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(52)第一王子ミハイル
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「ミハイル王子!どうやらネルハリ王女は<勇者>パーティーと接触しているようです。間違いなく共にダンジョンを攻略する為でしょう」
「何?こざかしい!他に情報はあるか?」
「これと言って……敢えて申し上げれば、シシハルド王子の動きが一切なさそうだと言う事ですが、そうでした!それとハミュレット王女が何故か暗殺部隊ではなく騎士をユガル王国に派遣しております」
「はっ、あの陰湿野郎が何もしていないわけがないだろうが!裏でコソコソ何かをしていやがるに決まっている!もっとしっかりと調べろ!それと、ハミュレットか。あいつはバカだから何をしでかすか俺にも分からない。今更騎士を堂々と派遣して何になる?」
「確かに仰る通りです。騎士を派遣していると言う事は、どう考えてもキャスカ王女の暗殺の為に派遣しているわけではない事は明白であり、ユガル国王直属の部隊と共闘依頼でもするのでしょうか?」
「その可能性も捨てきれないな。流石にユガルの王家直属部隊と共闘ともなれば、<勇者>パーティーを手に入れたネルハリと同等の脅威になり得る。くそっ、情報が足りないぞ。もっと詳細な情報を持ってこい!それと、他の連中は旗をどうしている?」
「ネルハリ王女に関して言えば、ダンジョンに持ち込まずにネルエが王城で保護するようです。他は……申し訳ありませんが、今の所情報はつかめておりません」
「そうか……あの粘着質なネルハリが旗を持ち込まないとなると……<勇者>パーティーを手中に収めて安心したか、他の理由があるのか……」
ミハイルは自らが王として頂点に立つ人物であると疑っていないので、今更得体のしれない有象無象と手を組むなど一切考える事が出来ず、他の兄弟と異なり誰とも手を組もうともせず、組むつもりも一切なかった。
第二王女のキャスカに関して言えば討伐対象の<魔王>モラルと手を組んでいる形になってはいるが一切口外されておらず、今の所第一王女のネルハリも<勇者>パーティーと何故か都度交渉中であり、第三王女のハミュレットは何をトチ狂ったのか、散々暗殺者を差し向けたキャスカと共に行動しようと交渉する為に騎士を派遣していた。
第二王子のシシハルドだけは一歩も二歩も引いた状態で碌に動きがなく不気味ではあるのだが、そんな彼等、彼女達……キャスカは除くが、他の者達は自らにひれ伏すか、敵対するのであれば容赦なく叩きつぶす有象無象の集まりとしか認識していない。
互いに暗殺者を差し向け、撃退し、を繰り返していたのだが、王位継承がダンジョン攻略と公言されてからはその動きは激減しており、各自が方向性を変えた事がうかがえる。
「流石の俺でも、何も情報が無ければ安易に動けない。そこまで馬鹿ではないからな。しかし残された時間は少ない。一刻も早くダンジョンに潜り、<魔王>モラルをこの手で始末する必要がある!」
「承知しました」
配下の者から現時点で手に入れている情報を自室で全て聞くと、座っていた椅子から立ち上がって窓際に移動し、広大な敷地にある綺麗な庭に視線を落とす。
「俺は誰にも負けるわけにはいかないし、負けるわけがない。俺は長兄ミハイル様だ!あの花一輪でさえこの俺の所有物。誰にも渡すわけにはいかない……ミハエ!!」
「はっ、ここに!」
名前からも想像できる通りに、第一王子ミハイルにつけられている別格の戦力を持つ忠臣であるミハエが現れる。
「お前の事だから、敵対する可能性のある連中、特に最近調子に乗っているらしい<勇者>パーティーの事も知っているのだろう?お前から見てどうだ?勝てるか?」
基本的に忠臣とも言える別格の戦闘能力を持つ人物については各王族とも自らの護衛、切り札として抱え込んでいるので、余程の事がない限り個別に長期間行動させる事はしていないのだが、その余りある力を使って一般の配下が手に入れる情報程度であれば難なく入手する事が出来ている。
