出逢えた幸せ

ずーちゃ

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Extra2:Moonlight scandal

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 だけど、月に見惚れていたのは、ほんの一瞬。

 もう息が限界だったんだ。

 俺は透さんの腕から抜け出して、水面を目指して腕を伸ばした。月の形を水流と泡で掻き消して、勢いよく水中から顔を出す。

 派手な水音を立てさせてしまったかもしれない。

「ケホッ! ケホッ!」

 ヒューッと息を吸い込んだ瞬間、我慢出来ずに思わず咳込んでしまう。

 我慢しようとすればするほど、咳が止まらない。

「大丈夫?」

 プールの縁に掴まって咳き込んでいいると、静かに水面に顔を出した透さんが、背中をさすってくれた。

「はぁ、はぁ……、うーっ、死ぬかと思った」

 声をひそめて喋るのも、息が上がって途切れ途切れになってしまう。

「ごめんね、無理させちゃって」

 透さんも少し息が上がってるけど、俺ほどじゃない。息を整えながら、飛び込み台の影からそっと入口の方をうかがっている。

「もう、誰もいないみたいだよ」

 透さんの言葉に、俺ば心底ホッとした。

「良かったぁー、見つからなくて」

「ちょっと、ドキドキしちゃったね」

 俺は、本当に生きた心地がしなかったのに、透さんはなんだか楽しそう。

 でも、何でもないように笑ってるけど、透さんだって内心はきっと俺以上に焦ってたんだと思う。いつだって、そうやって、俺を気遣ってくれるんだ。

 だけど、俺だって……。


***


「直くん、大丈夫? 寒くない?」

 今は、透さんのマンションへ帰る車の中。

 透さんは運転しながら、助手席で濡れた髪をタオルで拭いている俺に、チラッと視線を向ける。

「うん、大丈夫」

 あの後プールから上がって、濡れたままでは服を着る事も出来ないし、どうしようかと思ってたら、入り口近くにあった建物の鍵が開いていて、透さんは中の更衣室から置いてあったタオルを2枚持ち出してきた。水泳部が、いつも常備している予備のタオルらしいんだけど……。

「今でも時々練習を見に来てるから、また後日返しに来たら良いんだし、大丈夫だよ」って、透さんは言ってたけど……。

 学校に不法侵入した上に、泥棒みたいな真似までさせてしまって、俺がプールで泳ぎたいと言ったばかりに、透さんに無理させているんじゃないかって後悔していた。

 それなのに「さっきから黙り込んで、どうかした?」って、俺の心配ばかりしてる。

「ううん、何でもないよ」

 さっき透さんのお父さんに会って話をして、心に決めたばかりだったのに。

 ――俺だって、透さんを守ってあげれるように、もっと大人になりたい。

 でも、自分の行動を振り返ってみると、やっぱり俺ばかりが透さんの優しさに甘えてしまってる。
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