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第5章 ストラトス帝国編

集結

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 「ごめんねグラニール…あと少しだけ…がんばってくれるかい?」

 「グルワァ…」

 「ありがとう…これから向かう先にはの親友と…家族がいるんだ…」

 「こっちの世界?リネア以外にもいるの?ジルネイ?ドラニスタ?まさか!結婚しちゃった!?」

 「えっ!?結婚!?してないよっ!?」

 悲痛なかおもちをしたセナの呟きをききアリアが焦りながら訪ねると、セナは思わぬ方向へ解釈したアリアに驚きを隠せなかった。

 それからグラニールは飛び続け疲労もあり予定より遅れ日が西に傾きはじめた頃、マルンの街を目視できるところまできた。

 「セナ様マルンでございます。そろそろ高度をさげましょう」

 「そうだね!グラニール少しずつ降りて行ってくれるかい?」

 セナたちはいらぬ混乱を招かぬよう雲の上を飛ぶことにしていたため高度をさげる行動にうつった。

 「ん!?」

 「これは急がねばならぬようでございますな」

 高度をさげながら進む中、セナが何かを感じ取ると、少し遅れてヤオとタオも感じ取ったようで目を細め少し落ち着かない様子を見せた。

 ドーーン!
 バーーン!

 「グラニール!急いで!!皆も準備を!」

 激しい爆発音や炸裂音に交じり多数の人の声がきこえセナは焦ったように声を荒らげた。

 「ギルス様!このまま後退し続ければマルンに被害が!」

 「くそっ!数で押される!ひるむなぁ!」

 西から攻めてきていたシュバイン兵に数で圧倒され押されマルンが見える位置までずるずると後退してきたギルス率いる軍が苦戦していた。また北側に進軍したセルジオ軍もスタンピードに押されじわじわとマルンの近くへ後退を余儀なくされていた。

 「騎士だけではなく、盗賊や冒険者くずれ…奴隷までおるとは!」

 「ガルハルト!今は泣き言を言ってる場合ではない!陣形を立て直し押しとどめるぞ!」

 「はっ!」

 ガルハルトが敵兵をみて苦々しい顔を浮かべる中、ギルスは歯を食いしばり先陣を切ろうとしていた。

 「エミル様!大変でございます!」

 「セバス?どうしたのです!?慌てて!まさか街に侵入されましたかっ!?」

 「い、いえ!まだギルス様が押さえておられますがっ!」

 「ならなんなのです?」

 「王都の方角の上空より巨大龍がこちらへ向かって!」

 「なんですってぇ!?王都はどうなったのですかっ!?まさか!あの下衆豚の手引きでは!?こうなっては!仕方ありません!皆で街をまもりましょう!」

 マルンのギルス邸で戦いの報告を逐一報告させていたエミルは、いつものドレス姿ではなくパンツスタイルに胸当てをつけていて執事のセバスの言葉を聞きレイピアを腰にさし邸宅をでて町の広場へ屋敷中の人たちを引き連れ向かった。
 なおレイファを含め数名のメイドはメイリーを守るためギルス邸の地下倉庫へ避難していた。

 「エミル様!あれでございます!」

 「あ…あぁ…あのようなものを…どうやって…」

 セバスが上空を指さしエミルをはじめ、その場にいたすべての人が上空をみあげた。そして、グラニールをみたエミルは諦めたように絶望したようにその場にへたりこんでしまった。

 「エミル様をお守りしろ!」

 「龍の口が!ブ!ブレスがきます!」

 「あぁ…あなた…メイリー…みなさんごめんなさい…無力な私をゆるして…」

 セバスがエミルの前に立ち両手をひろげるなか、槍をもったメイドがグラニールの口にあつまる光をみて叫ぶと、エミルは涙をうかべ祈るように目をつぶった。

 「グルワァァァァ!!!」

 グラニールが咆哮と共にブレスを吐くとまばゆい光と熱が大気を揺るがし一直線にマルンの北から西へと一筆書きのように吐き出された。

 ドーーーン!!

