16 / 102
2・依頼人④小野寺瑛二
二次会会場
しおりを挟む
「神崎さぁーん、ありがとうございましたぁ!!」
披露宴終了後、片付けを始める前に三田ちゃんから声をかけられた。
「神崎さん、俺も、本当に助かりました。割っちゃってパニクったし」
「いいよいいよ、俺こそ仕切っちゃってごめんね」
「バイトリーダー爆誕だなッ」
と一ノ瀬が俺の肩を抱いて言った。
「ほんと、バイトリーダーだったわー。また働かないかな」
と一ノ瀬の彼女さんが言った。
「考えときます、ありがとうございます」
一服した時任さんたち社員が戻ってきたので、俺は勝手に動いたことを謝罪すると、
「いやいや、こちらこそ助かったよ。このあと上の階で二次会あるんだけど、もし良かったらそっちにも入らない?」
と声をかけてくれた。
一ノ瀬くんも、と言われたので、2人で二次会会場のスタッフをすることにした。一ノ瀬には先に行ってもらい、俺は少し片付けを手伝った。
時任さんに案内され二次会会場へ向かうと、すでにビンゴゲームが始まっていた。
一ノ瀬の姿は見えず、社員の遠山さんが大きなホワイトボードにビンゴで出た番号を30個ほど書いていっていた。幹事らしき女性は、ドンキに売ってそうなおもちゃのビンゴマシーンをくるくると回していた。
「遠山さん、代わります」
「おー、来たか。一ノ瀬くん戻るまで、バーの方入ってくれる?」
「はい」
披露宴会場より小振りのドリンクバーが設置され、すでにゲストが勝手に作って飲んでる状態だった。
「失礼します、」
と言って酔っ払ったゲストの間に入り込んだ。
「神崎くーん、待ってたよ♡ モスコミュール作れる?」
「カシオレとカンパリと、あとカルーアミルクしか作れないです~、少し待ってもらえますか?」
とにこりとしてお姉さんに謝る。
「いーよ♡ 涼くんもいいけど、あたし神崎くん好きかもー♡」
甘い香りのするお姉さんに、チュ、とされた。
━━━よ、酔っぱらい、恐るべし……。
ケントさんは……いないようだ。良かった、見られなくて。
顔がひきつりそうになりながら、汚れたグラスをひっくり返してケースに入れていく。
そうこうしていると遠山さんが戻ってきたので、俺はカクテルの作り方を教わることにした。
「モスコミュールは……」
ふむふむ、と一応メモ帳に書きながら材料を覚えていった。
「あ゛ー!! 田中ぁ!! もうっ!! 」
と大きな声が響いたので、ビンゴゲームの方へ行くと、一ノ瀬が酔っぱらい(田中さんかと思われる)に絡まれていた。
「なんだよ~一ノ瀬~、オレのカード、ビンゴじゃないのぉ」
「もー、ズルするのやめなよ~」
「また涼くんに絡んでるね……」
どうやら酔っぱらった男のゲストが、今までに出た番号の玉を隠し、ホワイトボードを強引に消してしまったようだ。
周りの女性は呆れている。
一ノ瀬は俺に気付き、
「あまねー、頼む」
と言ったので、俺はペンを受け取ってホワイトボードに番号を書いてやった。
「え?」
「24のあと、6、35が出た」
と一ノ瀬が補足したので最後に6と35を付け加えた。
「え? え? 神崎くん、出た番号全部覚えてたのー?」
「あー、はい」
キャー、とゲストから歓声を受けた。
俺は少し照れた。
「えーと、お兄さんのカードをちょっと拝見しますねー、あ、まだ揃ってないみたいですねっでもまだ景品沢山残ってるから大丈夫っすよ~」
と一ノ瀬が酔っぱらいに言った。
田中さんは「ちっ」と舌打ちし、一ノ瀬のそばから離れて部屋を出て行った。
田中さんを見送った先にはケントさんがいつの間にかいて、目が合った。
━━━見られたのかな。
俺はまた、恥ずかしくなった。
披露宴終了後、片付けを始める前に三田ちゃんから声をかけられた。