当然この程度は知っているのだろうと言う前提のもとに、客観的に物事を判断できる事からも意見を聞く。
「何やら、ユガル王国の国王よりとてつもない武器を下賜されたとの事です。確かに強力な武器でしたが、どう見ても武器に踊らされている状態で今の我であれば纏めて始末する事も可能でしょう」
明らかに<勇者>パーティーが魔核を使って作成した武器を使用している所をその目で見たと言っており、更には的確な状態把握までして見せていたミハエ。
「そうか。そうだろうな。お前の力はこの俺も含めて誰しもが認めるところで、所詮ポッと出の<勇者>程度を転がす事も容易だろう。だが……お前と同じような強さを持つ存在が、他の連中にも一人いると言う事を忘れずに行動しなくてはならない。まぁ、キャスカに至ってはどこぞの使用人一人だけだから、特段注視する必要はないだろうがな」
「御意!」
その後……第一王女のネルハリから遅れる事少々、ダンジョンの浅層についての詳細を入手したのだが、ミハイルの判断はネルハリとは大きく異なり、全戦力で一気にダンジョンを攻略する為に旗は自らが懐に持ち、使用できる環境、情報を得られていない下層で使用可能であれば使用すると言う方針が決定される。
「決行は一週間後だ。ただし、その間もクズ共の情報収取は怠るな。状況に変化があれば、即侵入する事も考慮して準備しろ!」
誰にも負けるわけにはいかないと言う強い心と、自分以外には王位に相応しくないと言う唯我独尊の心を持つミハイルは、誰よりもダンジョン攻略を行う、つまり誰よりも早く侵攻を開始するべきだと判断している。
露払いの様に、他の面々が侵攻して敵が駆除されている所をゆったりと進むなどと言う事は全く頭になく、唯只管に自らの強さ、自らの優位性を誇示する事に執着している。
実はこの本侵攻を決めた翌日に、第一王女のネルハリが自らの目でダンジョンを確認する為に潜ったとの情報を得たのだが、本格的な侵攻かわからずに相当焦った事は言うまでも無く、そのおかげでより一層準備を急ぐように指示が出てしまい、一週間経たずに本侵攻する事になっていた。
「何?こざかしい!他に情報はあるか?」
「これと言って……敢えて申し上げれば、シシハルド王子の動きが一切なさそうだと言う事ですが、そうでした!それとハミュレット王女が何故か暗殺部隊ではなく騎士をユガル王国に派遣しております」
「はっ、あの陰湿野郎が何もしていないわけがないだろうが!裏でコソコソ何かをしていやがるに決まっている!もっとしっかりと調べろ!それと、ハミュレットか。あいつはバカだから何をしでかすか俺にも分からない。今更騎士を堂々と派遣して何になる?」
「確かに仰る通りです。騎士を派遣していると言う事は、どう考えてもキャスカ王女の暗殺の為に派遣しているわけではない事は明白であり、ユガル国王直属の部隊と共闘依頼でもするのでしょうか?」
「その可能性も捨てきれないな。流石にユガルの王家直属部隊と共闘ともなれば、<勇者>パーティーを手に入れたネルハリと同等の脅威になり得る。くそっ、情報が足りないぞ。もっと詳細な情報を持ってこい!それと、他の連中は旗をどうしている?」
「ネルハリ王女に関して言えば、ダンジョンに持ち込まずにネルエが王城で保護するようです。他は……申し訳ありませんが、今の所情報はつかめておりません」
「そうか……あの粘着質なネルハリが旗を持ち込まないとなると……<勇者>パーティーを手中に収めて安心したか、他の理由があるのか……」
ミハイルは自らが王として頂点に立つ人物であると疑っていないので、今更得体のしれない有象無象と手を組むなど一切考える事が出来ず、他の兄弟と異なり誰とも手を組もうともせず、組むつもりも一切なかった。
第二王女のキャスカに関して言えば討伐対象の<魔王>モラルと手を組んでいる形になってはいるが一切口外されておらず、今の所第一王女のネルハリも<勇者>パーティーと何故か都度交渉中であり、第三王女のハミュレットは何をトチ狂ったのか、散々暗殺者を差し向けたキャスカと共に行動しようと交渉する為に騎士を派遣していた。