 「なっ!なんだ!?あれは龍だと!?裏をとられたのか!?街は!?エミルは!?」

 「い、いえ!街はまだ無事…え?龍の背にブレイダーの旗が?…あれは!!!ギルス様!援軍です!!」

 「なに!?」

 「セ…セナ様がっ!龍の背で旗を振っておられます!!」

 「なんだと!?」

 爆発的な熱量と光量をまとったブレスの一撃が飛んできて、ギルス軍のすぐ先のシュバイン兵ならびに北側ではセルジオ軍に襲い掛かっていた魔物たちを20メートルほどの幅で吹き飛ばした。

 また、ギルスが驚く中、斥候を務めている兵が望遠鏡のようなものでグラニールの背にいるセナが、王都を出るさいギルスより賜ったブレイダーの紋章がはいった旗をグラニールの背でたかだかと掲げ振っていたことを確認すると目に涙をうかべ感激したように報告した。
 それと同時にセルジオ軍もセナを確認していた。

 「敵の進軍が止まりました!」
 
 「よし!今のうちに一度マルンに退避だ!セルジオ殿の軍にもつたえよ!」

 グラニールのブレスで深々とえぐれた地面をみて、いち早く我をとりもどしたギルスが一時撤退を指示すると魔法師が上空に赤と黄色の魔法をうちあげ撤退の合図をした。

 「ひぃ!あぁ…私は死んだの…?」

 「エミル様ぁ!?セバスさぁーん!街の皆さんも!驚かせてしまってすいませーーん!」

 「あぁ…遠くでセナ様の声が聞こえますわぁ…」

 「エミル様?セナ様がきてくださいましたよ!もう大丈夫でございます!」

 「えぇ…そうね…最後にセナ様のお声をきかせてくださり神に感謝しますわ」

 いまだ目をつぶるエミルにセバスが嬉しそうにエミルの肩を揺らしながらグラニールの背から顔を出している
セナを指さしながら伝えた。

 「奥様!エミル様!ほんとうにセナ様がお越しになられたのです!」

 「えっ!?あっ!あぁー!セナ様!なぜ!?帝国にいたのでは!?」

 肩を激しく揺さぶられ目をあけ上をみあげたエミルは申し訳なさそうな顔をしているセナをみると感激と驚きがまじり混乱した。

 「詳しい話はのちほど!では行ってきます!」

 「は…はい!おきをつけて!?」

 セナがエミルの言葉を遮り気味にいうとエミルは戸惑いながらもセナを送り出した。

 「グラニール!街の外におりよう!ヤオさん、タオさん準備を、アリアはグラニールに乗っていて、危なくなったら飛んでくれる」

 「御意!」

 「かしこまりました」

 「う…うん」

 セナの指示に全員が頷き緊張感が増した。

 ドン!

 「グルルルルワーーーー!!」

 街を背にする形でグラニールが地面に降り立ち翼を広げ周囲が揺れるほどの咆哮をあげた。
 その咆哮をきいたスタンピードの魔物や敵兵はグラニールと自身の強さの差を本能が理解したのか恐怖を覚え足がすくんで一時的に動けなくなった。

