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第7章 大陸編

本来の姿

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 「では、始めさせてもらう」

 「アキラさん頼むぜ!」

 「よろしくお願いします!」

 「エイケン、ここはボクたちに任せて君はアリアを呼んできてくれないかな?」

 「あぁ?なんでだよ」

 「んー、アリアの力が必要になる気がするんだよね。まぁ治療士の、いや女の勘ってやつさ」

 「はっ!おめぇにんなもんあるのかどうかはわからねぇが、とりあえず言ってくるわ」

 アキラがセナやタオとヤオ、そしてアイリーンに細かな流れを説明している間にアディオンさんはエイケンとサナリアを部屋から追い出し使いに行かせた。

 「アディオン君、患者のバイタルは任せていいね?」

 「OK、それは任せてもらおうかな」

 「ではセナ君、よろしく頼む!」

 「はい!」

 アキラの声でセナはアキラが使っている多重結界にヤオやタオが使う封呪を織り交ぜ、さらにメディーと開発した簡易結界を張った。

 「おっほっ!あいかわらず出鱈目なことをするねぇ君は!」

 「強制的に無菌にしてかつ魔力や呪術を使いやすいようにしました。それと皆さんの体力以外でしたら力を供給できるかぎりしますのでよろしくお願いします!」

 「頼もしい限りだね。ではやろう!ヤオ君タオ君たのむ」

 「御意!」

 ヤオとタオが幾栄にも印を結びあいどんどんドロシーに呪術を重ねていき頃合いを見て目で合図するとアイリーンが蟲に右手をそえ力を流し始めた。

 「ん、バイタル安定したよ!」

 「わかった!まず8つあるメインの管1つ1つを抜き出す。アディオン君は出血量も加味して確認してくれ」

 「了解だよ、それに抜き出した穴はボクがふさいでみせるよ」

 「ああ、あてにさせてもらっている」

 アキラが頼もしそうにアディオンに笑顔を浮かべた後心臓から一番遠い管の一本に手をかけた。

 「ふむ、この管は静脈側だな…どれどれ…」

 左目に強烈な魔力をやどし指先から見たこともない波長の魔力を一定間隔でながしていくと管が少し揺れはじめ、やがてズルズルとドロシーの体から抜けてきた。

 「よし!1本目だ」

 「ふむ、皮膚の部分だけ少し大きいが血管や筋などにはほとんどダメージはないね!」

 ヒールをかけながら患部を観察したアディオンがいった。

 「次だ」

 その後アキラは様々な波形の魔力を様々な間隔で流していき1本1本丁寧に細心の注意をはらい抜いていった。

 「ふぅ~ここからだ…みんな大丈夫かい?」

 「我らは大丈夫にございますが」

 「セナ君は大丈夫なのかい?」

 アキラ、アディオン、アイリーンには魔力をヤオとタオには燐気と龍気を分け与え続けなおかつ結界を維持しているセナにアディオンが珍しく不安げな顔をうかべて尋ねた。

 「さすがに堪えてきてますが、まだ6割強くらいは残ってるので行けるかと思います」

 「そ、そうかい…頑張ってね」

 「はい!」

 額にうっすら汗をかいた程度のセナにさすがのアディオンも若干引きつつも声をかけた。

 「さて、ここからはアイリーン君変わろうか?」

 「アキラ様大丈夫ですわ、私の右手を贄に引き離して見せますわ」

 「大丈夫なのかい?」

 「はい、この娘から私に憑き移ろうとする瞬間をセナ様が逃すはずがございませんから」

 「そうかい」

 あとは細かな管というか神経のようなものが数本ささるだけというところまできたアキラの申し出を何事もないようにアイリーンがセナへの絶対の信頼を口にしそのまま続けることにした。

 「セナ君…そろそろだ、タイミングは本当に刹那の瞬間しかない…失敗したらアイリーン君がやられてしまうよ?いいかい?」

 「はい、お三方も力を貸してくださいますし必ず成功させて見せます!」

 「うんうん…そろそろだ…準備はいいね!来た!」

 「ふっ!」

 「いまだ!」

 「はっ!」

 魔力、燐気、龍気を最大限にたかめたセナがアキラの合図で蟲がドロシーの体からアイリーンの右腕に乗り移ろうとした瞬間、最大最速の抜刀術でセナが蟲を細かく切り刻み、それをヤオとタオが封印の呪札を幾枚も重ね包み込み最後にアディオンが箱に入れさらに札で封印を施した。

 「よぉーし!よしよし!成功だ!みんなよくやってくれた!」

 「アイリーンさん大丈夫ですか?」

 「触れられてすらおりません」

 「よし!ここからはボクのお仕事だ!」

 「さすがアディオンさん!お願いします!」

 「うん!任せてよ!」

 「では僕はこの辺で失礼するよ」

 「アキラさんいつもこんな頼み事ばかりでごめん」

 「何をいってるんだい!こんなことこちらからお願いしてでも来ているさ!」

 「ありがとう…それでさ…今回も悪いんだけど…」

 「ああ、わかってるよ蟲は僕が引き受けさせてもらうよ」

 「ありがとう」

 セナは朗らかに笑うアキラとともに魔王城へと転移していった。

 「アディオン!どうなったんだ!?」

 「蟲ははずしたよ、これから元々の病のほうを治すんだよ」

 「そっか!それでその病気は完全に治るのか?」

 「うん、病治るしこの子は生きることだけはできるよ」

 「なんか含みがありすぎじゃねぇのか?」

 「ここにある輸血パックをつかって輸血はしてみるけど、彼女の中の血液これがどれくらい妖魔のものになっていて薄まるかはまだわからないからね」

 「おいおい!んじゃドロシーは耐えられねぇで死ぬのか!?」

 「いや、今程度のまま安定しているのなら生死の問題にはならないと思う、病については最近ボクが特効薬を開発したものだから安心してくれていい…問題は心の負担…精神的な部分だと思うよ」

 「それじゃ…ドロシー自身の気持ち次第ってことかよ」

 「そういうこと」

 「ちっ!それじゃあ打つ手がねぇじゃねぇか!」

 「そうでもないよ?」

 「あぁ?」

 「君の後ろにとっておきの切り札がいるじゃないか」

 「あっ…歌か!」

 「ご名答!」

 「アリア!さっき言ったみてぇに治療がおわったら歌ってもらうかもしれねぇ!頼めるか!」

 「はい!もちろんです!セナたちが一生懸命救ったんだもん!私も力の限り歌って見せます!」

 「すまねぇ恩に着るぜ!」

 「セナ殿といい、アリア様といい…なんと皆さんに礼をしたらいいのか…」

 「私にはそんなもの必要ないですよ!それにセナもそうだと思います」

 「しかし!」

 「ほんとは…本当のセナはこうやって人を救ったり気楽に旅をすることのほうが似合ってるの…だから元気なドロシーさんの笑顔を一緒にみるために今はがんばりましょう!」

 「アリア様…」

 セナの朗らかに笑う姿を思い出し、刃を悲しそうでつらそうな顔し振るうセナより人を救い笑いあう姿がほんとうのセナの姿だと思ったアリアがぐっと拳をにぎりサナリアをはげました。

 

 
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