第二王子のシシハルドだけは一歩も二歩も引いた状態で碌に動きがなく不気味ではあるのだが、そんな彼等、彼女達……キャスカは除くが、他の者達は自らにひれ伏すか、敵対するのであれば容赦なく叩きつぶす有象無象の集まりとしか認識していない。
互いに暗殺者を差し向け、撃退し、を繰り返していたのだが、王位継承がダンジョン攻略と公言されてからはその動きは激減しており、各自が方向性を変えた事がうかがえる。
「流石の俺でも、何も情報が無ければ安易に動けない。そこまで馬鹿ではないからな。しかし残された時間は少ない。一刻も早くダンジョンに潜り、<魔王>モラルをこの手で始末する必要がある!」
「承知しました」
配下の者から現時点で手に入れている情報を自室で全て聞くと、座っていた椅子から立ち上がって窓際に移動し、広大な敷地にある綺麗な庭に視線を落とす。
「俺は誰にも負けるわけにはいかないし、負けるわけがない。俺は長兄ミハイル様だ!あの花一輪でさえこの俺の所有物。誰にも渡すわけにはいかない……ミハエ!!」
「はっ、ここに!」
名前からも想像できる通りに、第一王子ミハイルにつけられている別格の戦力を持つ忠臣であるミハエが現れる。
「お前の事だから、敵対する可能性のある連中、特に最近調子に乗っているらしい<勇者>パーティーの事も知っているのだろう?お前から見てどうだ?勝てるか?」
基本的に忠臣とも言える別格の戦闘能力を持つ人物については各王族とも自らの護衛、切り札として抱え込んでいるので、余程の事がない限り個別に長期間行動させる事はしていないのだが、その余りある力を使って一般の配下が手に入れる情報程度であれば難なく入手する事が出来ている。
当然この程度は知っているのだろうと言う前提のもとに、客観的に物事を判断できる事からも意見を聞く。
「何やら、ユガル王国の国王よりとてつもない武器を下賜されたとの事です。確かに強力な武器でしたが、どう見ても武器に踊らされている状態で今の我であれば纏めて始末する事も可能でしょう」
明らかに<勇者>パーティーが魔核を使って作成した武器を使用している所をその目で見たと言っており、更には的確な状態把握までして見せていたミハエ。
「そうか。そうだろうな。お前の力はこの俺も含めて誰しもが認めるところで、所詮ポッと出の<勇者>程度を転がす事も容易だろう。だが……お前と同じような強さを持つ存在が、他の連中にも一人いると言う事を忘れずに行動しなくてはならない。まぁ、キャスカに至ってはどこぞの使用人一人だけだから、特段注視する必要はないだろうがな」
「御意!」
その後……第一王女のネルハリから遅れる事少々、ダンジョンの浅層についての詳細を入手したのだが、ミハイルの判断はネルハリとは大きく異なり、全戦力で一気にダンジョンを攻略する為に旗は自らが懐に持ち、使用できる環境、情報を得られていない下層で使用可能であれば使用すると言う方針が決定される。
「決行は一週間後だ。ただし、その間もクズ共の情報収取は怠るな。状況に変化があれば、即侵入する事も考慮して準備しろ!」
誰にも負けるわけにはいかないと言う強い心と、自分以外には王位に相応しくないと言う唯我独尊の心を持つミハイルは、誰よりもダンジョン攻略を行う、つまり誰よりも早く侵攻を開始するべきだと判断している。
露払いの様に、他の面々が侵攻して敵が駆除されている所をゆったりと進むなどと言う事は全く頭になく、唯只管に自らの強さ、自らの優位性を誇示する事に執着している。
実はこの本侵攻を決めた翌日に、第一王女のネルハリが自らの目でダンジョンを確認する為に潜ったとの情報を得たのだが、本格的な侵攻かわからずに相当焦った事は言うまでも無く、そのおかげでより一層準備を急ぐように指示が出てしまい、一週間経たずに本侵攻する事になっていた。
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