「神崎さん、俺も、本当に助かりました。割っちゃってパニクったし」
「いいよいいよ、俺こそ仕切っちゃってごめんね」
「バイトリーダー爆誕だなッ」
と一ノ瀬が俺の肩を抱いて言った。
「ほんと、バイトリーダーだったわー。また働かないかな」
と一ノ瀬の彼女さんが言った。
「考えときます、ありがとうございます」
一服した時任さんたち社員が戻ってきたので、俺は勝手に動いたことを謝罪すると、
「いやいや、こちらこそ助かったよ。このあと上の階で二次会あるんだけど、もし良かったらそっちにも入らない?」
と声をかけてくれた。
一ノ瀬くんも、と言われたので、2人で二次会会場のスタッフをすることにした。一ノ瀬には先に行ってもらい、俺は少し片付けを手伝った。
時任さんに案内され二次会会場へ向かうと、すでにビンゴゲームが始まっていた。
一ノ瀬の姿は見えず、社員の遠山さんが大きなホワイトボードにビンゴで出た番号を30個ほど書いていっていた。幹事らしき女性は、ドンキに売ってそうなおもちゃのビンゴマシーンをくるくると回していた。
「遠山さん、代わります」
「おー、来たか。一ノ瀬くん戻るまで、バーの方入ってくれる?」
「はい」
披露宴会場より小振りのドリンクバーが設置され、すでにゲストが勝手に作って飲んでる状態だった。
「失礼します、」
と言って酔っ払ったゲストの間に入り込んだ。
「神崎くーん、待ってたよ♡ モスコミュール作れる?」
「カシオレとカンパリと、あとカルーアミルクしか作れないです~、少し待ってもらえますか?」
とにこりとしてお姉さんに謝る。
「いーよ♡ 涼くんもいいけど、あたし神崎くん好きかもー♡」
甘い香りのするお姉さんに、チュ、とされた。
━━━よ、酔っぱらい、恐るべし……。
ケントさんは……いないようだ。良かった、見られなくて。
顔がひきつりそうになりながら、汚れたグラスをひっくり返してケースに入れていく。
そうこうしていると遠山さんが戻ってきたので、俺はカクテルの作り方を教わることにした。
「モスコミュールは……」
ふむふむ、と一応メモ帳に書きながら材料を覚えていった。
「あ゛ー!! 田中ぁ!! もうっ!! 」
と大きな声が響いたので、ビンゴゲームの方へ行くと、一ノ瀬が酔っぱらい(田中さんかと思われる)に絡まれていた。
「なんだよ~一ノ瀬~、オレのカード、ビンゴじゃないのぉ」
「もー、ズルするのやめなよ~」
「また涼くんに絡んでるね……」
どうやら酔っぱらった男のゲストが、今までに出た番号の玉を隠し、ホワイトボードを強引に消してしまったようだ。
周りの女性は呆れている。
一ノ瀬は俺に気付き、
「あまねー、頼む」
と言ったので、俺はペンを受け取ってホワイトボードに番号を書いてやった。
「え?」
「24のあと、6、35が出た」
と一ノ瀬が補足したので最後に6と35を付け加えた。
「え? え? 神崎くん、出た番号全部覚えてたのー?」
「あー、はい」
キャー、とゲストから歓声を受けた。
俺は少し照れた。
「えーと、お兄さんのカードをちょっと拝見しますねー、あ、まだ揃ってないみたいですねっでもまだ景品沢山残ってるから大丈夫っすよ~」
と一ノ瀬が酔っぱらいに言った。
田中さんは「ちっ」と舌打ちし、一ノ瀬のそばから離れて部屋を出て行った。
田中さんを見送った先にはケントさんがいつの間にかいて、目が合った。
━━━見られたのかな。
俺はまた、恥ずかしくなった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
37
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる