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第5章 ストラトス帝国編

普通とは

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 「グラニールあそこで降りよう」

 「グルワァ」

 「なっ!?龍だっ!巨大龍が襲来したぞ!!」

 「ん?…落ち着け!背中に旗が…あれはブレイダー家の紋章だ!」

 セナは自身のマジックバッグからブレイダー家の旗を取り出し下から見える様に掲げリストニアの門の手前でグラニールを着地させた。

 「驚かせてすいません」

 「セナ殿!驚かせないでくださいよ…久しぶりですな、お元気そうで何よりです」

 グラニールから急いで降りて駆け寄ってくる騎士たちに声をかけるとセナだとわかった騎士たちが安堵の息を吐き笑顔で答えた。

 「お久しぶりです。皆さんも元気そうでよかった」

 「それで…その巨大な龍は?」

 「あぁこの子はグラニールといって僕の新しい家族です」

 「グルワァ」

 「なっ!?家族!?」

 「落ち着け…気にしたら負けだ…セナ殿だぞ?」

 「あ…あぁ…そうだな…セナ殿だもんな」

 セナの言葉を聞き驚いた騎士の肩をもう一人の騎士が優しくたたきあきらめの境地のような目で諭すように言うと
落ち着きを取り戻した騎士が納得し同じような目で頷いた。

 「セナ様の日頃を聞くのが怖いですわ…」

 「従者たるもの、待っているのが恐怖であろうとも主のことならば聞かねばなるまいて」

 「いやいや!僕は普通に冒険者として生活していただけですよ!?」

 「あれが普通…普通ってなんだろうな…」

 「やめろ考えるな…」

 タオとヤオのやりとりに心外だとばかりに返したセナの言葉を聞き騎士たちは目線をそらし言葉を紡いだ。

 「と…とりあえずこれが僕たちの身分証です。中に入ってもいいですか」

 「セナ殿は必要ありませんって…それでセナ殿このお美しいお二人は?」

 「申し遅れましたわ。我らはセナ様に生涯忠誠を誓った従者、私はタオと申しますわ」

 「ヤオにございます」

 3人で身分証を呈示しそれを確認する騎士がヤオとタオの言葉をきき驚いた。

 「セナ殿に生涯の忠誠…あれほどの美人2人にそこまで言わせるってセナ殿はなにをやらかしたんだ?」

 「馬鹿か?セナ殿だぞ?我々が考えつくようなのことをやるわけないだろ」

 ヒソヒソと話す騎士たちの言葉でセナはなんて答えていいのかわからず気まずくなり作り笑いを浮かべいそいそと門をくぐりリストニアへと入った。

 「えっと…まず冒険者ギルドへ向かいましょう」

 「御意」

 気まずさをごまかすように少し元気にいったセナの言葉に二人が一礼し歩き始めた。

 「あれ!?セナ様じゃねぇですかっ!いつお戻りになったんで?」

 「あぁ!セナ様!ごぶさたしております!」

 「セナ様!お元気そうでなによりです!」

 「おぉ!?セナ様ぁ!あとで店によってくださいよー!」

 「うわぁ!セナ様だー!!」

 ギルドまでの道すがらセナをみた街の人々が老若男女問わず驚きながらも満面の笑みでセナに声をかけ、セナも笑顔で答えて歩くのをヤオとタオはどこか不思議そうに羨ましそうに見ながら後に続いた。

 「着きましたよ。こっちです」

 ギルドの前についてセナは二人に笑顔でいうとドアを開き入っていった。

 「おい!あれって!」

 「お…おぉ…」

 ギルド内にはいるとセナをみた元から拠点としていた冒険者たちが驚きながらもセナを見る中、セナは受付へといった。

 「ご無沙汰しております」

 「はい?って!あぁ!セナ様!?いつお戻りで!?」

 「たった今です。あの申し訳ないんですがマスターはいらっしゃいますか?」

 受付に声をかけるとセナをみた受付嬢が驚きすぎて、叫ぶようにいいながら立ち上がった。

 「あ…すいません…マスターのサイスはまだ帝国より戻っておりません」

 「そうですか…んー」

 「マスター代行のオリファをおよび致しましょうか?」

 「オリファさんが代行なんですか?お願いします」

 セナの言葉を聞き受付嬢は急いで二階へと向かった。

 「セナ様いつこちらに戻ってきたんですか?」

 「ん?お久しぶりです。さっきですまっすぐギルドに来たんですよ」

 リストニアで古参にはいる冒険者が笑顔でセナへと声をかけると顔見知りの冒険者たちも笑顔でセナに声をかけてきた。

 「はぁ~。レイファさんが王都にいると思ったらこんなベッピンさんを従者にしてたんですか」

 「いやいや、レイファさんとは関係なく色々あってお二人にお世話になることになったんですよ」

 セナの後ろに控えている二人が話題にあがり従者であるとしると冒険者たちはさすがセナだといった感じで話を聞いた。

 「セナ様。おかえなさいませ、お元気そうで」

 「オリファさん、お久しぶりです」

 冒険者達と気さくに話していると二階からオリファが降りてきてやわらかい笑顔を浮かべセナに挨拶をするとそのままセナたちをマスター室へと案内した。

 「それで、今回はどのようなご用件ですか?」

 「はい。僕名義で指名依頼をだしたくて」

 「セナ様からの指名依頼ですか」

 少し驚くオリファへアリアの護衛で帝国へ向かうことを説明しアリアと気心がしれ自身も知っているエリス達に指名依頼として一緒に護衛をしてほしいことを伝えた。

 「なるほど…了解しました」

 「それで依頼料はどれほどにしたらいいか相談もしたくって」

 「うふふっ,かしこまりました」

  セナが前とかわらず少し困ったような顔で申し訳なさそうにいうのを懐かしく感じつい笑いだしてしまいながらもオリファが了承し少し考えたあと話し出した。

 「えー、それでは依頼中かかる経費はセナ様もちですよね?」

 「そうですね」

 「ではエリスさん達が依頼を引き受けるといった際、当人たちで話し合い準備金をまず渡してください」

 「はい」

 「それを着手金として、あとは依頼終了後に報酬を支払うという形で構いませんか?」

 「はい」

 「では依頼期間が未定とのことですので彼女らはBランクというのも加味し1か月1人金貨15枚でどうでしょう?」 

 「それで不備がなければこちらは大丈夫です」

 「ではこちらで依頼書をつくりエリスさんたちに連絡を取ります。いつまでに出発いたしますか?」

 「あー、それはエリスさん達が引き受けてくれたら一緒にアリアのところにいって決めようと思ってたんですけど先に決めた方がいいですか?」

 「いえ、それで記載してみますね」

 「よろしくお願いします」

 「かしこまりました」

 サイスが帝国に行き代行を務めはじめてから忙しさでイライラしていたオリファだったが、セナがリストニアで冒険者をしていた時、担当していたことを思い出し変わらぬセナの態度とやり取りに嬉しそうにオリファが一礼し依頼書の内容をまとめ受付嬢へと手渡した。

 「帝国でのことマスターからの手紙で読みました。大変でしたね…それにブレイダー領についても…」

 「はい…ブレイダー領については…犠牲者も出てしまいました…」

 「個人的にはお力になりたかったんですが…冒険者の規則で…」

 「大丈夫です。ブレイダーは必ず復興しますから…それに戦争参加はしないのは知ってますよ。こうみえて僕も一応冒険者の端くれですから」

 「ふふっS級冒険者が端くれなわけないじゃないですか」

 重苦しい雰囲気を変えたくセナが自分も冒険者だと茶化すように言うとオリファもセナの気づかいに感謝しながら笑みを浮かべた。

 コンコン

 「失礼します。エリスさん達をお連れ致しました」

 「入ってもらってください」

 二人が談笑する中、先ほどの受付嬢がエリス達をマスター室へと案内してきて中に通した。

 「失礼します。オリファさんお疲れ様です。セナ様、ヤオさんタオさんもご無沙汰しております」

 「エリスさん、マインさん、コニーさん 久しぶりです。急な依頼申し訳ないです」

 入室した3人が笑顔でオリファとセナたちに挨拶をし勧められたソファーに腰をおろした。

 「それで以来の方はお受けしますか?」

 「もちろんですよ!セナ様からの依頼を我々が断るわけないじゃないですかっ!」

 「しかも内容がアリアの護衛だったらなおさら断るわけにはいきません」

 オリファの問いにコニーとマインが当然と言わんばかりに言った。

 「ありがとうございます」

 二人の言葉を聞きセナは嬉しそうに礼をいう中、コニーがエリスの脇を肘でつつき何かを催促するようにあごをクイクイ動かし、マインは気まずそうに下を向いた。

 「どうしたんですか?」

 「え?あの…その…ですね」

 「さっさと言いなさいよ」
 
 エリス達の行動を見て不思議に思ったセナがたずねるとエリスが言い出しづらそうに言葉を濁らせ、コニーが小声で催促した。

 「あの…今回の依頼を引き受けるにあたり!条件といいいますか…提案と言いますか…お願いごとといいますか…」

 「はい?」

 エリスが煮え切らない言い方をしセナが首をかしげているとイライラしたコニーが我慢できずに立ち上がった。

 「セナ様!」

 「はいっ!?」

 「私たちをセナ様のパーティに入れてください!いやむしろ!私たちもメディー用に部下にしてください!」

 「へ?」

 バンとテーブルを両手で叩きセナへ詰め寄るコニーに話が呑み込めないセナが間抜けな声をあげた。

 「えっとですね…依頼内容、報酬とも問題はないのですが…友人のアリアを守るのに毎回依頼として受けるのも…セナ様やエミル様から報酬を受け取るのも…毎回心情的に抵抗がありまして」

 あっけにとられているセナにマインが申し訳なさそうに事情を話し出した。

 「それでアリアを送り届けた後、次に同じような内容をブレイダー家やセナ様からもし依頼されたらパーティなんて恐れ多いことはいわず、部下でも従者でもなんでもいいので入れてもらえるようにお願いしようという話をしてまして」

 「エリスがじゃんけんで負けて話をするってことに決まってたんです!」

 申し訳なさそうに話をつづけたマインのあとにエリスを睨みつけフンスと鼻息をあらくしコニーがいった。

 「報酬はいりませんので…どうでしょうか?」

 「急にいわれても…従者はヤオさんとタオさんだけでも僕にはもったいないくらいなので…」

 「セナ様…メディー殿と同じ立場として引き受けてはいかがですかな?」

 「え?ヤオさんまで?」

 エリスが消え入りそうな声で言う中、否定的なセナに対しヤオが意外にも受け入れる様に口を開いた。

 「かの者達は歌姫様からの信頼も厚く、セナ様も実力や人間性をお知りになっていてなお、今回の依頼をお出しになられたのでは?」

 「まぁ…そうですね」

 「ならばご自身を慕い、実力と気心が知れていて大事なものをまかせられる人物たちならばよろしいかと思われますが?」

 「んー…ヤオさんがそこまで言うのなら…わかりました。給金やその他のことはあとでゆっくり話し合いましょう」

 ヤオの口添えもあり、あとでヤオやタオに尋ねながら条件等をきめればなんとかなるかと思いセナが了承した。

 「ありがとうございます!」

 「ふぅー…セナ様ありがとうございます…よろしくお願い致します」

 「やったー!これで私もセナ様専属だっ!」

 「僕専属っていう言葉に抵抗があるんだよなぁ…」

 コニーの言葉にセナが困った顔をし頭をかきながらいい、その光景を少しうらやましそうにオリファが見ながら依頼書を廃棄するように受付嬢へと伝えた。
 
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