 「と…とまった?セルジオ様!スタンピードが止まりました!」

 「う…うむ!今のうちに一度さがって陣形を立て直すぞ!」

 それをみたセルジオたちも一気に後退しマルンの外壁の前へと戻り同じように後退してきたギルスたちと合流した。

 「セナ殿!なぜここに!?」

 「あっ!ギルス様ご無沙汰しておりました」

 「う…うむ。元気そうでなによ…いや!今はそんなことを言って居る場合ではない!帝国にいたのではないのかっ!?」

 マルンの前まで後退しセナと合流したギルスがセナへと駆け寄った。

 「こちらが狙われていると聞きグラニールで…あぁこの子は僕の新しい家族みたいなものでグラニールと申します、驚かせてしまってすみません」

 「い、いや…驚いたが…助かった」

 セナがあまりにもいつもどおりなので毒気をぬかれたようになったギルスがグラニールを見上げながら礼をした。

 「みごとな龍ですな」

 「あ!セルジオ様もご無事でなによりです」

 「ふふっセナ殿とこのグラニール殿のおかげだ…すまんな」

 そこへセルジオが笑顔で合流し現状とその場の雰囲気が微妙にずれているように周囲からは見えていた。

 「あなた!叔父様!無事ですの!?」

 「エミル!?なぜ出てきた!ここは危険だ!戻れ!」

 そして街の中からセバスを引き連れエミルが駆け寄っていた。

 「エミル様、セバスさん。先ほどは驚かせてしまって申し訳ありませんでした。あの…大丈夫でしたか?」

 「えぇ!セナ様あぶなく粗相を…いえ!驚きましたが大丈夫でしたわ!」

 「そ…そうですか」

 セナが申し訳なさそうに尋ねると一度股間をあたりを押さえたエミルが、まったくごまかせてはいないがごまかそうと空元気のようなものでごまかした。

 「セナ様迅風殿の準備が整いました」

 「ありがとうございます!ヤオさん」

 セナがブレイダーの面々と話をしているとヤオが馬具をつけた迅風を引き現れた。

 「なっ!?そなたらは双爪!なぜここに!?」

 「久方ぶりでございます。王国の剣」

 「我らは今、セナ様の従者ゆえ付き従うのは当然かと」

 「なっ!?ドラゴニアの双爪が従者!?ほんとうか!?セナ殿!」

 「え?あぁはい。色々ありまして…お二人には色々助けてもらってます」

 「もったいなきお言葉」

 血相がかわるほど驚くギルスにセナは後頭部をかきながら照れたようにこたえた。

 「やっとおりれた…グラニールありがと…セナ!おいていくなんてひどいよ!」

 「歌姫殿まで!?」

 「あ、ご無沙汰しております」

 「まぁ!アリアちゃん!無事でしたのね!」

 「はい!皆が!セナが!たすけてくれました!!」

 グラニールの背に置いてけぼりをくらったアリアがグラニールの力をかりやっと地面におりたつとエミルは嬉しそうにアリアを抱擁した。

 「ごめんごめん」

 「まぁめずらしく血相変えて急いでたから…しかたないけど…」

 「ほう?」

 「帝国より3日半不眠不休で飛んでおりましたからな」

 「なんと!?」

 「セナ様!?お身体は大丈夫ですの!?」

 アリアとヤオの言葉にギルスが驚き、エミルがペタペタとセナの顔を触りながら心配し始めた。

 「大丈夫ですよ?僕と迅風は休み休みこれたので、ただグラニールが心配で…」

 「まぁ!このみごとな龍はグラニールさまとおっしゃるの?先ほどは我が夫と叔父をおたすけいただき感謝いたしますわ!」

 セナが優しくグラニールをなで心配する中、エミルは目を輝かせながらグラニールに深々と一礼した。

 「さすがブレイダーでございますな」

 「ええ。グラニール殿のすごさを素直にみとめる器はさすがですわ」

 それをみたヤオとタオが感心したようにエミルをみていた。

 「うらやましいなぁ…私も…おじい様たちに会いたくなっちゃった」

 「え?ごめん!アリア…もしあれなら王都へ先に送ろうか?」

 「んーん。ごめん!大丈夫!せっかくセナが家族を守るって急いでたし終わってからで大丈夫!」

 アリアのつぶやきに気づいたセナがたずねるがアリアは笑顔で顔をふった。

 「家族?」

 「はい!」

 「アリア!ちょっと!?」

 「セナが大事な家族と親友がいる!ってずっと頑張って急いできたんです!」

 ギルスがアリアの言葉に疑問をいだくと、アリアはいたずらっ子のような顔をし、ニヤつきながらセナをみて答えた。

 「まぁ!セナ様ったら!!」

 「ふっふっふセナ様らしいな」

 「いや…おこがましいかと思いましたが…ここまで世話になって家族だとまで言ってもらえてたのに…大変な時に顔を出さないのも…あれかなぁと…」

 「セナ殿!」

 「ぐわっ!?」

 アリアの言葉をきき、エミルが満面の笑みを浮かべ、セルジオがあごひげをなでながら満足そうに頷く中、セナの言葉を聞きギルスが感極まってセナへ抱きついた。

 「コホンっ!家族全員がそろいましたし!」

 「あぁ!」

 「うむ!本当のブレイダーの戦をみせてやる!」

 エミルが咳ばらいをしセルジオ、セナ、ギルスとみたあと声を上げ、セルジオが笑顔で頷き、ギルスが刃こぼれした剣を掲げ言った。

 「はい!」

 「ヒヒーーーン!!」

 「グルルルルワーーーー!!!」

  
 ギルスたちの言葉にセナが返事をすると、迅風は風の魔力をたちあげ、グラニールは翼を広げ天に向かい咆哮をあげた。

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