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第二章
6-2.
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6-2.
深夜の鍛練場での稽古を何度か重ねるうちに、ヴィアンカの『強さ』が見えてきた。攻撃は軽いが、当たりは正確、確実に急所を狙ってくる。
これに身体強化をのせれば、一撃必中も可能だろう。たまに、強化された攻撃を放たれては、本気でヒヤリとした。
そうやって、何度かの交流で彼女を少しずつ知るうちに、ついにそれが始まった―
「全門閉鎖を継続。まだ破られていません。が、空を翔ぶのが何種か。魔術部隊と、弓をそれぞれ分散して配置させてます」
城塞を取り囲む魔物の大群、大攻勢が始まった。既に丸一日続いた攻勢、数は多いが、ヴィアンカ達の働きで事前に入手できた情報もある。時間はかかるが、殲滅は可能だろう。
「門を破壊するような大型が出てくるまでは、今の形での出撃と撤退を繰り返す。休めるやつは、今のうちに休ませとけ」
「了解。あと一日くらいはぶっ通しで回せるように組んどきます。ただ、余裕は無いんで、」
「!!っ何だ!?」
ダグストアの報告の途中、地面が揺れた。駆け寄る窓の外、見えたのは、城壁の内、強制転移で送りこまれたか―
「ゴーレム!!」
「ミスリルゴーレムです!」
「くそっ!」
窓から飛び降り、部下二人を連れてゴーレムの表れた場所、中庭へと走り出す。やつの動きを止めなければ、内から崩されてしまう。風魔法による補助を使って加速する。あと少し―
「ヴィアンカ!?」
たどり着いた先、巨大なゴーレムの一撃を止める小さな姿。胆が冷えたが、恐らく身体を強化しているヴィアンカは、ゴーレムの拳を掴んでその体を転がした。
大きな地響きを立てて、横たわるゴーレム。まだ動きを止めてはいない。機動力に欠ける巨体が起き上がろうともがいている。
「ヴィアンカ様!あそこ!」
ヴィアンカに駆け寄った補佐官達の一人が空間を差して、叫んだ。
「また来る!」
その声が聞こえるや否や、空間が歪み、銀色に輝く巨体がまた一つ現れた。
「ゴーレムの背後!他にもいます!っ!シャドウウルフ!」
ゴーレムの影から現れたのは、警戒していたシャドウウルフ、それが三体。それを認めて、物影へと身を隠す。
「マイワット!バーデを呼べ!」
「は!」
短い返事で、マイワットが駆け出す。
「ラギアス!」
身を隠した場所、魔物達を警戒しながらヴィアンカ達が近づき、隣へと身を滑らす。
「ミスリルゴーレムがシャドウウルフの盾だ。先に奴等を叩く。魔法が通じないのが面倒だが、とにかく削ろう」
「俺達が新しい方を。お前らは、さっきの、」
「!?っ!」
城壁の遥か彼方、遠望の空を焼く、突然の巨大な魔力の出現。城壁を囲む魔物とは一線を画す、その質量に、予感がする。
「魔人か!?」
城内の魔物だけではなく、桁違いの化け物の出現。これは、覚悟を決めねば―
「ヴィアンカ様!」
逼迫した状況に、背後から恐慌をきたした女の叫びが響く。
「ヴィアンカ様!あれ!あれ!ヤバイ奴!前のみたいな!」
足をもつれさせ、転がるようにして現れたのは、ヴィアンカの協力者。震えながら、女の指差す先には禍々しいほどの魔の力―
「わかった。フラン、お前は安全な場所へ」
ガクガクと頷いた女は、来た道へと走り出す。見送ったヴィアンカが振り返り―
「ラギアス」
重なる視線に、震えが走る。その強さに、覚悟を見て。何を、言い出すつもりだ。
「…私達が魔人を叩きに行く」
「っダメだ!」
考える間もなく、口から言葉が飛び出す。絶対に、ダメだ!
「出現したのは魔石鉱山の辺り。魔人はこちらを誘っている。放っておくわけにはいかないだろう?元から、魔人が出たら私達が動く予定だったはずだ」
「ダメだ!俺が!」
お前は行かせない!
