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第9話

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俺たちの結婚式は盛大に行われるべきだが、そこで予算という現実の問題が立ちふさがってしまった。
無いものは無いのだから、それをどうすべきか父上と協議している。
協議というか説得のようなものかもしれない。

「ですからみすぼらしい結婚式ではロスコーラー子爵家が侮られることになります。それにヴァローナを蔑ろにしているとバードナー男爵にいらぬ誤解を与えることにもなってしまいます」
「確かにそうだな。だが予算が無いことにはどうにもなるまい」
「そこで臨時徴税です。俺の結婚式は領民も祝って当然ですし、そのためにいくらか税を取っても喜んでくれるでしょう」
「ふむ…」

父上は少しの間、考え込んだ。

「よし、臨時徴税を行う。やはり他家に侮られるようではいかないからな」
「さすがです、父上」

これでヴァローナも喜んでくれるだろうしバードナー男爵も俺をもっと高く評価するに違いない。
領民も喜び経済も活発になるだろう。

* * * * * * * * * *

予算の目途も立ったが、今度は招待状を送った貴族たちからお断りの手紙が届くようになった。
それも複数で、揃いも揃ってお断りだ。
このままお断りの手紙が届き続けるとは思えないが……。

だがこんな状況でもヴァローナは違った。

「別に誰が参加するかなんて関係ないよ。私たちが幸せなら、それでいいじゃない」
「そうだな、その通りだよ」
「それに幸せそうな私たちを見たらショックを受けるかもしれないし。余計なトラブルが起きなくて好都合じゃない」
「その通りだ。人は嫉妬すると何をするかわからないからな。せっかくのヴァローナとの結婚式を台無しにされる訳にはいかないからな」

そう言ってから思ったが、もしかしたらこれもルミーネ……フィルド伯爵家が何かしたのかもしれない。
嫌がらせの一環で招待客たちに圧力をかけたに違いない。
あれでも伯爵家だから他の貴族家への影響力がある。
ロスコーラー子爵家にしてもバードナー男爵家にしてもフィルド伯爵家に比べれば弱い存在だ。
強い者に従う情けない貴族どもに祝ってもらったところで嬉しくはない。

「幸せなのかは私たちが決めるのよ」
「本当にそうだな」
「でもせっかくの招待を断ったことは忘れてはいけないわ」
「ああ」

参加しなかった貴族たちは潜在的にロスコーラー子爵家の敵ということだ。
この結婚式は誰が俺たちの味方なのか敵なのかを判別する切っ掛けにもなる。
否応なく状況は変わっていく。

だがヴァローナとならば、どんな困難だって乗り越えられると信じている。
原因不明の病気すら治してしまった俺たちの真実の愛の前には不可能はない。

* * * * * * * * * *

そして迎えた結婚式。
参加者はロスコーラー子爵家の関係者とバードナー男爵家の関係者ばかり。
俺たちを祝ってくれる参加者に恵まれたのだから数は問題ではない。

「一生変わらぬ愛を誓うよ、ヴァローナ」
「嬉しいわ。私もよ、フロイデン」

こうして俺たちは結婚できた。
思い返せば困難だらけだった。

ルミーネとの望まない政略結婚のための婚約。
ルミーネからヴァローナへの嫌がらせ。
俺からルミーネへの婚約破棄。
ヴァローナへの愛が原因不明の病気を治した奇跡。
紆余曲折あったが実現できたヴァローナとの婚約。

だがそれらを乗り越え俺はヴァローナと結婚できた。
俺の人生は最高に幸せだ。
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