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4章 視察(上)
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しおりを挟む「それでは、我々は報告があるので。
二人は帰宅してください」
お疲れさまでした、とダブルク様に送りだされてシントと別れる。そして久しぶりのわが屋敷へ! といってもタウンハウスだけれど。迎えに来てもらった馬車で早速向かいます。
「!
おかえりなさい、アラン!」
「姉上!?」
馬車から降りた瞬間、姉上がまさかの行動に! 確かに長い間会えていなかったとはいえ、抱き着いてくるとは。兄上も苦笑いしていないで姉上を止めてください。
「マリー、そこまでにしなよ。
アランが驚いているよ?」
「ですが……。
ごめんなさい、アラン」
「いえ、いいのですが……」
「はぁー、久しぶりの癒しだわ。
せっかく王都に出てきたのに、アランはいないんだもの」
「まあ、確かに。
ひとまず楽な恰好に着替えてくるといいよ。
そしたら三人でお茶をしよう。
いろいろと話したいことがあるんだ」
「わかりました」
そういえば父上たちは来ていないのかな? 疑問には思ったけれど、ひとまず兄上の指示に従っておきます。自分の部屋も久しぶりだな。
「ずっと付き合ってもらって、サイガも疲れたでしょう。
しばらく休みをもらったら?
また銀月になったら付き合ってもらわなきゃいけないんだし」
「いいえ、大丈夫です。
どうかアラン様はこちらのことはお気になさらず」
気になさらず……、って無理では? そんなずっと休みなく働いてもらうなんて申し訳ないんだけど。
「お休みされてもいいんですよ?
アラン様のお世話は私がやっておきますし」
あれ、アベルってこういうこと言うっけ? ついてきていたのはサイガだけだったから、忘れたとか? いやいや、さすがにそんなことはないはず。なぜかサイガはアベルをにらんでいるし。うーん? ひとまず。
「アベルもサイガも仲良くしてよ……」
「「仲良しですよ?」」
え、なんか信用できない。
「さあ、早く準備しましょう」
なんか話を切り上げられたけど、うん、気にしない方向でいこう。
「お待たせいたしました」
「いや、もっとゆっくりしてくればよかったのに」
「いえ」
サロンに行くと、もう二人は席についていて何かを話していた。でも、僕が来たことに気が付くとすぐに話を切り上げた。
「アランにね、最初に言っておいた方がいいことがあるんだ」
「言っておいた方がいいこと?」
こくりとうなずくと兄上が姉上のほうを見る。どうやら姉上の口から話させようとしているみたいだ。姉上はなぜか少し嫌そうな顔をしてこちらを見た。
「あのね、アラン。
実はエキソバート殿下と正式に婚約することになったの。
もしかしたらお茶会には出るかもしれないから、知っておいてもらいたくて」
「え!?
本当に婚約されたんですか?」
「ええ」
え、婚約したのにどうしてそんな嫌そうな顔? もう少し喜んでいるのかと思ったんだけど、そうでもないと。
「なんだか断る方が面倒になってきてしまって。
無月になる前にと婚約を結ぶことになったの」
「いつ婚約されたのですか?」
「つい最近よ。
はぁ、本当に……」
本当に? と首をかしげるも続きは口にしない。この婚約は姉上にとってあまりいいものではないのかな。
「こんな反応だけど気にしないで。
マリーもなんだかんだエリト殿下のこと気になっているんだろうし」
「気になってなんかいないわ!」
ああ、はい、温かく見守ることします。そのあとは雑談をしてお菓子を楽しみました。
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