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魔獣の勉強
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クオウの指示によって魔獣を適当に狩ってきたフレナブル。
喜び勇んで一仕事終え、【癒しの雫】に戻り獲物を出したが、さえない表情のクオウを見て不安になってしまう。
「あの……クオウ様。如何なされましたでしょうか?この程度の魔獣では不足でしたのでしょうか?」
「……そうだよね、フレナブルにしてみれば本当の雑魚だろうね。でも、人族の間ではこの魔獣はAランク相当に位置づけられているんだ。それも二体……でも良いか!フレナブルがBランク以上の実力があると言う証明になるしね」
本当はもう少しレベルの低い魔獣を希望していたクオウ。
先の見えないと言うより、最早お先真っ暗のギルドが突然Aランク相当の魔獣を二体本部に納品すれば、目を付けられるのは間違いないからだ。
とは言え、既にBランクで登録したフレナブルの力の証明は何れしなくてはならなかったので、少々ランクが合わない魔獣でも問題ないだろうと判断した。
このまま【癒しの雫】で魔獣を保管しても食用としての肉以外には使用用途がないので、実績作りも兼ねて、本部、この場合はジャロリア王国のギルド本部に持ち込む事になる。
「フレナブル、もう一回保管しておいてくれるかな?マスターが帰ってきてから報告して、一度皆でこの国のギルド本部に顔を出しておこう」
後でコソコソ嗅ぎまわられるより、自ら顔を出した方が安全だろうと言うクオウの判断だ。
問いかけられたフレナブルは、クオウの言う事、行う事に対して絶大な信頼を置いているので、一も二もなく肯定する。
「じゃあその間、こっちの掃除を手伝ってくれるかい?」
「はいっ!お任せください、クオウ様!」
ギルドマスターであるシアの依頼が終了するまで、ギルドとして使用している一階ではなく、居住区になっている二階の掃除にも取り掛かる二人。
今迄はシアもギルドを何とかしたいと言う強い思いから、一階のギルドだけで仕事をしつつ生活していた。
そのために二階は直ぐに生活できるような状態ではなく、“この建屋”の掃除をする事の許可を取ったクオウが善意で清掃しているのだ。
「見違えたね、フレナブル!」
「本当です。流石はクオウ様」
二人の言う通りに見違えたギルド及び居住区である二階。
建屋の外観は変わらないが、二人の力によって堅牢な防御性能を誇り、居住区の二階は、内装も一新した上で落ち着きのある調度品が飾られている。
この調度品の数々、実はフレナブルが魔王国を出る時にどさくさに紛れて王城から持ってきた物だったりする。
その価値は、見る人が見れば超高級品であると理解できる。
具体的には、調度品一つで豪華な屋敷が手に入ったりする程の品々なのだ。
美術品に疎い二人には、何となく落ち着く感じになって良かったな……程度の認識でしかない。
「只今戻りました!」
そこにギルドマスターであるシアがギルドに戻って来る。
「今日の報酬は、コレです」
少々申し訳なさそうに、大銅貨二枚を出すシア。
町の出店で、串焼きを二十本購入できる程度の報酬だ。
この報酬で毎日生活し、ギルド再建に向けて冒険者に対する報酬を貯めていたシア。
既にフレナブルと言う冒険者が登録してくれており、それなりの報酬を準備する必要があると考えていたので、貯蓄の事を話し始める。
「フレナブルさんの報酬分は別途貯蓄していますので、安心してください。今持ってきますね」
こうして去ろうとするシアを、クオウは止める。
「マスター、どこに行くのですか?フレナブルの報酬は、狩ってきた魔獣を本部に収めて得た報酬からで問題ないと思いますけど……」
こんな当たり前の事もすっかり忘れていたシアは、真っ赤な顔をしてしまう。
「丁度フレナブルが仕留めた魔獣が二体いますので、説明させて頂きますね」
クオウの掛け声で再び裏庭に向かう三人。
到着後、フレナブルが魔獣を出す前にクオウがシアにこう確認する。
「マスターは、魔獣に対する知識はどの程度ありますか?」
「えっと、お恥ずかしながら、あまり詳しくはありません。私がギルドマスターになってからギルドが討伐した魔獣と言えば、Fランクのスライム程度でして……」
これから出す魔獣はクオウやフレナブルからすれば等しく雑魚でスライムと大して変わらないとの認識だが、人族にとっては脅威となるAランクの魔獣になる。
突然強大と感じるのであろう魔獣を二体も目の前に出して良いものか、その辺りの判断をするために事前に問いかけたのだ。
結果、クオウは魔獣を出す前に少々事情を説明する必要があると結論付けた。
長きに渡り、新人もかなりの数加入してくる【勇者の館】に所属していた事務方である為、魔獣に対する基礎知識についての講義もお手の物だ。
