報があるため、出向く騎士は近衛騎士隊長の三人とドレアだけであり、ドレア自身が向かうのは、国王自ら他国を救ったと言う実績になればと言う思いもあって派遣する事にしていた。
ナスカ王国からリベラ王国までは馬車で11日程度必要になるので、ミューテルの情報から即出発しても戦闘初期には間に合わないが、多数のSランク魔獣の存在が確認されているので、丁度リサとリージョが疲弊した頃、最良はほぼ致命傷を負った頃に到着できるだろうと即座に出立する。
道中は街道をひた走るために危険はなく順調な旅路を続けており、日も落ちて野営をしているドレア一行。
その頃のリサとリージョは……とっくにリベラ王国に到着してSランク魔獣の位置を確認していた。
「お兄ちゃん、今日中に全部狩っちゃう方が良いですかね?前情報から少しずれは有りますが、誤差の範囲ですし」
「それも可能ですが、あまりにも早く始末して師匠の活動に何か悪影響が出ると困りますね。今回の依頼、闇の奴隷商幹部としての立場からの依頼でしょうから、あの女が想定していた到着日を考慮して、二日程は大人しくしていましょうか」
Sランク魔獣の監視は怠らずに、万が一にも町に危険があれば即仕留める事だけは確認してリベラ王国に侵入する二人。
正式に入国してはSランカーと言う立場からその存在が公になり、闇の組織にもその情報が流れて師匠の動きを阻害すると考えての行動だ。
一旦侵入してしまえば中にはリサやリージョをまねている人物は山ほどいるので、余程フードを外して目立たない限りは問題なく過ごす事ができる二人。
初めての兄妹二人だけの活動で、少し旅行気分で心から楽しむ事が出来ていた。
「あ~、心配かけて悪いな。だが大丈夫だ。俺はあいつらを家族だと思った事はねーからな。心配すんな。きっちりリージョの仇は生きたまま連れてきてやるからな。ホラ、行った行った!」
弱みを見せたくない思いの他にもう一つ理由はあるのだが、リサとリージョの二人を半ば強制的に、追い立てるようにダンジョン1階層に送らせる。
「師匠はきっと、気持ちを切り替えるために態々お気に入りの場所に来たのでしょうね」
「あんな事を言っていましたけれど、師匠は初めて会った時から寂しがりやでした。今思えば、家族というものに憧れていたのかもしれませんね。正直もっと私達を頼ってほしかったですが、これも師匠なりの優しさです。お兄ちゃん、私達も師匠の優しい心に応えないといけませんね!」
こうして二人のSランカーはその実力を如何なく発揮して、僅か数時間でリベラ王国に到着する。
その間にギルドでは、ミューテルが一旦席を外して再び連絡係の男と会話をしている。
「依頼は明日から実行するそうよ。でも全てを信用するわけにはいかないわね。移動に5日と言っても、あの化け物達であれば2日程度でリベラ王国に到着できるかもしれないわ。その旨も書いてあるから、確実に商会長に伝えて頂戴」
ミューテルはクロイツ達の言葉をそのまま信用する事はないのだが、その実力の全てを知っているわけではないので、移動速度についてもかなり不正確だ。
一応かなり余裕を持った情報として伝えているつもりで、2日程度で混乱が起きる可能性が高く、それまでに赤の紋章を付けられる術者達をリベラ王国に集結させるように書き添えている。
連絡係の男はこの場から消え去り、何らかの手段……飛行可能な魔獣なのか魔道具なのかは不明だが、間違いなく商会長に情報がわたり、そこから再び各方面に指示が飛ぶ。
「そうですか。今回は愚兄は出ないのですか。それならば危険は少ないかもしれませんが、油断は禁物ですね。即リベラ王国に赤の紋章を付けられる人物を向かわせなさい。それとドレア。リベラ王国を援助すると言う体で、騎士と共に向かいなさい」
「はい」
虚ろな目のドレアは完全にリーナのスキル<傀儡>の影響下にあるので、リーナの命令は完全に覚えているのだが、自らの希望として認識した状態で意識を取り戻す事になる。
リーナが玉座から立ち上がって部屋からいなくなると、ドレアは意識を取り戻す。
「……なんでここにいるんだ?まぁ良いか。国王が玉座の間にいるのは何ら不思議ではないからな。アルファ、ガンマ、デルタ!」
「「「はっ」」」
この騎士三人も<傀儡>の影響下にあり、無意識化でリーナの思い通りに行動している。
「今回ナスカリベラ王国に“白套のリサ”と“黒套のリージョ”の兄妹が出向いてSランク魔獣を始末するらしい。だが、俺達も責任ある大国として冒険者ごときに全てを任せるわけにはいかない。野蛮な冒険者に対して騎士の何たるかを教えてやる良い機会だ。我らも即向かい、獣共を始末するぞ!」
「「「仰せのままに」」」
この場の四人は口ではこのように言っているが、リーナの影響も少なからずあるが、混乱に乗じて自分達に恥をかかせた“白套のリサ”を始末してやろうと企んでいる。
ついでとばかりに、リサの兄と知れ渡っている元Aランカー“無音のリージョ”改め現Sランカーの“黒套のリージョ”も始末して、騎士としての優位さを示してやろうと画策している。
残念な事にナスカ王国周辺でもSランク魔獣の目撃情報があるため、出向く騎士は近衛騎士隊長の三人とドレアだけであり、ドレア自身が向かうのは、国王自ら他国を救ったと言う実績になればと言う思いもあって派遣する事にしていた。
ナスカ王国からリベラ王国までは馬車で11日程度必要になるので、ミューテルの情報から即出発しても戦闘初期には間に合わないが、多数のSランク魔獣の存在が確認されているので、丁度リサとリージョが疲弊した頃、最良はほぼ致命傷を負った頃に到着できるだろうと即座に出立する。
道中は街道をひた走るために危険はなく順調な旅路を続けており、日も落ちて野営をしているドレア一行。
その頃のリサとリージョは……とっくにリベラ王国に到着してSランク魔獣の位置を確認していた。
「お兄ちゃん、今日中に全部狩っちゃう方が良いですかね?前情報から少しずれは有りますが、誤差の範囲ですし」
「それも可能ですが、あまりにも早く始末して師匠の活動に何か悪影響が出ると困りますね。今回の依頼、闇の奴隷商幹部としての立場からの依頼でしょうから、あの女が想定していた到着日を考慮して、二日程は大人しくしていましょうか」
Sランク魔獣の監視は怠らずに、万が一にも町に危険があれば即仕留める事だけは確認してリベラ王国に侵入する二人。
正式に入国してはSランカーと言う立場からその存在が公になり、闇の組織にもその情報が流れて師匠の動きを阻害すると考えての行動だ。
一旦侵入してしまえば中にはリサやリージョをまねている人物は山ほどいるので、余程フードを外して目立たない限りは問題なく過ごす事ができる二人。
初めての兄妹二人だけの活動で、少し旅行気分で心から楽しむ事が出来ていた。
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