「それこそ駄目だ。状況を判断しろ。…時間が惜しい。行く」
「待て!」
既に背を向けたその姿を呼び止める。振り返らない女に、
―ダメだ!俺はまだ、お前に何も
「死ぬな!」
走り去る背に、乞う。
「ホーン!ヘインズ!頼む!死なすな!!守れ!」
ヴィアンカを追う2つの背に託す。祈るしか、頼るしか無い己の代わりに、どうか―
控える副官を振り返る。案じる視線に、一瞬でも、己の立場を捨ててしまいたいと思った不明を恥じる。
「すまん…バーデ達が来るまでに、ゴーレムを削っておく。無茶はするな」
指示を出し、未だ転がった巨体へと駆け出す。こいつらを倒し、城の周りのやつらも倒す。そして、一刻も早く彼女の元へ。あいつを、ヴィアンカを死なせはしない。
深夜の鍛練場での稽古を何度か重ねるうちに、ヴィアンカの『強さ』が見えてきた。攻撃は軽いが、当たりは正確、確実に急所を狙ってくる。
これに身体強化をのせれば、一撃必中も可能だろう。たまに、強化された攻撃を放たれては、本気でヒヤリとした。
そうやって、何度かの交流で彼女を少しずつ知るうちに、ついにそれが始まった―
「全門閉鎖を継続。まだ破られていません。が、空を翔ぶのが何種か。魔術部隊と、弓をそれぞれ分散して配置させてます」
城塞を取り囲む魔物の大群、大攻勢が始まった。既に丸一日続いた攻勢、数は多いが、ヴィアンカ達の働きで事前に入手できた情報もある。時間はかかるが、殲滅は可能だろう。
「門を破壊するような大型が出てくるまでは、今の形での出撃と撤退を繰り返す。休めるやつは、今のうちに休ませとけ」
「了解。あと一日くらいはぶっ通しで回せるように組んどきます。ただ、余裕は無いんで、」
「!!っ何だ!?」
ダグストアの報告の途中、地面が揺れた。駆け寄る窓の外、見えたのは、城壁の内、強制転移で送りこまれたか―
「ゴーレム!!」
「ミスリルゴーレムです!」
「くそっ!」
窓から飛び降り、部下二人を連れてゴーレムの表れた場所、中庭へと走り出す。やつの動きを止めなければ、内から崩されてしまう。風魔法による補助を使って加速する。あと少し―
「ヴィアンカ!?」
たどり着いた先、巨大なゴーレムの一撃を止める小さな姿。胆が冷えたが、恐らく身体を強化しているヴィアンカは、ゴーレムの拳を掴んでその体を転がした。
大きな地響きを立てて、横たわるゴーレム。まだ動きを止めてはいない。機動力に欠ける巨体が起き上がろうともがいている。
「ヴィアンカ様!あそこ!」
ヴィアンカに駆け寄った補佐官達の一人が空間を差して、叫んだ。
「また来る!」
その声が聞こえるや否や、空間が歪み、銀色に輝く巨体がまた一つ現れた。
「ゴーレムの背後!他にもいます!っ!シャドウウルフ!」
ゴーレムの影から現れたのは、警戒していたシャドウウルフ、それが三体。それを認めて、物影へと身を隠す。
「マイワット!バーデを呼べ!」
「は!」
短い返事で、マイワットが駆け出す。
「ラギアス!」
身を隠した場所、魔物達を警戒しながらヴィアンカ達が近づき、隣へと身を滑らす。
「ミスリルゴーレムがシャドウウルフの盾だ。先に奴等を叩く。魔法が通じないのが面倒だが、とにかく削ろう」
「俺達が新しい方を。お前らは、さっきの、」
「!?っ!」
城壁の遥か彼方、遠望の空を焼く、突然の巨大な魔力の出現。城壁を囲む魔物とは一線を画す、その質量に、予感がする。
「魔人か!?」
城内の魔物だけではなく、桁違いの化け物の出現。これは、覚悟を決めねば―
「ヴィアンカ様!」
逼迫した状況に、背後から恐慌をきたした女の叫びが響く。
「ヴィアンカ様!あれ!あれ!ヤバイ奴!前のみたいな!」
足をもつれさせ、転がるようにして現れたのは、ヴィアンカの協力者。震えながら、女の指差す先には禍々しいほどの魔の力―
「わかった。フラン、お前は安全な場所へ」
ガクガクと頷いた女は、来た道へと走り出す。見送ったヴィアンカが振り返り―
「ラギアス」
重なる視線に、震えが走る。その強さに、覚悟を見て。何を、言い出すつもりだ。
「…私達が魔人を叩きに行く」
「っダメだ!」
考える間もなく、口から言葉が飛び出す。絶対に、ダメだ!
「出現したのは魔石鉱山の辺り。魔人はこちらを誘っている。放っておくわけにはいかないだろう?元から、魔人が出たら私達が動く予定だったはずだ」
「ダメだ!俺が!」
お前は行かせない!
「それこそ駄目だ。状況を判断しろ。…時間が惜しい。行く」
「待て!」
既に背を向けたその姿を呼び止める。振り返らない女に、
―ダメだ!俺はまだ、お前に何も
「死ぬな!」
走り去る背に、乞う。
「ホーン!ヘインズ!頼む!死なすな!!守れ!」
ヴィアンカを追う2つの背に託す。祈るしか、頼るしか無い己の代わりに、どうか―
控える副官を振り返る。案じる視線に、一瞬でも、己の立場を捨ててしまいたいと思った不明を恥じる。
「すまん…バーデ達が来るまでに、ゴーレムを削っておく。無茶はするな」
指示を出し、未だ転がった巨体へと駆け出す。こいつらを倒し、城の周りのやつらも倒す。そして、一刻も早く彼女の元へ。あいつを、ヴィアンカを死なせはしない。
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