「マスター、それではこれから魔獣について少しだけ勉強しましょう。そもそも冒険者と同じく、魔獣もFランクからSランクまで区分けされています。その魔獣が……」
と講義を始めるのだが、何故か嬉しそうにフレナブルもシアと共に聞いている。
「……と言う事で、今回フレナブルが仕留めて来た魔獣はAランクに分類される魔獣と言う訳です。二体いますので、同日ではなく別の日に納品した方が騒がれる事は無いでしょう。そしてこの納品、本部に対して我ら【癒しの雫】の信頼度上昇、更には登録冒険者であるフレナブルがまぎれもなくBランクの力を持っている証明にもなるのです!」
「「おぉ~!!」」
何故か二人揃って拍手するフレナブルとシア。
実際にクオウの説明は非常にわかりやすく、無意識のうちに話しに引き込まれてしまっていた。
そんな二人の反応を見て嬉しくなるクオウ。
口ではこう言っているが、その内心、実際にはこの一回、いや、二回に分けて魔獣を納品するのだが、今回の納品によってギルド本部が、フレナブルが実力の伴ったBランクであると認識するとは思っていなかった。
恐らくどこからか購入やら何やらで仕入れてきたものと判断するだろうと思っていたのだ。
それほど今の【癒しの雫】の信頼度は低いのだ。
だが、継続して納品すれば否が応でも認めざるを得ない。
高ランクの魔獣を購入し続ければ、必ず足がつくからだ。
考えを纏めつつ、ギルドマスターであるシアにこれから魔獣を出すと宣言するクオウ。
その指示によってフレナブルは魔術を行使して、裏庭に魔獣を二体出す。
「マスター。フレナブルのこの魔術、恐らく、いえ確実に同じレベルで使いこなせる者はこの王都にはいません。余計な揉め事を避けるためにも、この部分は秘匿でお願いしますね」
「はっ、はい!すごいですね、フレナブルさん!」
「いえいえ、この程度、どうという事はございませんよ、シア様。これからも獣共をバンバン仕留めてきますので、楽しみにしてください!」
少ない人数ながらも、楽しく盛り上がる【癒しの雫】。
以前事務職の同僚が欲しいと思っていたクオウだが、マスター、そして冒険者とこうして仲良く仕事をするのも悪くないと感じていた。
「じゃあ、これから本部に顔を出しましょうかマスター。フレナブルも来るかい?」
「もちろんです。ご一緒させてくださいませ、クオウ様」
「楽しみですね。フフフ、本部ですか。マスターを引き継いだ時以来ですね」
新生【癒しの雫】の三人はフレナブルの魔術を秘匿する為に、台車にAランクの魔獣を一体載せて、中心部にあるギルド本部に向かうのだった。
喜び勇んで一仕事終え、【癒しの雫】に戻り獲物を出したが、さえない表情のクオウを見て不安になってしまう。
「あの……クオウ様。如何なされましたでしょうか?この程度の魔獣では不足でしたのでしょうか?」
「……そうだよね、フレナブルにしてみれば本当の雑魚だろうね。でも、人族の間ではこの魔獣はAランク相当に位置づけられているんだ。それも二体……でも良いか!フレナブルがBランク以上の実力があると言う証明になるしね」
本当はもう少しレベルの低い魔獣を希望していたクオウ。
先の見えないと言うより、最早お先真っ暗のギルドが突然Aランク相当の魔獣を二体本部に納品すれば、目を付けられるのは間違いないからだ。
とは言え、既にBランクで登録したフレナブルの力の証明は何れしなくてはならなかったので、少々ランクが合わない魔獣でも問題ないだろうと判断した。
このまま【癒しの雫】で魔獣を保管しても食用としての肉以外には使用用途がないので、実績作りも兼ねて、本部、この場合はジャロリア王国のギルド本部に持ち込む事になる。
「フレナブル、もう一回保管しておいてくれるかな?マスターが帰ってきてから報告して、一度皆でこの国のギルド本部に顔を出しておこう」
後でコソコソ嗅ぎまわられるより、自ら顔を出した方が安全だろうと言うクオウの判断だ。
問いかけられたフレナブルは、クオウの言う事、行う事に対して絶大な信頼を置いているので、一も二もなく肯定する。
「じゃあその間、こっちの掃除を手伝ってくれるかい?」
「はいっ!お任せください、クオウ様!」
ギルドマスターであるシアの依頼が終了するまで、ギルドとして使用している一階ではなく、居住区になっている二階の掃除にも取り掛かる二人。
今迄はシアもギルドを何とかしたいと言う強い思いから、一階のギルドだけで仕事をしつつ生活していた。
そのために二階は直ぐに生活できるような状態ではなく、“この建屋”の掃除をする事の許可を取ったクオウが善意で清掃しているのだ。
「見違えたね、フレナブル!」
「本当です。流石はクオウ様」
二人の言う通りに見違えたギルド及び居住区である二階。
建屋の外観は変わらないが、二人の力によって堅牢な防御性能を誇り、居住区の二階は、内装も一新した上で落ち着きのある調度品が飾られている。
この調度品の数々、実はフレナブルが魔王国を出る時にどさくさに紛れて王城から持ってきた物だったりする。
その価値は、見る人が見れば超高級品であると理解できる。
具体的には、調度品一つで豪華な屋敷が手に入ったりする程の品々なのだ。
美術品に疎い二人には、何となく落ち着く感じになって良かったな……程度の認識でしかない。
「只今戻りました!」
そこにギルドマスターであるシアがギルドに戻って来る。
「今日の報酬は、コレです」
少々申し訳なさそうに、大銅貨二枚を出すシア。
町の出店で、串焼きを二十本購入できる程度の報酬だ。
この報酬で毎日生活し、ギルド再建に向けて冒険者に対する報酬を貯めていたシア。
既にフレナブルと言う冒険者が登録してくれており、それなりの報酬を準備する必要があると考えていたので、貯蓄の事を話し始める。
「フレナブルさんの報酬分は別途貯蓄していますので、安心してください。今持ってきますね」
こうして去ろうとするシアを、クオウは止める。
「マスター、どこに行くのですか?フレナブルの報酬は、狩ってきた魔獣を本部に収めて得た報酬からで問題ないと思いますけど……」
こんな当たり前の事もすっかり忘れていたシアは、真っ赤な顔をしてしまう。
「丁度フレナブルが仕留めた魔獣が二体いますので、説明させて頂きますね」
クオウの掛け声で再び裏庭に向かう三人。
到着後、フレナブルが魔獣を出す前にクオウがシアにこう確認する。
「マスターは、魔獣に対する知識はどの程度ありますか?」
「えっと、お恥ずかしながら、あまり詳しくはありません。私がギルドマスターになってからギルドが討伐した魔獣と言えば、Fランクのスライム程度でして……」
これから出す魔獣はクオウやフレナブルからすれば等しく雑魚でスライムと大して変わらないとの認識だが、人族にとっては脅威となるAランクの魔獣になる。
突然強大と感じるのであろう魔獣を二体も目の前に出して良いものか、その辺りの判断をするために事前に問いかけたのだ。
結果、クオウは魔獣を出す前に少々事情を説明する必要があると結論付けた。
長きに渡り、新人もかなりの数加入してくる【勇者の館】に所属していた事務方である為、魔獣に対する基礎知識についての講義もお手の物だ。
「マスター、それではこれから魔獣について少しだけ勉強しましょう。そもそも冒険者と同じく、魔獣もFランクからSランクまで区分けされています。その魔獣が……」
と講義を始めるのだが、何故か嬉しそうにフレナブルもシアと共に聞いている。
「……と言う事で、今回フレナブルが仕留めて来た魔獣はAランクに分類される魔獣と言う訳です。二体いますので、同日ではなく別の日に納品した方が騒がれる事は無いでしょう。そしてこの納品、本部に対して我ら【癒しの雫】の信頼度上昇、更には登録冒険者であるフレナブルがまぎれもなくBランクの力を持っている証明にもなるのです!」
「「おぉ~!!」」
何故か二人揃って拍手するフレナブルとシア。
実際にクオウの説明は非常にわかりやすく、無意識のうちに話しに引き込まれてしまっていた。
そんな二人の反応を見て嬉しくなるクオウ。
口ではこう言っているが、その内心、実際にはこの一回、いや、二回に分けて魔獣を納品するのだが、今回の納品によってギルド本部が、フレナブルが実力の伴ったBランクであると認識するとは思っていなかった。
恐らくどこからか購入やら何やらで仕入れてきたものと判断するだろうと思っていたのだ。
それほど今の【癒しの雫】の信頼度は低いのだ。
だが、継続して納品すれば否が応でも認めざるを得ない。
高ランクの魔獣を購入し続ければ、必ず足がつくからだ。
考えを纏めつつ、ギルドマスターであるシアにこれから魔獣を出すと宣言するクオウ。
その指示によってフレナブルは魔術を行使して、裏庭に魔獣を二体出す。
「マスター。フレナブルのこの魔術、恐らく、いえ確実に同じレベルで使いこなせる者はこの王都にはいません。余計な揉め事を避けるためにも、この部分は秘匿でお願いしますね」
「はっ、はい!すごいですね、フレナブルさん!」
「いえいえ、この程度、どうという事はございませんよ、シア様。これからも獣共をバンバン仕留めてきますので、楽しみにしてください!」
少ない人数ながらも、楽しく盛り上がる【癒しの雫】。
以前事務職の同僚が欲しいと思っていたクオウだが、マスター、そして冒険者とこうして仲良く仕事をするのも悪くないと感じていた。
「じゃあ、これから本部に顔を出しましょうかマスター。フレナブルも来るかい?」
「もちろんです。ご一緒させてくださいませ、クオウ様」
「楽しみですね。フフフ、本部ですか。マスターを引き継いだ時以来ですね」
新生【癒しの雫】の三人はフレナブルの魔術を秘匿する為に、台車にAランクの魔獣を一体載せて、中心部にあるギルド本部に向かうのだった。
応援ありがとうございます!
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